月刊誌「ビデオサロン」で連載中の読者投稿コーナー「魁!! ビデオ道場」では、毎月1作品を「大賞」、次点の数作品を「入賞」としてセレクト。大賞受賞者には金2万円ほか、大賞・入賞および掲載作品にもその栄誉をたたえてステッカーを贈呈しています。詳細は誌面をご覧ください。今回は2014年1月号掲載の作品を紹介します。
大賞「3minutes Trip 静岡 伊豆熱川温泉」堀大泰/斎藤雅尚さん(神奈川県川崎市)
本当に驚きました。18歳の二人が制作したとは思えないクォリティの高さ。文句なしの大賞です。基本的な構成はテレビの3分番組なのですが、それを真似したというよりは、厳選されたカット・好感の持てるナレーション・形だけではない有益なサイドテロップと、きちんと情報が整理されています。コンパクトさと充実度が共存しているところがすごい。次の作品も楽しみです。
入賞「冥宅に祈りをこめて」坂口吉弘さん(兵庫県神戸市)
冥宅で死者の霊を迎える中国の旧盆の行事が行われる神戸南京町での、その準備と法要を「冥宅」の視点から描いた正当派ドキュメント。わかりやすいナレーションとしっかりとしたショットで落ち着いて見られる作品に仕上がっています。ただ後半、ナレーションと同録とのバランスが悪かった点が惜しいです。
入賞「海の男と鯛まつり」山岸太一さん(東京都世田谷区)
全国にはこんな奇祭がまだまだあるんですね。映像的に映える良質なネタもさることながら、作者の撮影素材の多さと、骨惜しみしない徹底した撮影努力には頭が下がります。ただ、8分という縛りの中で、ナレーションなどちょっと駆け足の感は否めませんが、そのことを遥かに超越する面白さがあります。
「和銅遺跡探索」関口 豊さん(埼玉県狭山市)
山中に突然現れる和銅銭のモニュメントが印象的な、和銅露天掘り跡を訪ねる作品。さらに坑道や製錬所跡と秩父黒谷の一連の遺跡を丹念に調べ歩く構成は作者の真骨頂。既設の説明板や地図に→等を書き加えて上手く利用しています。作者の思いや感想もぜひ盛り込みたいですね。
「Smiles for all[笑顔は最高の宝物]」太田智大さん(東京都荒川区)
アスレチックの遊具で遊ぶ3人の子供たち。気持ちよく顔にピントがあっていて、適度なスローショットの挿入。そしてこれも心地よい移動ショット。アクティブなショットの連続なのですが、なぜかゆったりとした気分になれました。デジタル一眼による被写界深度の浅さと発色の良さなど、その良さがよく出ていました。
「13日の金曜日」石井一男さん(東京都世田谷区)
この道場では貴重なアニメ作品。お話は納得の展開ですが、どこか懐かしさを感じます。悪魔の声代わりの音声の逆再生や、奇抜な音楽も決まっていました。ホラーというよりはスリラーの方が似合う作品。
「アリコの飛行船」藤村正夫さん(埼玉県八潮市)
飛行船の発着シーンはあまり見たことがありませんでした。行船の離陸は貴重な映像ですね。晴天のせいか、ちょっと絞り込み過ぎかつ逆光気味の画質がちょっと暗くて気になりました。NDを上手く使ってみてください。
「浜屋敷通信『こどもの日』」森田英人さん(大阪府大阪市)
浜屋敷という施設の定期的な作品の1本でしょうか? 5月5日のこどもの日の企画の様子で構成されています。何度か横スクロールで情報が表示されますが音声が流せない事情がなければ、ちょっと量が気になります。
「中央アルプス 烏帽子岳」吉野和彦さん(長野県松本市)
烏帽子岩からの眺望を目的に、自分撮りをメインにした山岳作品。逆光気味のカットはあれど、快晴の中での単独登頂はいつもながら、山の新鮮な空気と共に記録されているかのごとく鮮明に伝わってきました。
「こくぞうさんと ともに」小野寺久夫さん(岩手県八幡平市)
定年を迎えた作者がペットとお散歩しながら人生を振り返る作品。標高20数メートルの小山に建つこくぞうさんがその象徴。独特の置きカメラ?によるローアングルの歩きのカットが随所に出て個性を醸し出しています。
「カルガモの子育て日記」宮井富子さん(福岡県北九州市)
雨の日もある中で2ヶ月あまりに渡る撮影。少しずつ何かが変わっていくのを捉えるのは難しいですね。でも撮影量でカバーされていました。控えめなテロップもいい。欲をいえばもう少しアップを見たい衝動に駆られました。
「よみがえった東京駅」木村精二さん(東京都北区)
作者が「平成の宇治平等院」と名付けた復元工事の完成した東京駅の紹介作品。しっかりと調べられた落ち着いたナレーションと、普段気づかないで通り過ぎてしまう色々なゆかりの場所にも言及。
「夏だ! プールだ! すべりに行こう!」広瀬友三さん(兵庫県加古川市)
とにかく豪快でスライダーのシーンを見ているだけで飽きない。そんな夏の家族旅行のファミリービデオ。水に強いタイプのカメラで遠慮なくカメラを持ったままプールに突入。もうちょっとアップは長めでも面白かったと思います。
「富士芝桜まつり」加藤公堂さん(埼玉県川越市)
世界遺産富士山を背景にした芝桜の名所とは、贅沢な景色。1カット1カット丁寧に切り取られたしっかりとした構図。単なる旅の記録というより作者の画へのこだわりを感じました。観光客を美味く画の中に取り入れている。