vol.9「ドローン操作のために知っておきたい電波のキホン(後編)」
文●野口克也(HEXaMedia)

東京都生まれ。空撮専門会社「株式会社ヘキサメディア」代表。柴田三雄氏への師事の後、ヘリコプター、モーターパラグライダー、無線操縦の小型ヘリなど、空撮に関わるすべての写真、映像を区別なく撮影。テレビ東京系地上波『空から日本を見てみよう」、BS JAPAN『空から日本を見てみようPlus』などTV番組やCM等の空撮を多数手がける。写真集に夜景の空撮写真集「発光都市TOKYO」(三才ブックス)など。http://www.hexamedia.co.jp/



 前回はドローンに関する基本的な電波の知識について解説しました。今回は後編ということで、実際の現場での運用についてお話していきましょう。

飛行コースは撮影意図の他電波的な視点で選定

 ドローンの電波が直進性に優れているということは前回紹介しましたが、言い換えると、障害物に弱いということになります。かなり遠くても機体が見切れていなければ電波は届きますが、障害物に隠れた瞬間に電波は途切れると考えてください。撮影現場ではドローンを安全に離着陸させられる場所の選定とあわせて、撮影でドローンを飛行させるコースとコントローラーを持っている自分自身が、常に障害物に隠れない場所の選定が必要です。その際には、障害物の配置などによっては、飛行コースをカメラアングルや撮影意図優先のコースから、電波的な障害を避けるコースに変更する必要もあります。ロケハンなどで事前に撮影場所に訪れることができる場合は、カメラアングルだけでなく、機体をコントロールする位置も必ず確認しておきましょう。

GoHome時に事故につながるケースが多い

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▲高い建物の反対側に回りこんでしまいドローンが電波をロスト。GoHomeモードが起動し、自動帰還に入るも、予め設定しておいた高度よりも建物が高く激突…。ドローンを飛ばす際は、常に操縦者から見える位置に機体を飛ばすのが電波を途切れさせないための第一歩になる。
 目視確認をきちんとしているつもりでも撮影に夢中になってくると、撮影対象とドローンの間に建物等の障害物が入ってしまうことがあります。その場合、映像信号やコントロール信号が遮断された状態になった数秒後には最近の機体であればほぼ「GoHome(自動帰還機能)」モードに入ります。すると、ただちに予め設定された高度に上昇し、自動操縦で離陸した位置に向かって直線で帰ってくることになります。
 撮影対象が高い建物等でその向こう側に機体が入ってしまった場合は、建物の影から操縦者側に戻ってこようとするわけですから、設定高度が建物より低かった場合そのまま建物に激突する可能性が高いわけです。これまで報告されたドローンの事故で、多いのがこのケースだと思います。撮影中はモニター画面で撮影対象とともに常に自分の位置も確認し続け、万が一自分の位置が撮影対象の影に隠れそうになったら高度を上げて隠れないようにするか、隠れる前に動きを止めるなどの工夫が必要です。また、GoHomeの設定高度は、撮影対象物の高さを余裕を持って越えられる数値に予め設定することも、事故防止のためには効果的です。
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▲Phantomの操作アプリDJI GoではGoHome(リターントゥホーム)に入った時に戻ってくる高度を予め設定できる。

高度差について

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▲DJI Phantomの受信機のアンテナは本体下部に収納されているため、離陸地点よりも高度が低い場所を飛ばす場合には通常よりも電波の到達距離が短くなる。
 ドローンは通常、離陸地点から上昇させることを前提として設計されています。そのため一般的なDJI社のドローンは機体の下方向にアンテナがついています。しかし、撮影内容によっては離陸場所よりも、いったん高度を下げて撮影しなくてはならない特殊な対象もあります。その場合は、同じ距離を上昇方向に飛ばした時よりも、映像信号が到達する距離は短くなります。このように電波が途切れてしまう要素は様々なケースがありますが、ドローンの電波の特性を充分に理解し、安全に飛ばすことを心がけましょう。

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★○ 改正航空法概要ポスター
http://www.mlit.go.jp/common/001110369.pdf
★ 「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」国交省HP
http://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html
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◆この記事はビデオSALON2016年10月号より転載
http://www.genkosha.co.jp/vs/backnumber/1596.html
◆連載をまとめて読む
http://www.genkosha.com/vs/rensai/sorakara/