「ビデオサロン」で連載中の読者投稿コーナー「魁!! ビデオ道場」では、毎月1作品を「大賞」、次点の数作品を「入賞」としてセレクト。大賞受賞者にはその栄誉をたたえて金2万円を贈らせていただきます。大賞・入賞および掲載作品にはそれぞれポイントがつき、累計ポイントによって当ビデオ道場における段位が認定されます(最高位:師範代)。
今回は2017年5月号掲載の作品を紹介します。解説とともに動画をご覧ください。<解説:岡野 肇>
<大賞>
行楽ビデオ 『おばあちゃん 珊瑚礁をゆく』 7分30秒
重岡初江さん(東京都大田区)
●作品紹介●西表島での作者の初シュノーケル奮闘記。透き通る海の中を初めて体験する様が、ウキウキ気分のナレーションで元気よく紡がれる。水中映像に加えて珊瑚だけでできた無人島のシーンも付加。見ているだけで思わず行きたくなる作品。
◆講評◆まさにタイトルそのまま、南の島のシュノーケリング体験ドキュメンタリーですが、作者の高揚感の伝わるナレーションが素晴らしい。味のある読み方に加えその内容も良く、自らが体験したというこの作品の主題を踏まえ、徹底的に一人称で語られたもの。体験した者だけが知る情報や感想がリアルに伝わってきます。水中撮影自体には技術的にはブレやアングルにまだ物足りなさを感じますが、そこは次回作に委ねたいと思います。構成ではシュノーケリングとバラス島の2つのシーンを描いたことでメリハリが付きました。そしてあえて申し上げるとすれば、もっと作者の感想がナレーションとして聞きたくなります。どうぞ今後もお元気でビデオライフをお楽しみ下さい。
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<入賞>
地域ドキュメント 『夕暮れに舞う驚きの光景 ツバメのねぐら入り』 5分
上野陽亮さん(石川県かほく市)
●夕暮れ時、ツバメが集団でねぐらと呼ばれる巣に帰省する習性、通称「ねぐら入り」の観察会に参加した作者。圧倒されるねぐら入りの迫力と分かりやすい解説も交えて、見る者にワクワクさせる作品。インタビューにはiPhoneも活用。
◆日没時という難しい撮影コンディションの中、期待感の高まりが上手く描かれてます。インタビューも短く的確で、来るべきツバメショーを煽ります。右上に日時のテロップを配したのもこの作品にはプラス要因。また冒頭のタイムラプス撮影や暗いシーンで思い切って増感していることも、このカテゴリーの作品ではむしろリアリティを増してくれます。ツバメのねぐら入りはほんの数分の出来事ですがそれをクライマックスにしつついろいろな情報や感想を上手くプラスした構成が印象に残りました。次回は作者のナレーションを聞いてみたいと思います。
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歴史再現 『子どものころ 消えた安東』 7分38秒
本 瑞昭さん(石川県小松市)
●前作に続き旧満州安東市から引き上げてきた話を絵と対談で構成。◆素晴らしい絵を活かす手法が作品コンセプトに合っていて、聞き手を置いたのも良い手段。細かい所まで丁寧で、歴史を語り継いでいきたいという作者の気持ちが伝わってきます。
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地域ドキュメント 『田起こしから収穫の喜びへ』 7分18秒
清水英毅さん(東京都八王子市)
●休耕田復活の記録。◆今では知らぬ者も多い米を作る過程に着目されたのは良いですね。日々成長する稲を丁寧に撮影していて見ている方もワクワクします。根気がいる手法ですが、田を定点撮影してそれをタイムラプスで見せる手も良かったですね。
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地域ドキュメント 『遠賀川と鮭』 8分
森本美代子さん(福岡県飯塚市)
●鮭が遡上する遠賀川の物語。◆珍しい鮭神社、孵化場、稚魚の放流と話題豊富な作品。丹念な撮影に頭が下がります。ただ、素材を貫くテーマが少し見えにくいので、作者の思いをさらに加味すれば奥行きの深い作品になると思います。
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自然紀行 『しゃくなげの渓谷』 7分42秒
吉見秀雄さん(神奈川県南足柄市)
●しゃくなげを求めて西沢渓谷を巡る。◆新緑の渓谷を現場リポートとそれを活かす実況型ナレーションを交えた構成。滝の水と新緑で揃った画面のトーンもこの地の特色をよく捉えています。細かい解説が行き届いているのも作者の真骨頂。
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地域ドキュメント 『町の芸能を継なぐ』 7分52秒
河合典之さん(三重県松阪市)
●漁港の町松崎浦に伝わる伝統芸能を描いたドキュメント。◆地域芸能を繋いでいくというテーマとその継承風景、そして本番という題材を得意のハンディとローアングル、アップで撮影していく作品。解説のナレーションも分かりやすいです。
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ドキュメント 『芭蕉は憧れの松島に』 6分59秒
山口 尭さん(三重県松阪市)
●芭蕉が憧れた松島を中心に「奥の細道」を辿る旅。◆憧れた割りに短い滞在時間にスパイ説があるなど「奥の細道」のミステリーにスポットを当て作者の推理を展開させるストーリーを設定したのが面白い。個性的な作品となっています。
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ビデオ年賀状 『2017年初日の出 羽田』 6分14秒
藤村正夫さん(埼玉県八潮市)
●年賀ムービー2017年版。◆羽田空港が見渡せる城南島からの点描がいかにも航空作品が得意な作者らしく個性的に描かれている。年の初めの期待感と、ゆったりとした日の出との対比が利いています。年賀状を動画で贈るのもいいもんだと思わせる作品。
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◎ビデオ指南◎
ツーリングビデオ
『伊豆ツー いいね!』 5分53秒
田中清人さん(神奈川県川崎市)
◆伊豆の魅力を映像で伝えるツーリングビデオ。ドローン撮影の雄大な景色のゆったりとした移動ショットとスピード感溢れるバイクの走りの対比で作品自体に躍動感を感じます。ドローン撮影によるバイクの走りも風景ととけ込んでこれもまた魅力的。一昔前ならCMでしか叶わない撮影が身近になりましたね。編集も秀逸で作品のどこを指南すれば…と思いますが、構成面でひとつ。あえてライダーのストーリーを加えてみるのはどうでしょう。今の見事な撮影だけでも圧倒されますが、同時にこのライダーのことを妄想するはずです。その妄想の手助けになる小さなストーリーをそっと提示することでさらに見応えのある作品になるはずです。