第14回 配信スタジオで保健所の 飲食店営業許可を取る!

写真・文◉川井拓也(ヒマナイヌ)

 

ライブ配信を通じて人と 人が出会う場所にしたい!

2018年12月に居抜きのイタリアンレストランだった路面店を取得し、ライブ配信スタジオとしての最適化を進めてきたヒマナイヌスタジオ高円寺店ですが、次に目指すのは保健所の飲食許可です。

理由は新宿にロフトプラスワンという有名なトークライブハウスがあり、そのライブ配信版を作りたいからです。アルコールを飲みながらバンドの演奏を楽しむのがライブハウスだとすればロフトプラスワンは飲食しながらトークを楽しむトークライブハウスなのです。

ライブ配信スタジオ×飲食店を融合

ヒマナイヌ高円寺店では、7月にライブ配信スタジオとあわせて飲食店営業を開始。

●配信中の様子

●飲食店の状態

 

ライブ配信スタジオと 飲食店営業両立の難しさ!

ところがライブ配信スタジオとしての機能をキープしながら飲食店としても機能するようにするためにはいくつかの課題があります。まず音の問題。トーク番組を配信するわけですから、スタジオとしては音が出るものは大敵です。

冷蔵庫は予期せぬタイミングでコンプレッサーが回り音がします。製氷機も不定期にガラガラと音がするので絶対に置きたくありません。カメラと被写体の間をお客さんが横切るのも禁物です。飲食店として考えれば厨房内のアクセスしやすいところに冷蔵庫が必要ですし、フロアはホール係が動くことになるし飲食物のオーダーでは会話も発生します。

 

厨房の設計と 保健所の飲食店営業許可を半月で進める!

飲食店として営業するには保健所の飲食店営業許可が必要になります。これは主に喫茶店などの軽飲食と飲食店営業の2つがあるのですが、お酒を出す場合は飲食店というカテゴリーになります。2槽シンクとは別に従業員の手洗い所が必要、給湯設備と冷蔵設備、食器などの収納設備、客席と厨房を分けるドアなどが必須の設備となります。こうした条件に適合するように厨房を設計していきます。

もともと飲食店として使っていた居抜き物件ということもあり、水道管や給湯設備なども数十万円の工事で改良できましたし、2層シンクやショーケース型冷蔵庫は中古で揃え、トータルでは50万円程度の追加投資に抑えられました。以前に取得していた食品衛生管理者の資格も使い、設計から半月で保健所の飲食店営業許可を取得できました。

 

ライブ配信スタジオから 飲食店営業への 業態チェンジは30分!

カウンターを挟んでの対談をメインとしてるので冷蔵庫はなるべく出演者の位置から遠ざけました。カメラは壁沿いや柱に装着し、お客さんがフロアを移動したりトイレに行ってもカメラにかぶらないように配置しました。カメラに写る部分は利用者の要望で自由に装飾を変えられるような自由さを担保しつつ、飲食店としての機能性を追求するのは小さな最適化を積み重ねるしかありません。

7月からはじめた飲食店営業も8月に入る頃には落ち着き、今ではライブ配信スタジオモードから飲食店営業へのチェンジは30分で行えるようになりました。

ライブ配信中はボトルビールや瓶コーラなどで来場者に素早く飲料を提供し、配信終了後には厨房内のカメラを撤収しフライドポテトや唐揚げを提供したり、ハイボール、カクテルなどアルコールメニ ューの幅も広げるようにしました。

メニューはスタジオらしく3画面あるモニターにサイネージ風に表示。Googleスライドのプレゼンテーションモードを使って、売り切れたものは即座に削除したり今日のオススメを臨機応変に追加できるようにしました。

設備やカメラ位置をシミュレーション

▲飲食店用の設備の配置図。

▲飲食しながらのライブ配信を想定したカメラポジション。

 

飲食メニュー

▲飲食メニューは、Googleスライドのプレゼン機能を使って、スタジオ内にある3つの画面にサイネージ風に映し出している。品切れになったメニューやライブ配信のホストも即座に表示できるようにしている。

ライブ配信スタジオと 飲食店は相性がいい!

飲食店というのはその物件の前を通る人や近隣に住んでいる人を常連さんにしていく必要がありますが、ライブ配信スタジオの場合は配信ホストが見学者を連れてきてくれるので集客が安定します。しかし、この特性を上手く使うことで営業しているものの、お客さんがいないという状態をゼロにすることができます。ヒマスタ型スタジオをこれから作ろうと考えている方は、ぜひ居抜きの飲食店物件をスタジオ化することも選択肢に入れてみてください。

次回は有料セミナーイベントと無料ライブ配信を両立させる情報格差のデザインについて解説していきます。

 

ビデオSALON2019年9月号より転載