文・作例 ナカドウガ
TV番組のオンラインエディターを経て、日本で唯一のテロップ漫談家を自称しながら、テロップについてのノウハウを発信している。
テロップで効率的に情報を伝えるためには、文字数を減らすことが重要です。情報を凝縮すれば、見た瞬間に意味が伝わりますし、画面内もスッキリと見せることができます。しかしただ減らすだけではいけません。ルールを守って文字数を減らしましょう。今回はそのコツを学んでいきます。
Aの画像は人物が話している内容をテロップに起こしています。視聴者はどういう印象を受けるでしょうか。視聴中は音声を聞きながら文字を目で追いかけるので、必然的に前のめりになり、リアルタイム、臨場感ある印象を受けるでしょう。
一方、Bの画像は文字数を減らして説明テロップにしたもの。こちらはより簡潔に情報を捉えることができ、客観的な視点で視聴することができます文字数を減らすということは、同時に見る人の視聴態度をコントロールすることができるのです。
文字数を減らしていく流れを紹介
コメントテロップを作例として、文字数を減らしてよりコンパクトになっていく流れをシミュレートしてみます。もちろんこの流れを絶対に踏襲する必要はなく、印象はどう変わっていくのかを体感してみましょう。テロップの形式そのものが変わっていく中で、見た目の変化にも注目してみてください。
ニュアンスをダイレクトに伝えることができるので、臨場感を出すことに向いている。ただし言葉をそのまま起こすと文章として成立しないケースもあり、違和感になる。自動文字起こしの場合は注意が必要。
客観的に情報を伝えたい時に使用される。内容を咀嚼し、まとめる文章力が試される。デザイン要素を加えて、画面を彩る効果も。
説明よりインパクトを持って表現できる。しかし内容のどこを切り取るかという、表現力やセンスが必要になる。またデザインの工夫もしやすくなるメリットも。
SNSなどで見慣れている分、より手軽さ・気楽さを演出できる。ただし、受け手の解釈の仕方によって、意図しない伝わり方になってしまう危険性もある。
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文字数を減らすということは、スッキリ見せるというだけではありません。客観的な情報として伝えたり、切り取って強調するなど、視聴者への伝え方をコントロールできるのです。その分、意図しない伝わり方にならないように、表現力を鍛えることが大切です。生の言葉や出来事のリアルな雰囲気を損なわないようにうまく編集しましょう。またデザインやテロップの形式にも変化を出すことで、メリハリのある演出をすることにもつながっているのです。
文字数を減らすメリットとデメリット
文字数を減らすと具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。大きくは『視聴者のストレスを軽減する』ことにつながります。さらに画面内がすっきりして映像をおしゃれに見せる効果もあるでしょう。もちろん良いことばかりではありません。文字数を減らすことで失われてしまうものについても知っておきましょう。
①短い時間で伝わるようになる
映像には時間軸があるので、ひとつの文章をじっくり読むことには向きません。どちらかというと瞬発力が必要なメディアです。その時に必要なのが短く端的に伝わるテロップ。文字数を減らすことで、瞬間的に伝えることができます。
②画面が整う
長すぎるテロップは時に、映像の邪魔になってしまうもの。映像にとってテロップは、本来無駄なぜい肉とも言えるのです。文章を短くすることは映像の魅力を増やし、整った印象を与えることができます。必要のない文字は減らして、美しい見た目を保てるように工夫しましょう。
①ニュアンスが伝わりにくくなる
短い時間で伝わるようになる反面、本来の意図が伝わらなくなる可能性も頭に入れておきましょう。要約しすぎるとわざとらしさが増し、せっかくの感動が薄れてしまう場合があります。作り物感を感じてしまう場合は、そのテロップの存在意義をもう一度確かめてみましょう。冷静に考えると必要のない場合が多いです。
②文章力が必要になる
ニュアンスを損なわずにテロップをまとめるには、それなりの文章構成力が必要です。文字数を減らすことに注意しすぎるあまり、主語がなくなって意味不明になったり、いつのまにか全く逆の意味合いになってしまったり、トラブルの原因にもなります。まずは文章力を鍛えましょう。
文字数を減らすために気を付けたいルール
前述のとおりテロップには一度に表示できる量や尺に制限があり、長い文章は基本的にご法度。特にショート動画のようにサクサク見られる形式が求められていることからも分かるように、長い文章そのものが受け入れられにくい傾向があります。僕自身もショート動画を見ていると、読みきれないテロップに違和感を感じることも多く、よりシンプルにまとめることを考えなくてはいけません。ここでは文字数を減らすためのルールをご紹介します。
ルール① 句読点は付けない
テロップでは通常の文章ドキュメントのような「句読点」は付けません。明確な理由は不明ですが、そもそも長文を必要としないことから、省略されるようになったのでしょう。結果的に画面の節約にもつながるなど、句読点を付けないメリットの方が大きいのです。
ルール② 語尾を整える
「お願いしたいと思っております」のような話言葉をそのままテロップに起こしてしまうと、無駄にスペースをとってしまいますし、視聴者が内容をくみ取るという余計な時間がかかります。この場合は「お願いします」など語尾を整えましょう。
ルール③ 見出し+2行まで
このような説明テロップの場合には、文章量の限界をあらかじめ決めておくべきです。目安は見出しを1行、それに最大2行までの本文を加えた形式が一般的です。なるべく一気読みをさせるような文章にせず、端的に表現できるようにしておくと良いでしょう。また、最低でも7〜8秒程度は表示できるように時間を確保しておきましょう。
ルール④ 誰目線かを決める
映像作品にはいろいろな視点が出てきます。登場人物の視点はもちろんのこと、制作者の目線であったり、ナレーションを読む人の「つっこみ」とも言えるような視点。時には神の視点から、という場合もあります。テロップを要約する場合にもこの視点は必要不可欠で、これが抜けていると、よそよそしかったり、笑いどころが伝わらなかったりなど意図しない結果になってしまいます。そのテロップが誰目線で発信されているかを明確にしておく必要があります。
ルール⑤ 話し言葉をそのまま使わない
ルール⑥ アイコンは誤解の恐れがある
最近ではアイコンやスタンプでの表現がテロップにも応用されます。この手法は便利で親しみやすい反面、世代や状況・アイコンのデザインによって伝わり方にバラつきがあります。文字ではなく意匠という究極の形で非常にコンパクトに表現できる反面、しっかり伝わる度合も損なわれてしまいます。これは文字数を減らす取り組みのすべてに言えることですので、デメリットを理解したうえで文字数を減らしていきましょう。
今回のまとめ
最近どんどん睡眠時間が減ってきています。加えて集中できる時間も減ってきています。文字数を減らすのはやぶさかではありませんが、人生において減らしたくないものばかりが減っている現状です。さようなら。