久松慎一+ 株式会社援軍

 

 

Vol.28 クラウド動画編集でできること(後編)

近年の機材やツールの進化によって映像編集・動画制作が容易になったとはいえ、それでも編集作業にはまだある程度のハードルがあるのも事実です。

見よう見まねで作ってみたものの、どうも見栄えがしなかったり落ち着かなかったり、違和感のあるできあがりになってしまい、結局外注に出さざるを得なかった、ということも多いようです。外注するとやはり時間やコスト、コミュニケーションなどがかかり、社内で制作できたら、という相談をよくいただきます。そのためのツールとして映像編集ソフトウェアのインストールが不要でWEBブラウザ上で広告動画を制作することができるクラウド動画編集サービスについて、2号にわたりビジネス動画編集クラウドVideo BRAINをもとに解説しています。

株式会社オープンエイト執行役員の近藤 洋司さん
聞き手:久松慎一・島田 拓(株式会社援軍)

 

 

前回に引き続き、昨今利用者が増えている、ビジネスパーソン向けの動画編集サービスについて、ビジネス動画編集クラウド Video BRAIN(以下、ビデオブレイン)を提供している株式会社オープンエイト、執行役員の近藤さんにお話しを伺いました。

前号では動画編集クラウドの特徴、ビデオブレインではどのようなことができるのかを伺いました。今月はその続きと具体的な凡例を紹介します。

 

国内での使用を意識して日本の文化に適したサービス

海外(主に米国)の動画制作ツールは異文化というか、テイストがいかにも”アメリカ!”というのものが多く使いにくい場面が多いのですが、ビデオブレインではいかがでしょうか。

海外のツールはやはり日本っぽくない、なじみにくい部分があるのに対し、(今のところ)ビデオブレインではよい意味で日本の企業向けのサービスとして絞り込めています。ユーザーそれぞれの温度をわかった状態で提供してますよ、というのを徹底しています。当然、日本語にしっかり対応できています。

日本人モデルの素材が豊富な画像素材サービスのPIXTA (https://pixta.jp/) や、国内のマーケティング業界で幅広く活用されているアマナイメージズ (https://amanaimages.com/) などと連携しており、ビデオブレインで各サービスの素材を購入して使用することもできるようになっています。

フォントや字詰めなどについてもとてもこだわっています。やはり元々PowerPoint機能がユーザーの皆さんの基準になっていて、PowerPointでできることをある意味どれだけ再現できるのか、という見られ方をされています。ですので、ビデオブレインでは字詰めや角度など、タイポグラフィの機能を充実させているんです。

フォントも可読性に優れたモリサワフォントを中心に多くのバリエーションを用意し、実際に使うと「こんなにフォントがあるんだ」と思っていただけると思います。ブランドのオリジナルフォントを追加実装することもできるので、動画広告のクリエイティブはもちろん、さまざまなブランドコンテンツを作成することができます。

デザイナー以外が使う前提で、選択肢が増えすぎるとどうしてもダサくなってしまいますね。

そうなんです。難しいのはデザインポリシーとかトンマナみたいなものを統一したい人からすると、自由度が高すぎる点は懸念を示されます。

ビデオブレインにはオリジナルテンプレートの開発がプランに内包されているので、その企業のCIルール(コーポレート・アイデンティティ)やデザインガイドラインをもとに、使う画像やカラーパレットをあえて制限したテンプレートを社内で共有することができます。それを元に作り始めることができるため、現場で重宝されています。

ユーザーが自分のためにテンプレートを作ることもできますか?

作った動画をテンプレート登録する機能を提供しています。テンプレートとして登録することで再編集はできないように、素材だけ差し替えるといった使い方でバリエーションを制作するといった使われ方をしています。

 

料金についてわかりやすくシンプルに設定

料金体系はどのようになっているのでしょうか?

サブスクリプションモデルで提供していて、ユーザー数などによっていくつかのプランがあります。

一番安価な「スタンダードプラン」は30ユーザーまでで税別30万円/月。上位のプランについては、公式サイトからお問い合わせいただければと思います。

ビデオブレイン公式サイト https://video-b.com/

 

 

 

ユーザー向けに動画制作のAPI(ソフトウェアやプログラム、WEBサービスの間をつなぐインターフェースのこと)を公開しているのでしょうか?

たとえば特定の画像だけ差し替えた動画を一度に100個作る、などの場合にプログラマブル(※)であると作りやすそうです。

※プログラマブルとは、プログラムを書いて作業を自動化することが可能であること。

はい。そのようなニーズに応えるため、V-matic powered by Video BRAIN(https://video-b.com/v-matic/)というサービスを先日リリースしました。企業から送られたテキストデータや画像データなどを組み合わせて動画を自動生成するサービスです。P.101 で紹介していますが、賃貸情報サービスで、エリア別・検索条件別などで該当するおすすめ物件をまとめて紹介する動画を生成し、ランディングページに掲出するなど利用が進んでいます。

同じ素材をベースとしながら、コピーやデザイン違いで大量にバリエーションの提案ができるなど、動画広告と非常に相性がよいサービスですので、今後インターネット広告の領域での導入が増えることが期待されています。

これからのサービス開発については?

現在は、ビデオブレインで作成した動画をHTMLタグで配信できる機能や、SNSへ投稿した内容を一元管理・分析できるInsight BRAINなどを含め、動画を「つくる」「届ける」「分析する」という、動画活用のオールインワンプラットフォームとしてご活用いただいておりますが、企業で取り扱う情報資産は動画だけではありません。

Insight BRAIN 公式サイト https://insight-br.com

 

たとえば業務マニュアルは動画とPDFがセットになっているとよりわかりやすくなりますし、担当者がバラバラに保存している営業資料はきちんと構造化してまとめておきたい、広告であればクリエイティブと効果検証データとセットで保存したいなど、情報のアセットマネジメントが必要になってきます。そうした観点から新しいサービスを検討していきたいと考えています。

 

 

ビデオブレイン、実際の事例

事例1:アドバンスクリエイト 保険市場

動画広告で成約件数が約2倍に

国内最大級の保険選びサイト「保険市場」で動画広告の制作にビデオブレインを活用しています。

以前から動画広告を導入し反応がよいことを実感していたのですが、動画広告の制作には時間とコストがかかるため、多くのパターンを作って比較するということができませんでした。そこで、直近の効果を得るためには量産しやすい静止画を利用していました。

ビデオブレインを導入し、用意されたテンプレートや素材を活用でき数多くのパターンの動画を制作が可能で、月に50本以上を制作しています。毎月定例会を開催し、運用サポートと合わせて他社の事例などの情報提供が得られるので改善サイクルが速い状態です。ビデオブレイン導入前と比べてCVR(広告経由の成約)が2倍以上になりました。

https://bit.ly/hoken-ichiba2

7秒の動画に短いコピーとイラストでテンポよく解説。最後に問い合わせボタンが現れる。テンポがよいため、進行に合わせてボタンを押したくなる。

 

保険市場 https://www.hokende.com/

国内最大級の保険選びサイトである「保険市場」。運営:株式会社アドバンスクリエイト

 

 

事例2:コープかごしま

年間100本以上の動画PRで商品販売にも好影響

自社サイトではテキストが読まれなくなってきており、生活協同組合コープは組合員(いわゆる会員制)となって利用できるのですが、組合員へのPRや情報伝達に限界を感じていました。

社内に動画制作ができるスタッフがいなかったなかで動画を作る方法を模索しビデオブレインを導入しました。カスタマーサクセスチームのアドバイスを元にサイトや配信するSNSの特性にあわせた尺や内容で動画を作り分けています。

動画制作では、フリー素材配布サイトの素材を活用し、なるべく文字が少なくなるようにしてプリペイドカードの魅力や使い方を説明しています。また、新商品の紹介を商品画像と社内で撮影した開発者インタビューなどを制作しています。

https://bit.ly/coopkagoshima

30秒の動画にわかりやすく項目に分けてコープマネーを解説。速すぎずゆっくりと進行するため、年齢層が高くても理解が追いつきやすい。

 

生活協同組合コープかごしま https://www.kagoshima.coop/

1971年創立。鹿児島県全域をエリアとする消費生活協同組合。運営:生活協同組合コープかごしま

 

 

事例3:賃貸スモッカ

街の魅力と物件情報を動画で紹介しユーザー体験を向上

V-matic powered by Video BRAIN(動画自動生成サービス)を活用し、現在空いている不動産の物件情報から周辺のスポットなどの紹介動画を自動で作成。

物件の情報だけでなく、住むエリアの情報をよりリアルに魅力的に知ってほしいという想いから、例えば千代田区であれば、おすすめの物件のほかに、千代田区はこんないい街ですよという+αのローカルな情報を動画で提供しています。

テキストでは読まれにくいコンテンツも、動画にすることで伝達力を引き上げ、ユーザー体験を向上させました。V-maticの活用により、1週間で数百本の動画制作をすることが可能となりました。

https://bit.ly/smocca_vs

30秒の動画でテンポよく地域のデータや情報、解説を織り交ぜて進行。写真も多く利用しているので、物件に対して興味が湧きやすい動画。

スモッカ   https://smocca.jp/

大手賃貸サイトの情報から一括検索し、賃貸物件数約500万件(2022/11/1時点)を掲載する。 運営:株式会社じげん

 

 

動画編集サービスを利用するメリットとは?

クラウド動画編集サービスによって動画制作のコストが“圧倒的に”下がることで、静止画のバナー広告のように多数の素材を用意し、高速にABテストを繰り返すことができます。そうすることで、当たるパターンを安価に、そして素早く調べられるようになりました。

当たるパターンがわかってくると、TVCMやキャンペーン動画のように予算をかけた動画広告を制作するときにも、説得力をもって企画を考えプレゼンができます。

自信を持って制作に臨むことで予算をかけたプロジェクトなどに対する不安やストレスが軽減し、制作や企画に集中することができるようになるでしょう。

 

 

連載のまとめ!

2年強にわたって「イチから学ぶWEB動画広告」を連載してきました。マーケティングと動画制作と分野をまたいで押し寄せるおびただしいヨコモジ専門用語や身のまわりに気軽に聞ける人があまりいないなど、取りかかるハードルが高い動画広告。最初のハードルを飛び越える手伝いができたら幸いです。今号で連載は終了しますが、これからも読者の皆様と一緒に楽しんでいけたらと思います。

 

 

 

VIDEO SALON 2023年1月号より転載