モバイルSSD、G-Technology G-DRIVE mobile SSD
Report◎斎賀和彦
PCのデータを保存しておく場所(装置)のことをハードディスクって言う……という間違いが通用してしまうくらいストレージ(データ保存装置)の主役は長い間ハードディスクドライブ(HDD)が占めていました。
でもビデオサロン読者なら気がついているように、近年内蔵HDD は SSD に置き換わっている例が多く、Mac の場合、ノート型はすべて SSD になってしまいました。
高速な SSD はレスポンスもキビキビしているし、写真や動画編集といったアクセス速度が重要な場合のメリットが大きいですね。
反面、HDD に較べて容量が少なく、それでいて高価なのが難点。ゆえにヘビーにノート型Macを使う場合、外付けストレージが必要になります。
…のですが、モバイル型の HDD ではアクセス速度が遅く、4K はじめ「重い」ビデオ編集が厳しく、コマ落ちしたり止まったり。
もちろん、Final Cut Pro や Premiere にはプレビュー時の画質やフレームレートを落とす機能もあります。が。それにも限界があり、結局、モバイルHDD はバックアップ用にしかならない場合も多かったと思います。
これに対し、近年、出てきたのがモバイルSSD。RAID など業務用HDD機器で有名な G-Technology から小型モバイルSSD、G-DRIVE mobile SSD(以下GドライブSSD)が発売されるのを機に、改めてモバイルSSD の特徴を考えてみましょう。
▲ G-DRIVE mobile SSD は厚みを別にすると iPhone 7 Plus のおよそ2/3の大きさで重さは半分以下。
▲ 手のひらに収まるサイズで防塵防水耐衝撃。1TBの高速ストレージ。
▲ サンディスクのモバイルSSDとの速度比較。USB3.0(Mac Pro)とUSB3.1 Gen2(MacBook Pro)とでは大きな差が生じるのが面白い。サンディスク エクストリーム900の高速ぶりは同製品がSSDを2枚搭載し RAID を構築していることをうかがわせる。
HDD は高速で回る円盤が核にあり、その直径(3.5インチあるいは2.5インチが主流)の制約から小型化に限界があります。そしてシングルドライブでは速度にも限界があるので2台以上の HDD を束ねる RAID という手法で高速化するのですが、その分、筐体は大きくなり大電力も必要とします。なにしろ円盤を物理的に回しているのです。そのため2.5インチシングルHDDクラスなら USB等の供給電力で動きますが RAID では別に電源が必要です。家やスタジオで使うにはそれで良いのですが、ロケ先で使うモバイル用としては厳しいですよね。
SSD は物理的な駆動部がないので省電力かつバスパワーで動き、また物理的駆動部がないということは振動や衝撃に強いという利点もあります。実際、今回の GドライブSSD は3mの高さから落としても大丈夫な耐衝撃性を誇りますし、今回比較した手持ちのモバイルSSD のどれも程度の差はあれ、耐衝撃性能は HDD のはるか上を行きます。
手持ちの SSD はカメラ用メモリーカードの雄、サンディスクのもの。SSD も半導体メモリと考えればサンディスクの領分、高速ストレージと考えると G-Technology の得意分野。これまで基本的には違うジャンルだった両者が真っ向からぶつかる形になります。
ただ、実は両者ともこの数年で同じ WD(ウエスタンデジタル)社の傘下になったので、大きな意味では同じ会社。そう思ってスペックを較べて見ると3つの製品がそれぞれ競合しつつ、棲み分けているように見えてしまうのは気のせいでしょうか(笑)(表参照)。
速度をある程度割り切った代わりに、小さく薄いサンディスクの510は手軽で高速なロケ先バックアップ用。
モバイルSSD のなかでも飛び抜けた速度を誇る900はその分やや大きく重く高いですが、数十万円する高速RAIDと(容量以外)遜色のない性能。
そしてGドライブSSD はまさにその中間、手のひらサイズで 100g に満たない軽さながら、4K編集にも耐える高速性能。さらに防塵防水で価格も抑えめ(執筆時は米国での価格しか発表されていないので想定です)。容量、速度、コンパクトさと堅牢性のバランスがもっとも取れたハイコストパフォーマンスSSD とも言えますが、絶対的な性能を求めるならサンディスクの900も注目です。
面白いのはどの SSD も Mac Pro に繋いだ時と MacBook Pro に繋いだ時でアクセス速度が異なること。公称速度の速い製品ほど、その差は大きくでます。
そんなの USB 3.0(Mac Pro)と USB 3.1 Gen2(MacBook Pro)の差でしょ、と言ってしまうとその通りなのですが、USB3.0 でも各製品の公称速度以上の理論値があるので、もっと速度が出ても良いはず。理屈通りにはいかないのが現実の I/O というところでしょうか。その意味で言えば同じ USB-C端子であっても Thunderbolt3 規格になればもっと速度が出るかもしれません。
容量単価はまだ高額ですが、それでも手の届く範囲になってきた超高速ストレージ、SSD は、4K映像編集時代の注目アイテムになりそうです。
▲ 今回比較した製品。左:サンディスクエクトリーム510 中:G-Technology G-DRIVE mobile SSD 右:サンディスクエクトリーム900
▲ 同じ G-TechnologyのG-RAID Thunderbolt と。4年前の機材だが HDD を2台搭載したRAIDドライブ。それでも G-DRIVE mobile SSD の方が高速なのだ。