マイクロシネマコンテストの地域プロモーション部門の優秀作の制作者にお話を訊いていく。今回は岡山の制作会社、ニューステラが地元の魅力をドラマテイストで描く自主制作ショートムービーの制作舞台裏をうかがった。

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取材・文/編集部 一柳

 

 

『変わらない景色 新しい自分』株式会社ニューステラ 一守大成さん

セリフやテロップではなく音楽と表情と効果音で感情の動きを表現する観光イメージムービー

地元岡山の魅力をドラマテイストで表現した観光PRムービー。街で毎日慌ただしく働く女性が、昔の家族写真を見つける。休日に、あの頃と変わらない、ゆっくりとした時間が流れる岡山の各地を巡り、いつの間にか忘れていた気持ちを思い出していく。3分40秒。

 

マイクロシネマコンテストの地域プロモーション部門の優秀作の制作者にお話を訊いていく。今回は岡山の制作会社、ニューステラが地元の魅力をドラマテイストで描く自主制作ショートムービーの制作舞台裏をうかがった。

株式会社ニューステラは井上翔太郎さんが代表を務める岡山県倉敷市を拠点に活動する制作会社。2013年2月に創業し、2016年12月に法人化。ドローン空撮、水中撮影を得意としていたが、そこに竹山元貴さんが加わり、映像制作業務の幅を広げてきた。さらに最近、一守大成さんが加わった。

一守さんは竹山さんに誘われて映像業界に入ったばかりで、良い機会だから練習を兼ねてコンテストに出してみようと企画したのが今回の作品。つまり依頼されたものではなく、コンテスト用に作った自主制作の観光ムービーということになる。ニューステラの案件として小規模から中規模のものが多く、どうしてもひとりで企画し、撮影編集して最後に納品するというスタイルが多いので、一守さんもひとりでできるようになってほしい。いきなりクライアント案件だと大変なので、それを想定してコンテスト用に作ってみたのだという。今回は竹山さんがディクレションとして全体をサポートしながら、一守さんが撮影許可などの制作業務から、モデル探し、本番での撮影を担当した。

 

セリフなしのドラマテイスト

ムービーはドラマテイストだが、セリフはなく、動きと表情での演技のみ。セリフのある演技を求めると、そこまでの役者を起用するのは予算の関係で難しいし、現場でも時間がかかってしまう。そこで一守さんの知り合いで演劇の経験がある岩城梨菜さんにお願いした。セリフやナレーション、テロップがなくても表情と効果音で感情が伝わるように設計していった。

 

ロケーションの重要性

ロケーションには特にこだわった。ロケハンをするときにどの時間帯でどういう光になるかを調べておくことで、映像のクオリティはあがるし、照明が最小限に抑えられるからだ。撮影現場は竹山さん、一守さん、岩城さんのみでフットワークよく回って撮影。今回ロケ地を探し、使用していないところも見て回ったり、協力要請をしたことがその後の仕事にも役立っていると、一守さんは言う。

編集は実は音楽を先に決めて、そこにイメージに合うリファレンスの画をハメていったものがプリビズとして存在して、それをもとに撮影していったそうだ。この手法は参考になりそうだ。映像のクオリティは高いがカメラは小型α7S IIIのみ。竹山さんは「いろいろ使ってきて、α7S IIIで充分なクオリティが出るので、自分たちの満足というより、構成のアイデアなどクライアントの満足度に繋がるところで差別化を図りたいと思うようになりました」という。

 

撮影現場

受賞作品の撮影現場の様子。スタッフは撮影の一守さんと、ディレクターの竹山さんのふたり。カメラとマイク、モニター、ジンバル、三脚、iPadのみ。




 

主な機材リスト

 

ニューステラが制作した事例より

VERACITY V-Lite 特定小型原付 の公式PV。街中での移動やキャンプでの使用を想定したイメージ映像を撮影。

 

TACYON 2023 ドキュメンタリー映像。2023 年のよさこい祭りでTACYONというチームを追う。インタビューベースで祭の過程を描く。

 

一級建築士の片山恭平氏にインタビューしたプロモーションムービー『住みたいを形にする 建築のパズル』。

 

 

VIDEO SALON 2024年2月号より転載