文・作例 ナカドウガ
TV番組のオンラインエディターを経て、日本で唯一のテロップ漫談家を自称しながら、テロップについてのノウハウを発信している。

「大きいことはいいことだ」と、古いCMが言ってました。テロップにもそれは当てはまりますが、全部が全部大きくすればいいというわけではありません。ということで今回はテロップの大きさ問題について。

大切なのは大きさに『差をつける』ことです。テロップで何かを伝えたい時には、大きさをコントロールするのがダイレクトで1番確実ですので、しっかり学びましょう。

失敗例がイマイチな理由
① すべてがほぼ同じ大きさになっており、変化に気づきにくくなっている。これではあまり意味がない。
② 文字を無理やり押し込めているので、極端な長体になっている。やってしまいがちですが、なるべく避けたいところ。

こうやって改善
① この情報の中で何が重要なのかを考えて、しっかりと大きさに差を感じ
られるようにした。
②3行目の無理やりな長体を改善し、すっきりと収めることができた。

 

目立たせたいものに優先順位をつけて、思っている3倍くらい大きくする

大きい円は小さい円よりも目に付きやすい。人間の視界の中で広い面積を占めることになるので、大きい円はその分注意を引くことができる。

大きい円は小さい円よりも目に付きやすい。人間の視界の中で広い面積を占めることになるので、大きい円はその分注意を引くことができる。

このふたつをみると、どうやら『大きさにはっきりとした差』があることで視点を誘導できたり、なにか意味があるんじゃないか? という意識が働いたりするようです。大きさに差をつくるだけで人の注目度合をコントロールできるのっておもしろいですよね。せっかくなのでテロップを作るときにもこの法則をどんどん利用しましょう。ただし! こういった言い方をしてしまうと、ある問題も起こってしまいます。「この中に収めないといけない!」という思い込みや、極端すぎることを嫌がってしまうあまり、せっかくのデザインがちゃんと機能しないことも。

 

 

どれくらいの差があれば効果が見えてくるのかを実験する

大きさに差をつけるにしても、しっかりとしたメリハリが必要ですし、逆にやりすぎも考えものです。どのくらいの差があれば、効果が見えてくるのか実験してみましょう。

①中途半端な差は意味がない

中途半端に差をつけても目立たないばかりか、全体のレイアウトが破綻する原因につながります。パッと見で差が感じられる大きさとして、1.5倍くらいを目指してはどうでしょう。もちろん逆にやりすぎるのも禁物。

 



 

②あれもこれも強調したいは叶わない

基本的に情報は全部伝わってほしいものですが、すべてを伝えるにはスペースも時間もたりません。差があってはじめて強調させることができるので、強調したいものをどれかひとつに絞る必要があります。



 

③極端な長体・平体は害悪になる

なんとかスペースに収めることを意識するあまりやってしまう長体や平体。読みにくくなってしまうほか、過剰な変形は書体にも失礼な気がしてきます。無理やり押し込むのではなく、改行をするなどレイアウトを工夫して収めましょう。



 

 

大きさに差をつけて感情を表現する

大きさに差をつける効果は、なにも見やすくなる・目立たせるだけではありません。感情を演出することもできるのです。ビックリしたら大きい声が出ますし、逆に不安だと小声になりますよね。テロップもそれと同じです。

悲しいとき

今にも消え入るように小さくしてみました。物悲し気な表情とあいまって、クスっと笑ってしまうのは僕だけでしょうか?

 

怒っているとき

画面全体を覆うように思い切りよく大きくしました。お昼寝を邪魔された大男の怒りが、手に取るように伝わります。

手軽にアクセントをつけることができるこの方法。【テロップで遊ぶ】という意識を養う大事な考え方です。

 

 

大きさに差をつけて遊ぶ 『4つのアイデア』

①最初の1文字だけ大きくする

『大きくする』をデザインとして活用しました。アクセントにもなるほか、目線誘導としての効果もあり、使い勝手のよい方法。

 

②文字ごとに差をつけてランダム感を出す

使用しているフォントのデザインをさらに強調させるように、大きさをバラバラにしてみました。さらには角度もランダムに変化させると、よりラフさ・ダメージ感を強調できます。

 

③助詞だけを小さくする

単調すぎる文章はそれだけで、見る人の負担になってしまいます。強調したい部分はしっかり強調しつつ、助詞だけを小さくしてみましょう。ひと手間かかりますが、メリハリが出て、見やすいテロップになります。

 

④目一杯大きくして文字の中に文字を入れる

文字をひとつの入れ物と考えるなど、発想を転換してみましょう。文字の中にふりがなを入れることで、テロップ自体に強烈なインパクトが生まれます。ただし、やりすぎると混乱をまねくので、ここぞ! という短い文章の時に取り入れてみましょう。

 

 

今回のまとめ

ただでさえ情報量の多い映像では、たとえテロップを全部読まなくても『何となく伝わる』ようにしなければなりません。そのための工夫として大きさに差をつけること。いちばん伝えたい文字を、ほかよりもちょっと大きくするだけで、手軽に効果が出るのでどんどん活用してほしい手法です。

単調を避ける、サクッと目につく、印象に残す、一瞬で意味を悟らす、など大きさをコントロールしてしっかり伝わるテロップを目指しましょう 。「大きいことはいいことだ」、昔の人は本当に核心をついたことを言いますね。

 

 

VIDEO SALON2022年7月号より転載