9月のはじめ、編集部に「質問」という件名で『教えて頂きたいのですが、「藤沢シネマ」の監督の人選はどういった感じで決めているのでしょうか?』というメールが届いた。送信主はもちろん、今回の上映作品『二人』の監督・小田さん。その後、この作品の基になった「四人」の脚本が送られてきたが、それはこれまでにない会話劇スタイルでとても面白く、即撮影を依頼することになった。
漫画のようなポップさを取り入れたコメディテイストの作品、というのが監督の狙いどころ。最終稿に書き加えられたダンスシーンでよりポップでスタイリッシュになり、とても楽しい作品になった。
役者も面白い脚本を大いに盛り上げ、山本役の山本さんのテンションに負けじと応じる玲花ちゃんの演技も見所。読み合わせの段階で、こんなに笑わせてもらったのは初めてだ。
寒さの中の撮影は過酷を極め、遂には日没までに撮り切れず…。しかし、手元にあった小さなLEDライトに助けられ、それが思わぬ効果を生み出した。どんな条件下でも何とか乗り切るプロの技を見せてもらった感じだ。さて、上映時間になりました!
『二人』
あらすじ
バイトの先輩・山本(山本)に川原に呼び出された渡辺(藤沢)。恋の告白と思いきや、二人揃って両手を上げてUFOを呼ぶことに。クリスマスを前に二人の前に現れたのは、果たして…。●カメラ:ソニーNEX-FS100J / ●編集:Final Cut Pro 7 / ●上映時間:13分31秒
脚本・監督・編集●小田 学
▲フリーで映画、舞台の監督、作・演出を務めながら、母校である日活芸術学院では講師として教鞭もとる。国内外で映画賞受賞歴多数。
劇団 兄貴の子供HP●http://anikinokodomo.com
撮影●春木康輔
▲日活芸術学院卒業後、フリーで撮影の仕事に就く。カット数が120を超えるという過酷な条件の中、段取りよく撮影をこなした。
主演/渡辺エミ(18)役●藤沢玲花
▲レンタルビデオ店でバイトをする恋に憧れる普通の女の子を演じる。山本の個性に翻弄され、時に激しい言葉遣いも飛び出して…。
藤沢玲花さんの公式HP(ジェイライブ)●http://jlive.tv/reika.html
山本(31)役●山本圭祐
▲バイト先の先輩・山本を演じる。小田監督とは古いつきあいで、この脚本もあて書きしたかのようにイメージ通り。表情・口調に注目。
山本圭祐さんの公式HP●http://www.office-123.com/yamamoto/index.html#
制作スタッフ
▲日没前に大慌てで撮影した記念写真。何やら怪しい人が混じっているが、それは作品を観てのお楽しみ。主演の山本圭祐さんと藤沢玲花さんに続いて高崎 信(照明)、その後列左から中川美都里(振り付け)、春木康輔(撮影)、小田 学(監督)、中島の父(???)、中島元気(照明)、3列目左から中本竣史(助監督)、伊丹一登(助監督)、重政良太(助監督)、中川 望(録音)に続いてマリリンモンローズの面々(敬称略)。
●美術:吉田夏奈
●編集:長江悠介
●特殊メイク:壁谷博貴、小野寺 祥、小浜正詩
●主題歌:「sweet dance」マリリンモンローズ 公式HP●http://www.mmz291291.com/maririnmonrozunoHP/news.html
制作後記 / 小田 学
理由:「うずうず」していました。今年、長編を撮るためにお金を貯めていて、去年は舞台も映画もやる予定ではなかったので。日活芸術学院という映画の学校を卒業してから今まで、毎年必ず1本は何かを制作していたのですが去年は我慢をしていた。
そんな我慢の年にビデオサロンの「藤沢シネマ」を知り、我慢の限界で本誌にメールを。そうしたら企画が通って撮影させて頂けることに。正直「やったー!」って子供みたいな感じで。
師走の忙しい時期にも関わらず集まってくれたスタッフ達はほぼ日活の同期や後輩。やっぱり映画学校の繋がりは本当にありがたいし心強いと感じました。
撮影はとても大変でした。準備を含めると18時間。出演者は二人、言葉の掛け合いのコメディをと思っていたので(まぁそれしか出来ないのですが…)カット数がとても多く、時間との兼ね合いもありなるべくワンカットワンテイクでジャンジャン現場をまわしました。それでもデイシーンの予定のところがナイターになってしまったりしましたが…結果的に雰囲気も出て良かったと思います。
それと驚かされたのが主役の藤沢さんです。相手役の山本君は同じ劇団ということもあり、僕の言いたいことも理解してもらえるのですが、藤沢さんは今回初。稽古の日も読み合わせ3回だけ。ほとんど初対面に近い状態で本番を迎えましたが、見事に作品のテイストに乗ってくれて。ダンスシーンもすぐに覚え、若いのに超凄い!って。僕もがんばらねばと思わされました。
人生初めてのダンスシーンでは振り付の中川美都里さんに即興でアイデアをもらい、バンドのマリリンモンローズには寒い中、元気をもらいました。写真にはありませんが日活の特殊メイクコースの方々の協力も助かりました。
今回の撮影で確認できたことが2つ。やっぱり映画制作は楽しいので、作りたいと思ったら我慢しないことと、それに協力してくれる仲間って超いいなーってこと!
◆ビデオサロン2012年2月号
http://www.genkosha.co.jp/vs/backnumber/944.html