第7回ではズームフォローの基本を書きました。列車の大きさを一定にして、フォルムをしっかりと見せるシーンや、最初に列車をアップで見せて広角に引くことで、「こんな列車が、こんな風景を走っている」というように1シーンで見せる方法が基本です。
今回は応用編で、いろいろなズームフォローです。
何を見せたいのか? 編集でどう使うのかを考えながら撮影する
まず考えられるのが接近してくる列車を望遠から広角に引いてフォルムをゆっくりと見せ、そのまま振り返って走り去る後ろ姿を撮影する方法です。列車の前から横、後ろ姿まで余すところなく見せることができる撮影方法です。
注意点としては列車が走り去るときにズームでアップに追わないこと。いったん引いた画角をまたアップにしてしまうと、説明的でしつこい映像になります。1シーンでのズームは1回を基本として撮影すると見やすい映像になります。
また、この方法は1シーンで構成が完結する(列車が走り去ることでシークエンスが終わる感じがする)ので、連発して撮影、編集するのではなく、ここぞというシチュエーションで撮影し、編集時には構成の転換点やシークエンスの終わりに使うのが効果的です。
振り返るフォローの例
もうひとつはズームアップによるスピード感の表現です。広角側から望遠にズームをしながら列車を追うと、望遠になるほど列車背景が画面上を高速で流れます。シーンが進むにつれて、どんどんスピード感が増してゆきます。風景を中心に、ゆったりとしたシーンの連続から、列車アップの迫力のシーンを連続させる構成で、映像のスピード感を転換するときなどに有効です。
ズームアップしながらのフォローの例
この他にも画角の変化とパン、ティルトによる変化を利用した撮影方法はいろいろ考えられます。いずれの場合も「何を見せたいのか?」「編集の構成上どのような使い方をするのか?」を考えながら撮影に臨むのが重要です。
今月のお奨め路線 只見線
只見線は福島県の会津若松から県境の六十里トンネルを越えて新潟県の小出に至る路線。この路線の福島側は尾瀬に端を発する只見川に沿って走ることで知られています。この只見川にはダムが多く、それらを渡るために長く大きな鉄橋が8本、それ以外の鉄橋もあり、山深い風景にアクセントを加えてくれます。
作例の橋梁は只見川の支流に架かる橋梁で、滝谷駅から徒歩5分と列車での撮影もしやすい場所にあります。例年の紅葉の見頃は10月の終わりから11月上旬です。最近の気候で紅葉の時期が遅くなっているようですが、この付近の紅葉が早い場合には只見に近づくと標高が高くなり、見頃になっていることもあります。
美しい橋が多くて撮影ポイントの多い路線ですが、列車本数が少ないためによく計画して撮影に出かけてください。
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【筆者プロフィール】佐々倉 実
鉄道映像作家。小学生の頃から鉄道写真を始め、大学生の頃、当時鉄道員をしていた今井洋氏と出会って以来、製作活動をともにする。現在は、佐々倉氏が撮影、今井氏が編集を担当し、雑誌やDVDパッケージを中心に鉄道ビデオを製作している。DVDに『魅惑の蒸気機関車 四季SL紀行』、『日本の鉄道 新幹線・特急編/蒸気機関車ローカル線編』などがある。2010年7月に『感動の美景鉄道』(MAXAM)が発売された。
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