1月下旬から2月にかけては冬の寒さも一段と厳しくなる時期です。特に東北、北海道、信州の標高の高いところなどでは積雪が深くなり、マイナス10度を下回る日も珍しくはありません。冬の鉄道撮影は雪の表現や列車の動きなど他の季節では見られない迫力の映像を撮影することができます。
ただ、寒さのリスクもあります。今回は厳冬期の注意点とコツです。
雪の中の危険
積雪時の注意点としては大きく2つあります。ひとつは列車の接近音が雪に吸収されて聞きにくくなることです。また列車が遅れることがあり、時刻表を見ていても確実ではありません。他の季節でも線路を歩くことは危険ですが、冬は特に線路に近づきすぎないように注意が必要です。同じ理由で、回し始めた後、列車が遅れてきても対応できるように、テープやメモリーカードは余裕を持って準備したほうがよいでしょう。
もうひとつは、雪国に多い融雪の側溝など、雪の下に隠れている障害物です。他の季節では草や低木に覆われて歩けないような場所でも、雪のしまった時にはかんじきを履いて雪の中を歩くことで、むしろ簡単に目的地に着くことあります。ただ、線路や道路近くの谷になっている部分には近づかないなど充分に安全を確認してください。
カメラの防水防寒対策
降雪時のカメラの対策は雪の状態によって変わります。服などに付いたときにすっと融けるような比較的気温の高い時にはレインカバーが必要です。レインカバーはメーカーなどからオプションとして発売されています。雪の粒が大きくてカバーに当たる音が大きく入るような時には、マイク部分にタオルを掛けておくことでだいぶ軽減できます。
もっと低温時の雪はさらさらとしていて、少しの風でどこにでも入り、レインカバーの隙間からカメラに積もってしまうこともあります。私は保温性のあるキルティングの生地の外側に、多少の防水のある生地を使って、オリジナルの防寒カバーを作っています。レンズ、マイクの部分は縫い合わせて紐で絞れるようにしてあり、それ以外の3辺はマジックテープで全周を留められるように作りました。ファインダーはマジックテープの間から出します。フォーカスなどの操作もマジックテープを広げて使います。
風向きに注意
吹雪の時は真っ白な雪の中からヘッドライトが現れ、次第に見える車両など動画ならでは迫力の映像を撮影することができます。しかし風向きによっては横向きに降る雪がレンズについて撮影にならなくなってしまいます。掲載した画面の映像は強烈な吹雪でしたが、追い風のため問題なく撮影ができました。向かい風の場合、レンズフードは必須。できれば車や物陰で少しでも雪を回避します。それでも待つ間に雪が付く場合は、列車通過時間にレンズにタオルを掛けたままで回し始め、列車が見えた瞬間にタオルを外すなど少しでも付着する雪の量を減らす工夫が必要です。
もちろんレンズクリーナーを持ち歩き、撮影前後にレンズの汚れを確認する必要があります。
今月のお奨め路線 釧網本線
釧網本線は北海道の網走から東釧路を結ぶ路線です。本線とは名ばかりのローカル線ですが、釧路湿原のSL列車、タンチョウヅルの飛来、川湯温泉など、特に冬の観光路線として知られています。今回のお薦めは網走から知床斜里にかけてのオホーツク海に沿って走る区間です。流氷や知床連山、濤沸湖の白鳥など車窓からの見所はいっぱいです。
サンプルの列車は流氷ノロッコ号、車内にはダルマストーブがあり、広い窓とゆっくりと走ることで風景を楽しめる列車です。2011年は1月29日から3月まで運転をする予定です(時刻表等で確認してください)。この撮影地は北浜駅から少し知床斜里側に進んだ濤沸湖の河口の鉄橋です。この他にも北浜駅にある展望台などから撮影することができます。
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【筆者プロフィール】佐々倉 実
鉄道映像作家。小学生の頃から鉄道写真を始め、大学生の頃、当時鉄道員をしていた今井洋氏と出会って以来、製作活動をともにする。現在は、佐々倉氏が撮影、今井氏が編集を担当し、雑誌やDVDパッケージを中心に鉄道ビデオを製作している。DVDに『魅惑の蒸気機関車 四季SL紀行』、『日本の鉄道 新幹線・特急編/蒸気機関車ローカル線編』などがある。2010年7月に『感動の美景鉄道』(MAXAM)が発売された。
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