文・作例 ナカドウガ
TV番組のオンラインエディターを経て、日本で唯一のテロップ漫談家を自称しながら、テロップについてのノウハウを発信している。
色は、テロップにとって重要な要素です。テロップは様々な色のかたまりなので、配色ルールを知ることで見やすさは大きく変わります。色をどう扱うかはテロップ作りの基本中の基本。まずは配色の知識を習得しましょう。
下の画像は、良くない例(失敗例)と良い例(改善例)を並べています。テロップの配色は、背景に合わせて決めることもよくあります。テレビ番組の編集の現場では、ディレクターから「テロップが分かりづらい」と指摘されることも多く、臨機応変に対応しなければなりません。
そのときに、配色の引き出しを持っていないとパニックになることも。スピード感をもって改善案を提案するために、まずは最適な配色ルールについて知っておくことが必要です。さっそく、配色の考え方を学んでいきましょう。
失敗例がイマイチな理由
① 背景と似たような色になっている
② 文字と縁取りの色も似てしまっている
③ 背景の雰囲気に合っていない濃い緑
④ 主張しすぎなドロップシャドウ
こうやって改善
① 緑色が多い背景と相性の良い「ピンク」に変更
②&③ 文字の「塗り」を白にして、色数を抑える
④ドロップシャドウの色を縁取りの色と統一し半透明にする
差をつけるルール
文字と隣接する色には 『似た色を使わない』
【原色と原色】
存在感は充分ですが、ひとくせある「赤」・「青」・「緑」などの原色。強力なインパクトのせいで、色と色がケンカをしてしまいます。一目で分かるとおり、文字としては認識しにくいはず。目がチカチカしてしまう場合は白と組み合わせてみましょう。
【明るいと明るい】
使い勝手の良い明るい色。現実でも明るすぎると、まぶしさを感じますがそれはテロップでも同じです。少し気が抜けたような印象になることが多く、背景が雑多な映像にはどうしても負けてしまいます。そんな時は、同系色で濃い色に変えることで、テロップの印象を大きく変えずに見やすくさせることができます。
【暗いと暗い】
怖いや不気味などを表現するときに暗い色を使うことになりますが、ここで気をつけたいのが、差をつけるつもりで明るい色を使ってしまう場合。怖い雰囲気を出したいときに明るい色を合わせてしまうと雰囲気が台無しです。そんな時は、このように明るくなりすぎない程度に同系色の薄い色を加えてみましょう。
【濃いと濃い】
初心者がやりがちな失敗として、はっきりした色同士を組み合わせてしまうケースがあります。気持ちは分かりますが、うまく行かないことの方が多いです。よくばってたくさんの色を使わずに、濃淡をつけることを意識しましょう。作例では色味を抑え、淡い黄色と組み合わせることで見やすくさせています。
【薄いと薄い】
存在感がないテロップはあまり喜ばれません。やはり何事にもメリハリが必要です。せっかく表示しても誰にも気付かれないという事態を防ぐには、色味を濃くしてみましょう。目立ちすぎは禁物ですが、濃い色味があることでアクセントにもなります。こうして存在感の薄さを消すことができるでしょう。
さらに踏み込んで考えてみましょう
テロップの配色は、見やすくさせるだけでなく、もうひとつの側面があります。映像全体のビジュアルの方向性を決める役割も持っています。ここからは「ポップなデザイン」というテーマで、6つの作例を紹介します。もちろんこれまでに解説した「似た色を使わない」というルールは徹底。デザインのバリエーションにも注目して、「色に差をつける」ということが、どう取り入れられているかも確認してください。
相性のいい色▶︎ 明るさに差をつける
濃い紫がメインのこのテロップに相性のよい黄色を使っています。いわゆる「補色」と言いますが、単にそのまま使うのではなく、薄い黄色を使いました。さらにデザインにアクセントをつける目的でふち取りに工夫しています。
使用したカラーパレット
使用したフォント
FOT-筑紫A丸ゴシック Std
2色でまとめる▶︎ 色味に差をつける
2色使いをする時は、色味に差をつけましょう。ただし明るさはある程度合わせておいたほうがまとまりが出てきます。楽しい雰囲気を出すことができますが、やや幼稚になってしまうのを抑えるために、黒いふちどりで文字全体をくっきりと締めると効果的です。
使用したカラーパレット
使用したフォント
FOT-筑紫A丸ゴシック Std
3色でカラフルに▶︎ 色味に差をつける
3色でさらに元気でにぎやかな印象を出したい場合は、同系色の中に、ひとつだけ違う色味を足してみると良いアクセントになります。作例ではピンクや黄色の温かい色に、すっきりとした青をプラスして、全体のバランスをとっています。
使用したカラーパレット
使用したフォント
Zen Maru Gothic
白と黒▶︎ 似た色の間に挟み差をつける
テロップでは差をつけるのがベターですが、色と明るさを合わせて統一感を出したい場合もあります。そんな時は白や黒を配色の屋台骨として使いましょう。しっかりとコントラストが立って、見栄えのあるテロップになります。
使用したカラーパレット
使用したフォント
AB-anzu_R
グラデーション▶︎ 明るさに差をつける
グラデーションを使う時は、必然的に色数が増え、さらに別の色を追加したくなりますが、色が増えすぎるのも考えものです。作例では黒を使ってまとめてみました。背景のベースが濃いグラデーションだったら、白を使うと同じように効果的です。
使用したカラーパレット
使用したフォント
AB-tori_a
アクセントの色▶︎ 色味に差をつける
ひとつのテロップの中で、色を変えてアクセントをつけたいというケースは多いです。基本の色に対してどんな色にすればメリハリがでるか考えましょう。この場合は強調色であり、青色の補色にも近い黄色を使って差をつけることに成功しています。
使用したカラーパレット
使用したフォント
TBUD丸ゴシック Std
今回のまとめ
テロップでは似た色同士を組み合わせると、お互いの悪いところばかりが強調されてしまいます。そしてテロップは単体では機能せず、背景との兼ね合いで常に見やすさは変わってくるもの。背景の映像を意識しつつ、なるべく背景と差をつける配色を心がけましょう。作業に熱が入るとついつい忘れがちですけどね。
CHECK!!
今回の作例は、本誌掲載のURLからダウンロードして構造をチェックしよう!
●VIDEO SALON 2022年5月号より転載