文・作例 ナカドウガ
TV番組のオンラインエディターを経て、日本で唯一のテロップ漫談家を自称しながら、テロップについてのノウハウを発信している。
テロップは、定番を押さえれば安定感のあるテロップが作れます。ただそれだと窮屈に感じるのも事実。今回は様式美とも言える基本をしっかり抑えつつ、制約を飛び越えるレイアウトを模索してみましょう。さあ! 守破離! 守破離!
×失敗例がイマイチな理由
①は人物の頭に被ってしまい、違和感がある。
②は料理する手元に被っていて見たいものが見えない。
③は画面端にまでテロップが伸びていて圧迫感があるほか、視聴媒体によっては、文字が見切れる可能性がある。
○こうやって改善
①を小さくし、左側に移動することで被りを回避。
②を改行し、手元の被りを最小限に留めた。
③をキチンと規定のセーフティーラインに収めた。
映像の邪魔をしない基本のレイアウトを学ぶ
人物や商品などの被写体は、必然的に構図のメインとして捉えられるので、テロップが被写体に被らないようにレイアウトするのが基本です。その為、画面の下位置や四隅が積極的にテロップ用のスペースとして使われます。
では、下の画像を例に解説していきます。左上にあるサイドテロップは通常の日本語テキストと同じように、左から右に向かう目線の流れを踏襲しているので自然と目に入ってきます。テレビの長い歴史の中ですっかり見慣れたレイアウトですので、誰もが違和感を感じなくなっているのも大事なポイント。心地よく映像を見るための定番のレイアウトとして完成されていると言えます。
では下記、左の画像のように中央にテロップを配置することは絶対にダメなのでしょうか? 実はそんなことはありません。右の画像のように、風景や引きの画など、視聴者の気持ちとしても一歩引いて見られるシーンでは成立するのではないでしょうか。この場合はテロップも含めて完成された映像として認識するのでそれほど違和感はありません。視聴者が注目したいと思っているものを、テロップで隠してしまった時にはNGとなりえます。
ここで、テロップがどれくらい被写体にかかると違和感が出るのか検証してみます。下記の3パターンを見比べてみましょう。こうして比べると『頭にかかる』程度であればほとんど違和感はありません。見せたいものに1mmでもかかってはいけないのではなく、あくまでも映像とテロップのバランスを取った上でレイアウトすることが大切です。
なにかとルールが多くて息が詰まりますね。ここからは制約がある中でも活きてくる豊かなレイアウトを考えていきます。とは言ったものの、レイアウトのバリエーションはすでに出尽くしたのが正直な感想です。そこでポスターやWEBデザインなどの映像以外からアイデアを引用させてもらい、テロップにも使えるようにチューニングしました。
1 縦にする
縦にするだけで読み味にメリハリが出てきます。日本的な雰囲気にもぴったり。ただし画面を占有しがちなので、大きさには注意しましょう。
2 斜めにする
荒々しい映像には、テロップ全体を斜めにレイアウトしてみましょう。迫力やスピード感をより強調できます。
3 改行する
横に長すぎる文章は目線移動が多く、読みにくさが目立ちます。そんな時は改行することで、コンパクトに読みやすくさせることができます。
4 縦と横の共存
あえて違和感を感じさせる文字組でインパクトを。古めかしい書体を使うことで、さらにそれらしい雰囲気を作ることができます。
5 正方形にする
正方形に収めると、重厚感や情緒感を演出できます。行間にラインなどを入れて、可読性を向上させる工夫も忘れずに。
6 円形にする
円の中にテロップを収めると、軽やかな雰囲気を出すことができます。テロップの大きさにもメリハリを付けて楽しい雰囲気を目指しましょう。
7 枠に入れて1文字ずつ間隔をあける
使い勝手がよく個人的にも多用する手法で、インパクトがあるので場面転換にも使えます。正方形だけでなく、円や角丸にするのも効果的。
8 上下に割り振る
画面を広く使うことで、テロップの存在感を高めることができます。ただし、テロップのスタイルにはある程度の共通点を持たさないと、雑多な印象になってしまいますのでご注意を。
9 放射状にする
もはや飛び道具。長文のテロップには不向きですが、インパクトを最優先にしたい時には試してみたいレイアウトです。
10 あえてはみ出す
後述するルールをあえて破っている例。勢いや力強さを表現するために、時にはルールを無視できる強さを持ちましょう。
テロップを画面ギリギリまで置くと落ち着かない
レイアウトを考える時に忘れてはいけないことは『目には見えない、はみ出てはいけない線』を意識すること。テロップをレイアウトすることに夢中になっていると、いつの間にかセーフティの外に出てしまうこともあるかもしれません。セーフティの線をはみ出してしまうと、再生しているメディアや端末によっては、テロップの一部分が見切れてしまうなど、思わぬ不具合が出てきます。
さらには画面の端いっぱいまでテロップをレイアウトしてしまうと、非常に収まりが悪く感じてしまいます。画面サイズの95%ほどに収めておくと、見栄えも良くなるでしょう。
今回のまとめ
絶対に外せないのは、注目したいのものをテロップで隠してしまうこと。この1点についてはどんなことがあっても許容できません。そのルールだけは守りながら新しいレイアウトを考えていきましょう。今回はポスターやWEBサイトをヒントにしました。テロップの参考になるものは映像ばかりではありません。身の回りの様々なものにアンテナを張りましょう。
CHECK!!
今回の作例は、本誌掲載のURLからダウンロードして構造をチェックしよう!
●VIDEO SALON 2022年8月号より転載