第32回 Zoomウェビナーなどに対応するミッションコントロール

写真・文◉川井拓也(ヒマナイヌ)

 

 

持ち込みノートパソコンでウェビナー配信するためのスペースが必要だ!

新型コロナウィルスの変異株が猛威をふるい「まん防」なる新しい言葉がニュースを賑わせている2021年の春。「コロナが落ち着いたら」なんて定型文も現実味をもたなくなっている大阪抜きの聖火リレーがはじまった日本ですが、ウェビナーのニーズは高まるばかりです。

そもそもウェビナーはノートパソコン1台あれば誰でもできるわけでスタジオの出番はあまりないかな?と考えていたのですがこれが意外とあるんです。問い合わせも増えてきたのでワークフローを考えていくと、通常のYouTubeLiveやFaceBookLiveとは違うものになることがわかります。スタジオのミキサーやスイッチャーで作った最終映像を配信サーバーに送り込むrtmp配信と違いZoomなどを使ったウェビナーはテレビ会議の延長なので参加者と映像・音声含めてインタラクティブに会話したりアンケートをとったりチャットを拾ったり相手のマイクをミュートにしたりとホストの作業が重要になります。 

これはそのウェビナーを主宰する担当者がやるべき作業なのでお客さま持ち込みのノートパソコンにUSB-Aに変換した最終映像を渡すというワークフローにしました。そのために安定的にウェビナーホスト機が置けて最終音声をモニターするスペースが必要になりスタジオ内に「ミッションコントロール」というスペースを作ることにしたのです。

 

「ミッションコントロール」とはどんなスペースか?

NASAは宇宙探査ミッションを実行するときに「ミッションコントロール」から司令を出します。「ライトスタッフ」「アポロ13」「コンタクト」などの映画でもお馴染みの場所です。ウェビナーではホストが映像・音声・出演者の切替などすべてをつかさどるのでその作業をするスペースの名前を「ミッションコントロール」にしました。

具体的にはスタジオ全体を見渡せて司会者とアイコンタクトがとれる場所にテーブルを置きます。2名分の座席がありDJブースのようにノートパソコンを冷却できる台や有線LANのハブ、電源タップ、モニターヘッドフォンの分配器などウェビナーというミッションを確実に実行するための環境を配置します。会議室にあるようなただの長机でもいいのですがウェビナー専用の席としてデザインすることで利用者の緊張感をいい意味で高められたらと考えました。


▲2名分の座席がありDJブースのようにノートパソコンを冷却できる台や有線LANのハブ、電源タップ、モニターヘッドフォンの分配器などを配置 。

 

 

ウェビナー準備に必要な手順を実行しやすいレイアウトにする!

すべてのカメラ・マイク・照明が常設であるヒマスタでは30分ずつの準備と撤収時間があれば1時間のウェビナーが配信できます。この30分でウェビナー準備をするために手順を組んでいきます。

ウェビナー配信のホストパソコンを持ち込み、電源を入れ、WiFiを切り、有線LAN経由でネットワークに接続、USBで映像と音声を入力しシステムのコントロールパネルで入出力を変えてからZoomの詳細を設定します。テーブルの奥には空中に浮いているノートパソコンスタンドを設置。ここをウェビナーホスト機の定位置とします。CPUパワーを使うのでノートパソコンの底面を浮かせて空冷効果を高めています。ここにスタジオのシステムからのPGMをUSB-Aに変換したケーブルを設置。

▲テーブルの奥には空中に浮いているノートパソコンスタンドを設置。

 

さらにプラス2台のノートパソコンスタンドを設置してあります。これはパワーポイントやキーノート、タイトルなどを表示するための持ち込みパソコンを置く場所です。必要となる電源はどんな形状の電源アダプターでも互いに干渉しない六角形のタップから給電します。中央にはUSB充電ポートもついているのでスマホやタブレットなどにも給電可能です。貸し出し用のケーブルはLightningとUSB-Cの2タイプを用意します。有線LANの4ポートハブもテーブル下に設置し2mの有線LANケーブルを色違いで4本用意しました。最終音声をモニターするためのヘッドフォン分配器は空中に浮いており持ち込んだヘッドフォンを挿して聞くことが出来ます。ヘッドフォンをもっていない場合は消毒済みの片耳イヤホンを貸し出します。このヘッドフォン分配器は4つの端子別々にボリュームコントロールができるので好きな音量でモニターすることができて便利です。

この「ミッションコントロール」はお客さまの要望をスタジオで聞きながら最適化を繰り返し今のカタチになりました。これからも日々進化していく予定です。

次回はちょっとした動画のポン出しに便利な「メディアプレーヤー」をご紹介します。

 

▲有線LANの4ポートハブもテーブル下に設置。

▲ヘッドフォン分配器は4つの端子別々にボリュームコントロールができる。

▲ノートパソコンを冷却できる台。

▲どんな形状の電源アダプターでも互いに干渉しない六角形のタップから給電。

 

 

VIDEO SALON2021年5月号より転載