久松慎一+ 株式会社援軍

 

Vol. 25 YouTubeショート動画広告が本格始動

YouTube ショート動画広告がβ版から本格的に始動しました。広告の収益については、You Tube ショートファンドというファンドが設立され、ファンドの対象者であれば申請することで収益が得られるようになります。今回は改めてYouTube ショート動画広告とは何か、そしてファンドについての基礎などをまとめました。まだ始まったばかりですが、今後さらにアップデートされていく媒体となりそうです。

 

YouTube ショートが拡大! 動画広告として本格始動

以前ご紹介したYouTube ショートですがGoogleより今後、世界的に拡大する方針が発表されました。以前はβ版ということもあり、わからない部分も多かったのですが、今回の発表で動画の収益に関しても言及されました。TikTok、Instagramに続いてYouTube ショートもクリエイターにとって気になる媒体となってきております。そこで今回は発表された内容とクリエイター観点でYouTubeショートの特徴を解説します。

 

Google Marketing Live 2022で今後の方針が発表

Googleの広告ビジネスイベント「Google Marketing Live 2022」の基調講演では、YouTube ショート動画広告を全世界的に拡大する方針が発表されました。これまではβ版として公開されていましたが、いよいよ本格的に稼働をはじめます。

  • 動画広告(YouTube ショート)は全世界的に拡大していくこと
  • 動画広告が刷新されてYouTube ショートでも広告が出るようになったこと

YouTube ショートは昨年からテスト的に稼働していましたが、再生回数は徐々に伸びており1年前と比べて約4倍増加しているとのこと。現在は1日300億回以上視聴され、Googleにとっても重要なソリューションとなっています。また今後はクリエイターに向けたYouTube ショートの収益化ソリューションを開発することも発表しています。

発表されたショート広告の例

クリエイターにとって興味関心のひとつは「収益を上げることができる媒体なのか」だと思います。発表段階ではどのような収益ソリューションとなるのかまでは明確にはなっていませんでしたが、今後は収益を獲得できる方法は強化されていくと考えられます。

 

ファンドについて

収益化に関してはβ版時点で「YouTube ショートファンド」という基金を導入されています。「YouTube ショートファンド」は通常の広告枠とは異なり、動画のパフォーマンスに基づいてクリエイターに分配される仕組みとなっています。詳細は下記のとおりです。

  • クリエイターにはファンドから毎月100〜10,000米ドルが分配される
  • 金額はパフォーマンス指標(エンゲージメント、視聴回数など)に基づいて調整される
  • チャンネル内のショート動画の前月のパフォーマンスに基づき、数千規模のクリエイターにファンドから連絡がある
  • 該当する月に投稿されたショート動画だけではなく、毎月視聴回数が発生するすべてのショート動画の視聴回数を考慮する
  • 受注要件は毎月更新。ある月に要件を満たせていなくても翌月には対象となる可能性がある

 

ファンドの対象者

ファンドの対象となる方はどのような方となるのでしょうか。YouTube ショート ファンドの報奨金を受け取るための要件は下記のとおりです。

  • 過去180日間にオリジナルのショート動画をYouTubeにアップロードしていること
  • コンテンツがコミュニティガイドラインと著作権・収益化のポリシーを遵守していること
  • YouTube以外のプラットフォームに投稿された透かし・ロゴが含むコンテンツは対象外
  • 再アップロードされた(オリジナルではない)コンテンツは対象外
  • 対象国に居住している
  • Googleアカウントを管理することが許可されている最低年齢に達していること
  • 必要な場合は保護者、法定後見人の許可を得ている
  • アドセンスアカウントを持っていること(YouTube パートナープログラムの必ずしも参加する必要はない)

 

ファンドの申請方法

続いてファンドの申請方法もご紹介いたします。大きい項目として3点の流れになりますが、申請条件が細かくあります。

  • 要件を満たすと、8〜9日ごろにYouTubeから報奨金申請に関するメールが届く
  • その月の25日までに申請をする。申請をしないと失効する可能性がある
  • 受注資格を満たした月ごとに申請をする必要がある

 

 

今後さらに収益化できる可能性が高くなる

上記の通りYouTube ショートファンドという形で収益化が可能になり、動画のパフォーマンス次第で稼ぐことができます。さらに今回の発表によってYouTube ショートは拡大することが見えており、収益化するチャンスはこれまで以上に増加すると考えられます。ただ、現段階では収益化するために必要なパフォーマンスの条件は明文化されていません。収益化の条件については追加の情報は待ちましょう。

 

YouTube ショート動画の特徴について

ではクリエイターの観点で見たときにYouTubeショートは始めた方がよいのでしょうか。どのような特徴があるのかをご紹介します。

YouTube ショートは新規層にアプローチしやすい

YouTubeは、チャンネル登録者数・動画再生数等に大きく依存していますが、YouTube ショートの場合は、チャンネル登録者数が少なくても内容がユーザーとマッチしていると判断されれば表示される傾向にあります。そのため、まだチャンネル登録者数が少ないクリエイターにとっては、登録者数を増やしやすい絶好の媒体となります。

他媒体と比べて幅広い層にアプローチすることができる

現在稼働しているショート動画媒体「TikTok」「Instagramリール」と比べると幅広い層にアプローチすることができます(下の表を参照)。

他媒体と比べて情報探索のために使用しているユーザーが多い

YouTubeは情報探索するために使用するツールという側面もあります。
ショート動画を作る際は、例えば、次のようなニーズを解決する方法を意識する必要があります。

  • 知りたい商品やサービスが動いているところを動画で確認したい
  • 〇〇というお店はどのような雰囲気なのか、事前に動画で見ておきたい
  • 〇〇という法律が開始されたのだけれど、わかりやすい具体例を動画で確認したい

 

YouTubeショートを使用する際に気をつけたい点

登録者数を増やしやすいなどよい面もありますが、気をつけておきたい点もあります。

①ショート動画を視聴したいユーザーと長い動画を視聴したいユーザー層は異なる

ショート動画は60秒と短い時間で動画を視聴することができるため、じっくりと動画を観たいユーザーとは動画を見るモチベーションが異なる可能性があります。通常の動画はPCなど含めて閲覧するケースが考えられますが、ショート動画はスマートフォンでの視聴がメインとなります。

そのためYouTubeショートの動画経由で登録者数が増えても、同チャンネルにあるほかの動画を視聴する流れになるかどうかは現段階では未知数です。

またショート動画ばかりが増えてしまうと、既存のチャンネルファンのニーズを満たすことができずにチャンネル離れを引き起こす可能性もあることを視野に入れる必要があります。

②本来のターゲットではない層にレコメンドされる可能性がある

YouTube ショートの動画が増えると、メインターゲットと異なるユーザーにも視聴されやすくなくなります。

動画は機機械学習によって「動画を視聴しやすい・興味を持っていると考えられる層」に多くレコメンドします。YouTube ショートでターゲットと異なる層に偶然人気のある動画が生まれた場合、今後はその層に近しい所に動画が配信されやすくなります(例:女性向けチャンネルなのに動画を見た多くが男性の場合男性にもレコメンドされやすくなる)。

多くの層に視聴されるのであれば問題はないのではないかとも考えてしまいがちですが、ターゲットと異なる層に人気があるチャンネルだと判断されてしまうと、本来のターゲットへのレコメンドが相対的に少なくなる可能性があります。

結果、ショート動画以外の動画の再生回数が減ってしまいチャンネルの規模が縮小する可能性があることも考える必要があります。

 

ショート動画・通常動画共に注力したほうがよい

考えられる機械学習による懸念点を書かせて頂きましたが、正確なところは外部からわかるわけではないため杞憂に終わる可能性もあります。ただ、どのような状況になっても問題がないようにショート動画だけではなく、通常の動画も変わらず注力する形がベストだと考えています。

 

すでに YouTube ショート動画広告を活用している企業も

現在ではまだまだ数が少ないですが、いち早く取り入れている企業も。ショート動画広告の事例を紹介します。

広告:TikTok

スキマ時間にすごい動画をTikTokアプリをダウンロードすることを目的とした広告です。面白ネタを動画内で披露して面白いと感じた方にはダウンロードしてもらう流れとなっています。

広告:qoo10

メガ割りショッピング祭りショッピングモールQoo10 のメガ割を告知する広告です。アンバサダーである川口春奈さんが20% OFF を告知するCMです。渋谷のスクランブル交差点などでも同時配信。

 

今回のまとめ!

始まったばかりのYouTube ショート。現在ではまだそこまで多くの広告を確認することはできませんでしたが、恐らく今後、増えてくいくことでしょう。現段階では未知数なところも多いのですが、今のうちにさまざまな企画・アイデアを仕込んでおくと拡大の波に乗れる可能性が高くなります。

 

 

VIDEO SALON2022年10月号より転載