文・作例 ナカドウガ
TV番組のオンラインエディターを経て、日本で唯一のテロップ漫談家を自称しながら、テロップについてのノウハウを発信している。

テロップを作る時に困るのが、デザインをどうするかということ。それには何かしらのアイデアが必要ですが、自分の発想ひとつだけではゴールに辿り着くのは難しい。アイデアを自分なりのデザインに昇華する工夫が求められます。今回はアイデアの見つけ方と落とし込む方法を紹介します。

 

全体の流れ(プロセス)

プロセス①『映像の内容や企画から連想する』

連想の元となるものは、映像作品の企画や訴求内容から探していくことになります。どんな映像にも制作者のこだわりだったり、伝えたいテーマがあるはずです。それらを目に見える形に置き換えるところからテロップ作りはスタートします。

とにもかくにも、「何を」「誰に」「どんな紹介」をするかで、テロップのデザインも変わってくるということ。まずは出発点をちゃんと見定めないといけません。しかしながら「こだわりやテーマ」といったキーワードだけでは、ばく然としすぎていてイメージしにくいのも事実。せめてもっと具体的なキーワードがほしいところです。そこで以下のような項目に目を向けてみましょう。

具体的なキーワード

たとえば「出演者」というキーワードであれば、キャラクター性に紐づいたテイストがイメージできますし、特徴的な「小道具」があれば、それをデフォルメしたアイコンを描くなどの、アイデアを思いつくことができます。

 

プロセス『キーワードから要素を分解する』

連想の元となるキーワードは映像の企画内容からたくさん見つけることができました。しかしまだ目に見えるものにはなっていません。次の一手としたいのはテロップを形づくる「デザインパーツ」を集めることです。

デザインパーツとは

コンセプトカラー・ フォント・ テイストイメージ・アイコン・イラスト・テクスチャーなど、テロップを組み立てる時に使う要素のこと。

『特に重要なデザインパーツ』

コンセプトカラー

特に重要になってくるのが「コンセプトカラー」。その映像でメインとして使っていきたい色です。たとえばシャンプーを紹介するCMのテロップをイメージしてみましょう。高級感あるパッケージのカラーリングから、同じトーン・同じ色味を連想して、テロップにアレンジするというアイデアが思いつきます。この考え方の良いところは、紹介する商品との統一感が生まれること。最初のとっかかりを見つけやすいデザインパーツですので、まず色味を決めるところから始めてみましょう。

フォント

そして映像の雰囲気にあったフォントを選ぶことも大切です。フォントについてはテーマやターゲットから連想してみましょう。日本酒ネタをあつかう動画であれば、明朝体のような和風なフォントがしっくりくると思いますし、逆に幼児向け英語教室であれば、堅苦しい明朝体ではイメージに合わないこともあるでしょう。この場合はもっとポップなフォントのほうが伝えたい雰囲気をより表現しやすくなります。選ぶフォント次第で映像の雰囲気は大きく変わってくるので、よく吟味したいところです。

 

CHECK!! 必要な要素を分解することが何より大切なプロセス!

デザインパーツにまで分解することができれば、デザインのとっかかりはとりあえず見つかったことになります。ですがこれだけではまだ物足りません。続いては、別の視点からテロップのクオリティを上げる方法についてみていきましょう。

 

プロセス③『具体的な参考アイデアを探す』

注意したいのは、アイデアは自分の頭だけで考えてはいけないということ。プロセス①で連想したアイデアに、外部からのインプットも合わせることで、さらなるアイデアが思いつくようになります。

デザインのクオリティをもっと上げたい場合は、積極的に参考画像を集めましょう。参考にすべきものは映像だけに限りません。広告ポスター・WEBサイト・本・アート・流行っているものなど、身の回りにある全てのものが参考になります。ナカドウガの場合はCMやゲームからヒントを得ることが多いです。

 

アイデアの参照元

アイデアを集める時の視点として大切にしたいのが、参考画像を見て「なんとなく良さそう」と漠然と感じ取るのではなく、細かいディテールに目を向けることです。

 

CHECK!! 制作時の視点をより深め、細かいところにまで目を向けよう!

▶ 広告ポスターで使われている背景の模様はどんな色でどんな形?
▶ 雑誌の見出しのフォントに、ダメージ加工をしているぞ!
▶ この色の組み合わせ最近良く見るな。マネしてみよう。

 

プロセス④『オリジナルのデザインに再構築する』

ここまでで集めたアイデアは、まだ目に見えるものになっていないか、他の人が作ったデザインを参考画像として集めただけ。言ってみれば料理のレシピだけが揃っているような状態です。アイデアを自分なりの表現とするには、材料を集める必要があります。おすすめしたいのが「素材自体を自分で作る」というもの。

CHECK!! テロップ作りそのものを楽しむことができる!

Photoshop・Illustrator・Blenderなど、好きなツール・得意分野を駆使すれば作る楽しみも味わえることでしょう。欠点は時間と手間が倍増するということ。あなたのこだわりと制作時間がゆるす限り、試してみてはいかがでしょうか。

 

アイデアの源にすべきWEBサイト

ナカドウガよく使うサイトを紹介します。こうしたサイトを最大限に活用してヒントを得ることは実はさほど難しくありません。むしろ肝心な時にこういったサイトの存在や収集したアイデアを思い出せることが大事です。普段からアンテナを張っておき、アイデアの源にすべく積極的に活用していきましょう。

Pinterest

もはやおなじみとも言えるアイデア収集ツールです。WEB上にある画像や動画を一覧で表示してくれ、無限にスクロールしながら、気になるものをどんどんブックマークしていく。案件やジャンルごとにページを作りアイデアをため込んで整理していくイメージ。他人と共有もできるので、制作チーム内での意思疎通にも最適。

https://www.pinterest.jp/

 

SANKOU!

WEBサイトを集めたギャラリーサイト。個人的にWEBデザインは流行を素早く捉えていると感じるので、新しい表現を模索する場合に有効です。掲載されているサイトは多岐に渡るジャンル分けがされており、ヒントになるものを見つけやすい。

https://sankoudesign.com/

 

SAMUNE

膨大な動画があるYouTubeの中から、いい感じのサムネイルを厳選したギャラリーサイト。サムネイルのアイデアをテロップに転用するようにアイデアの源にできます。もちろんその逆も然り。主にトンマナのモチーフにしやすいと感じます。副次的におもしろそうなチャンネルが見つかることも。

https://thumbnail-gallery.net/

 

今回のひとこと

それでもアイデアが思いつかない場合もあります。むしろアイデアなんて実はどこにもないのかもしれません。そんな時は眠るか、お酒を飲むかしましょう。睡眠・酩酊中に妖精が代わりに考えてくれます。きっとそうですよね。

 

 

VIDEO SALON 2023年8月号より転載