vol.23「ドローンの基本的な飛行練習法」
文●野口克也(HEXaMedia)

東京都生まれ。空撮専門会社「株式会社ヘキサメディア」代表。柴田三雄氏への師事の後、ヘリコプター、モーターパラグライダー、無線操縦の小型ヘリなど、空 撮に関わるすべての写真、映像を区別なく撮影。テレビ東京系地上波『空から日本を見てみよう」、BS JAPAN『空から日本を見てみようPlus』などTV番組やCM等の空撮を多数手がける。写真集に夜景の空撮写真集「発光都市TOKYO」(三才ブックス)など。http://www.hexamedia.co.jp/

※この連載は2017年12月号に掲載した内容を転載しています。

 

 

ドローン撮影の練習方法

ドローンは今までのクレーン、ドリー、ステディカム等の特機と比べ、稼働できる範囲、速度、角度がひじょうに自由な撮影機材です。自由度が高い分、撮影というカメラ操作に加えて、ドローンの操作がさらに必要になります。思い通りの空撮ワークをするためには、ドローンの飛行練習が撮影練習に加えて必要になります。今回は飛行の基礎的な練習法についてお話します。

Positionモードをオフ

先月お話ししたように、ドローンにはGPSに加えて様々なポジショニングデバイスが装備されています。それを敢えてオフにしたり、もしくはポジショニングデバイスが装備されていない機体を練習機として操縦訓練をすることで、基礎的なドローン操縦技術を習得します。

ドローンは本来、風の影響に対して操縦スティックで反作用の操作を行うことで機体を安定させます。ポジションモードが搭載されていることで、それを意識しないでも飛行できてしまいます。ひじょうに便利ですが、それが使えない時や使える時であってもドローンに対する風の影響を理解し、適切なスティック操作を身につけることがこの練習の目的です。

基礎的な動作

ポジショニングデバイスをオフにした上で、まずは離発着。そしてホバリング。屋外での練習の場合は無風状態よりも緩やかな風が吹いているほうが、より練習になります。ポジショニングデバイスがオフの時、ホバリングは一定の場所に留まりません。風の強さや方向によって操縦し続けないと、定点にとどまることができません。

最初は、①左右・前後の往復運動。ポイントはすべての動作を1回ずつきちんと止めることです。ポジションモードであれば、スティックを離すことで自動で止まりますが、オフの場合は、惰性の動きとは反作用のスティック操作を加えて止めてあげる必要があります。

次のステップが②スクエア運動。いずれの角も一回ずつキチンとドローンを止めます。まずはドローンの機首を自分が向いている方向と合わせて飛行。少し慣れてきたら、ドローンをそれぞれの角で進行方向に合わせて90度旋回して飛行。最後に自分とドローンが対面す←る方向で飛行するという風にだんだんと難易度を上げていきます。

慣れてきて、調子に乗ると、必ず操作方向がわからなくなってパニックになり、暴走(操縦者が適切でないスティック入力をし続けているだけですが)する瞬間があります。その場合も慌てずポジションモードのスイッチを入れて、スティックを中立にすると暴走が止まります。難易度を上げる前に、冷静にポジションモードに戻すという練習も事前にしておきましょう。

 

8の字旋回

ステップアップして③水平8の字旋回。前後でも左右でも、まずは自分が楽な方向で。最初はポジションモード、少し慣れたらポジションモードをオフで。無風の場合の操作は簡単です。前進の舵と、ラダー(旋回)を少し入れっぱなしにし、交差点でラダーを逆にするだけ(時には少しのエルロン[左右]舵も)。ポジションモードをオフにして、やや風がある場合は風を計算に入れた舵を風上側に増やします。

横風時は風上側に倒し、向かい風では強めに前進、追い風時は風に流されるように(風の強さによってはバックの舵を入れる)操縦します。無風でポジションモードを入れているのと同じように滑らかで美しい8の字をオフ時でも飛ばせるように練習しましょう。

ぐるぐるホバリング

単純ですが、非常に有効な練習方法です。ポジションモードオフで行います。ホバリング中に、ゆっくりのラダーを入れっぱなしにする。それだけです。ゆっくりの目安は30秒で360度回る程度です。

風吹いている時は、常に機体に風上方向の舵を入れ続ける必要があります。風の強さにもよりますが、目標は1m以内にホバリングをさせ続けます。ポイントはキツくても、ラダーを必ず動かし続けることです。この練習により、どんな方向、どんな位置に機体がいても、適切な舵を切れるようになります。

……と、ココまで書きましたが、本誌読者としてはドローンの「操縦」がうまくなりたいわけではなく、「空撮」がうまくなりたいのだと思います。「操縦」がうまいに越したことはありませんが、本来の目的は「空撮」です。「操縦」訓練はこの辺にして、来月は「空撮」の練習法についてお話したいと思います。