【4月号記事連動】魁!! ビデオ道場
月刊誌「ビデオサロン」で連載中の読者投稿コーナー「魁!! ビデオ道場」では、毎月1作品を「大賞」、次点の数作品を「入賞」としてセレクト。大賞受賞者には金2万円ほか、大賞・入賞および掲載作品にもその栄誉をたたえてステッカーを贈呈しています。詳細は誌面をご覧ください。今回は2014年4月号掲載の作品を紹介します。解説は岡野肇さんです。
大賞「奥秩父 弁慶岩」吉野和彦さん(長野県松本市)
完成の域に達している作者の撮影手法「自分撮り」が今回も十二分に発揮されています。一人で淡々と道を探しながら弁慶岩へ登頂していくカットバックは見事としか言えません。特に頂上に立つ姿が色々なアングルから繋がれていることに、驚きさえも覚えました。音もシンプルでむしろグイグイ作品に引き込まれます。素晴らしい眺望を拝ませてもらいました。
入賞「白くまの双子ちゃん」大塚鈴枝さん(北海道札幌市)
作者の愛のこもった名ナレーションが秀逸。見る側のことを考えた飽きさせない構成が随所に見られ、あっという間の8分間でした。動物園を扱ったビデオ作品は多いのですが、個性的であり、かつ視聴者を意識して丁寧に作られたこの作品をぜひお手本にしていただきたいです。徐伸線付きのフリップも分かりやすくて素敵でした。
入賞「大河内合戦444年記念祭」河合典之さん(三重県松坂市)
親子で甲冑を手作りする教室の様子を、カメラアングルの高低を見事に使い分けて撮影し、作者のテクニックが充分に発揮されています。時折インサートされる何気ない引きめの画も効果的です。また、ステディショット全盛の中で「手持ち撮影も良いものだ」と思わせる、程よいラフさのある画も作者の個性として伝わってきます。
「もくもくわくわく」山川 泉さん(東京都八王子市)
着眼点がユニークで、独自の世界に連れて行ってもらえる癒やし系のふわふわムービー。ぼーっと空を眺めながら空想に思いを巡らし、リラックスしながら脳トレができるという素晴らしい発想です。後半の水たまりショットもアクセントになっていて良いですね。空が見える窓が1つあれば作れてしまうシンプルな作品は、アイデアの勝利です。
「Amore eterno episode of Takuya & Rina」太田智大さん(東京都荒川区)
先月号に続いてのブライダルムービー。アップショットが小気味良く、色々な位置からのアングルも活きています。作者の真骨頂の移動ショットは、どのくらい挿入するかの加減が難しいところ。マンネリにならないような作品ごとの特色あるカットも欲しいです。例えば、今回の作品では新郎新婦がカメラに目線を向けている移動ショットは良いと思いました。
「福岡県筑前町おくんち」ちあきさん(福岡県北九州市)
小さい頃から見慣れた祭りを作者がカメラを通して伝えるビデオ。これだけゆっくりの行列だともっと様々な角度や高さからの画が見たくなります。静止画のインサートは効果的でしたが、せっかくの動画をもっと活かす工夫をして、色々な技を使ってみてください。
「サーキットの街の文化財」山本勝久さん(三重県津市)
サーキットの街であることを絡めた作品かと思いきや、タイトルだけでちょっと肩すかしを食らってしまいました。現場での解説を巧く繋げていますが、少し駆け足すぎる感じを受けます。ラストの作者と光太夫との2ショットは見応えがありました。
「帰還 螢のスヌーピーJ号」藤村正夫さん(埼玉県八潮市)
飛行船の構造や着陸の仕方など初めて知ることができ、なかなか楽しめました。夕暮れの薄暮の時間帯はとてもきれいな画が撮れますが絞りが難しく、この作品でもカットによって明暗が異なり少し違和感がありました。ぜひ編集での調整にチャレンジを。
「親緑⑫SHINRYOKU紅葉始めました」金谷 功さん(京都府京都市)
先月の「準備中」に続いて紅葉まっさかりのシーズン。技術的クオリティという点では回を重ねるごとに上達し、技を築き上げてきています。BGMもよく溶け込んでいるのですが、やはり環境映像で終わらせないための明確な作者の意図とストーリーが欲しくなります。
「秋の昇仙峡散策」関口 豊さん(埼玉県狭山市)
ナレーションの蘊蓄はどこで調べているのでしょう。現地でなければ得られない情報もありそうで作者のこだわりを感じます。そして徹底した画とナレーションの整合性。天然石の博物館のような編集は楽しめました。エンディングがいつも駆け足なのが惜しいです。
「初日の出」柴山和宏さん(三重県津市)
ストレートなタイトル通りの映像です。年の始めの年賀ビデオとしては厳かで良いのですが、あえて、「別の構成はなかったか?」と考えてみてください。人・自然・時間など、色々な要素をどう活かすか、別角度から見直してみるとさらにステップアップできると思います。
「たまごの旅」照山 明さん(東京都世田谷区)
スマートフォンで撮影、スマートフォンの編集アプリだけで完成させた作品。内容はタイトルそのままですが、あえて付け足さなかったことにも拍手。ワクワク感があり、娘さんのちょっと芝居がかったナレーションがまた最高ですね。こういう短編も良いです。
「多度大社例祭」大矢治朗さん(岐阜県安八郡)
上げ馬神事で有名な例祭を分かりやすく描いています。カメラマンひしめく中で奮闘されたようですが動きがある画は難しいですね。作者の穏やかな制作姿勢と「動」の被写体の対比が面白かったです。次回はぜひ、高速シャッターを試してみてください。
「HO=1/80 この素晴しき世界」髙田義久さん(北海道札幌市)
とても好感の持てる作品ですが、もっと突っ込んでほしいとも感じてしまいました。ジオラマの撮影アングル、ジオラマ作者へのインタビュー等、違ったアプローチもあると思いますので、持ち前の丁寧さにカメラマンの貪欲さをプラスして再度挑戦してみてください。
●この動画の連動記事はビデオSALON2014年4月号に掲載しています。