第30回
ワンマンオペレーションが可能になった
ミニCパンアームの効果的な使い方は?

文◎ふるいちやすし

動画のカメラワーク。つまり被写体に対して視点をどう動かすかということなのだが、上下・左右・遠近だけではなく、カメラの場合はレンズを変えて視野の広さを変えたり、フォーカスを移動させて視点の意識を移動させたり、また、そのすべての変化のスピードや動きの質によっても被写体に対する思いを表現することができる。できるからにはやらなくてはつまらない。その発想とそれに応える身体の動きが肝であることには違いないが、それをサポートしてくれる道具や、身体の限界を超えるカメラワークを可能にしてくれる道具は、カメラマンのイメージに直結する大切な物だ。そういう意味では今、カメラマンにとって最高の時代を迎えているのではないかと思える。

DSLR の進化のスピードが凄い。それに各メーカーのモデルの豊富さに、もう何を選んで良いのか分からなくなるほどだ。それに近頃のモデルは動画の撮影をしっかり意識してくれているので嬉しい限りだが、中には動画ではなく、本来の静止画機能の向上でモデルチェンジをしている物もある。つまり、高くて新しければ動画面でもいいとは限らない。

カメラ本体はともかく、共通して言えることは軽くて小さいということ。それによって三脚やジンバルを始め、DSLR ならではの周辺機器のアイデアが面白い。こちらも続々と新しい製品が生まれている。中でもスライダーやジブアームといった製品は DSLR の軽さを最大限に活用した魅力的な物が次々とリリースされており、三脚の上に載せてワンマンオペレートを可能にしてくれ、撮影の幅を一気に拡げてくれている。

そんな中、以前ご紹介した9.Solutions のCパンカメラガイドアームという製品があったが、ちょっと大き過ぎてワンマンオペレーションには無理があると私が言ったのを聞いていたのかどうか、一気にカメラバッグに入るサイズにまで小さくしたミニCパンアームという製品が発売された。何と言ってもこの小ささが大きな武器。組み立て要らずでバッグから出してそのまま三脚に載せるだけ。もちろん、小さくなった分、スライド幅は 60cm と物足りなさを感じそうだが、構造は元祖Cパンアームと同様、二本一組になったフレームの片方の支点を変えることできれいな円弧を描く動きになり、その円弧を外向きにしてやるとカメラも同時にきれいに振れるので驚くほどダイナミックなスライドショットを撮ることができる。

▲円弧の調節は二本の二組のアームの支点を目盛に合わせて変えるだけで簡単に無段階調節できる。アームを固定するネジも付いているが、これの締め具合で粘りが出せるものではなく、またしっかり締めてもカメラを完全に固定するというわけではなく、付けっぱなしというわけにはいかない。カメラは新製品のキヤノン EOS 6D Mark II を使用した。

もちろん、この円弧を内向きにすれば回り込みショットになるのだが、こちらは小さい分、近くの被写体にしか効果は少ない。動きはスムーズそのもので精度の高さを感じるが、残念なことに粘りは皆無なので、素早いスライドにはいいが、ゆっくり一定に動かすのは至難の技で、私にはほぼ不可能と言っていい。ヘッドに自由雲台を追加することで、この円弧と縦、斜め使いを可能にし、動きのバリエーションは多彩だが、やはり粘りがないのでほとんど腕だけでカメラを支えることになり、これもまた至難の技となる。これに限ったことではないが、どうしてメーカーは発売前に日本のユーザーのモニタリングを行わないのだろう。私はなんなら開発の段階で協力してもいいくらいの気持ちでいるのだが、海外のメーカーだとなかなかそういった話は聞かない。より使いやすい物にしたいという意識は同じはずなんだが。

手に入れてすぐに素晴らしい働きをしてくれる道具が素晴らしい道具だとは限らない。使いこなすのにトレーニングが必要なものであっても、その結果、素晴らしいショットが撮れればそれはとても幸せなことだろう。道具を作る者と使う者がそうやって一体化を目指すのがロンサムビデオの流儀だ。

被写体に合わせて回り込むような映像はスライダーではやりにくい表現

▲近い被写体に威力を発揮する。円弧をうまく使って距離をコントロールすることでフォーカスの決めを作ると面白い。【女優】石川友紀

9.SOLUTIONS(ナインドットソリューションズ)のミニCパンアームは88,000円。
取り扱いは銀一(☎︎03-5550-5036 http://www.ginichi.co.jp