月刊誌「ビデオサロン」で連載中の読者投稿コーナー「魁!! ビデオ道場」では、毎月1作品を「大賞」、次点の数作品を「入賞」としてセレクト。大賞受賞者には金2万円ほか、大賞・入賞および掲載作品にもその栄誉をたたえてステッカーを贈呈しています。詳細は誌面をご覧ください。今回は2014年2月号掲載の作品を紹介します。
解説は岡野肇さんです。


大賞「伝統工芸『深山和紙』」羽鳥允祥さん(山形県米沢市)

とにかくわかりやすく作りが丁寧。このことが見る側への配慮となり、見終わったあとの充実感に繋がっています。紙をすくシーンはよく見かけますが、こうぞの収穫から製品までじっくりと追っているところも見事。良作目白押しだった今月号の難関を突破して大賞を授与します。
入賞「表現者 鳴海健二」山口順二さん(兵庫県明石市)

まずタイトルに惹かれました。この作品には「ストーリー」があります。当たり前ですが見る側が、おもわず追って行きたくなる「ストーリー」です。各カットも作者の思いで趣向が凝らされています。テンポもいい。曲もまるで誂えたよう。カメラマンがコーヒー職人だったのか?コーヒーショップのマスターがカメラマンだったのか? 今でも考えています。
入賞「錦秋の北アルプス大空撮に挑む」古橋三久さん(愛知県名古屋市)

「こんなにギリギリを飛べるんですね」というのが素直な感想です。快晴にも恵まれ、モーターグライダーの特徴を活かした近接撮影の連続。ちよっと羽根や窓枠が見切れるシーンもありましたが、作者の意気込みは大パノラマのショットとともに充分伝わってきました。ワクワクする作品。
入賞「海に生きる奇妙な生物たち」山田邦雄さん(神奈川県横浜市)

ハイビジョン化されて、高画質の恩恵を最大に受けたジャンルの一つが水中撮影でしょうか。今月は2作品投稿頂いています。まずこの作品は、水中生物たちを丹念に撮影した水生図鑑。その色、形のユニークさに圧倒されました。しっかりと照明もあたっていて、まるで自宅の水槽であるがごとき落ち着いた撮影に驚きです。BGMもマッチしていました。
入賞「太閤さんから貰った島」坂口吉弘さん(兵庫県神戸市)

瀬戸内海に浮かぶ島を訪れた少年が、色々な話を聞くうちにこの島の隠された歴史が解き明かされていく。ちょっと大げさですが、見終わると「なるほど」と相づちを。この少年と島の風景を入れ込んだショットが良いですね。しかし、この小島の凄い歴史を静かに描く、これこそこの島に似合った作品造りですね。
「ストリートサバイバル挑戦」藤村正夫さん(埼玉県八潮市)

駅前で熱唱するストリート・ミュージシャンらを追う作者がドキュメントタッチで描いた作品。ちょうどいい尺ですが、もう少しカットが見たかった。例えば歌っていない準備の様子(OFFショット)など。作者の積極性には拍手。
「伊勢ヨイ夜ナ」柴山和宏さん(三重県津市)

冒頭から風情を大切にした作品ですね。やさしい語り口のナレーション。伊勢の夏の夜が神秘的に感じます。ハンディショットは笛や太鼓のシーンには躍動感がありますが、全体を通すと落ち着いたカットも欲しくなります。
「観月の宴」河合典之さん(三重県松阪市)

本番を2カメ撮りした本編の合間にメイキング映像をはさんだ構成。しかし、メインを本番におき、メイキングはさらりと描いた所はとても見やすいと感じました。無人カメラにはAE値を調整する機能を上手く使って下さい。
「彼岸花」前田耕一さん(長野県伊那市)

ただ「彼岸花が咲きました」だけではない深い落ち着いたナレーションも好感が持てます。花の作品は群生ばかりにとらわれがちですが、咲いている場所のシチュエーションを絡ませた構図は、厚みが増し面白いですね
「KASHIWAJIMA26」中尾新吾さん(愛媛県今治市)

ダイビングそのものの風景を交えながらのドキュメントタッチ+魚多め。アップとロングのバランスがよく、まるで自分で潜っているような疑似体験ができます。特に超アップショットの迫力は「奇妙美(グロテスクだが美しい)」。
「赤いダイヤ」永倉史倫さん(北海道江別市)

小豆の作付けから収穫、検査までを丹念に追った作品ですが、冒頭のひまわり畑のシーンがちょっとわかりにくい。途中生産者によってその旨語られますが、挿入箇所としても疑問が残ります。小豆のできるまでを軸に再構成を。
「彼岸花 赤と白の競演」竹島 猛さん(静岡県掛川市)

タイトルの色使いからいきなり個性的なこの作品は、近所の川土手と田んぼの脇にひっそりと咲く紅白の彼岸花を作者が優しい眼差し見つめています。後半、まるでスタジオで撮影したようなアップは、黒布持参でしょうか?
「運命の浦富海岸」広瀬友三さん(兵庫県加古川市)

作者が打ち込んだ(音源を制作した)「運命」交響曲終楽章をバックに鳥取県岩美町の海岸線遊覧の様子で構成された作品。陸地からの船のショットも絡めた絶景が楽しめます。曲を先に敷いての音先編集でしょうか。
「諏訪湖と諏訪大社」関口 豊さん(埼玉県狭山市)

御柱祭りで有名な諏訪を訪れ、諏訪湖と諏訪大社を巡る旅。諏訪湖だけでなく流れ込む川まで言及した徹底さは頭が下がります。荒々しい御柱祭り時とは対照的に、静かに流れる時間が印象的でした。
◆この動画はビデオSALON2014年2月号連動動画です。詳しい内容はビデオSALON2月号をご覧ください。