文・作例 ナカドウガ
TV番組のオンラインエディターを経て、日本で唯一のテロップ漫談家を自称しながら、テロップについてのノウハウを発信している。

文字の下に敷くことで視認性のアップを狙うベースですが、その役割はテロップを見やすくするだけではありません。テロップのデザイン性を高めるという利点もあるのです。ややこしい理屈は抜きにして、かっこいい・カワイイ・おしゃれと思えるようなデザインを目指しましょう。

 

ビフォアフとして取り上げるのは、デザイン性のあるベースと、とりあえず敷いただけのベースです。クオリティの差は見たままの通り。デザインをちょっと頑張るだけで、テロップの存在意義も出てきますし、デザインへのやりがいを感じられるのもベースの良いところ。つい試してみたくなる、様々なアイデアを用意しました。さっそく見ていきましょう。

 

ブラシツールでストリートアートなベース

『Adobe公式ブラシ』で差をつける

使用したカラーパレット

参照したデザイン

ステンシル・グランジ

使用したツール

Photoshop

Adobeが配布しているブラシを使ったアイデア。マウスを使ってざっくりと線を引いただけですが、充分に手描きを感じさせることができます。ブラシの太さを変えるなど、バリエーション豊かに描くのがコツです。

 

ちぎった段ボールでラフなベース

『実物』で差をつける

使用したカラーパレット

参照したデザイン

パンク

使用したツール

スキャナー・Photoshop

段ボールを引き裂いて、そのままスキャンしてしまいましょう。いかに切り口を乱雑にちぎるかがポイント。この他に、紙や布を使っても良いでしょうし、アスファルトの写真を撮るなどの方法もあるでしょう。

 

文字をはみ出す・閉じ込めるベース

『手間をかけず』に差をつける

使用したカラーパレット

参照したデザイン

ノイズ・フラットデザイン

使用したツール

Photoshop

上記のような無駄な手間をかけずとも、文字の一部を欠けさせる、あるいは、はみ出させることでラフなイメージを作り出すことができます。この場合はフォントや配色にもこだわりましょう。

 

サイバーでデジタルなベース

『効果』で差をつける

使用したカラーパレット

参照したデザイン

サイバーパンク・色収差

使用したツール

Illustrator・After Effects

このような手法では、光らせたり、ぼかしたりするなどのエフェクトを追加することで説得力がでてきます。また光を点滅させるなどの単純なアニメーションをつけると、よりリッチな見た目になります。

 

Blenderで作る立体的なベース

『3DCG』で差をつける

使用したカラーパレット

参照したデザイン

コースティック表現・2Dと3Dの複合

使用したツール

Photoshop

ベースには立体的な要素と自然な光の表現を取り入れて、説得力のあるデザインにしています。文字の打ち換えをカンタンにできるように、ツールを使い分けているのもポイント。

 

抽象的なグラデーションベース

『流行りのスタイル』で差をつける

使用したカラーパレット

参照したデザイン

アブストラクト・ホログラフ

使用したツール

Illustrator

最近よく見かける特徴的なグラデーションはテロップにも取り入れることができます。単純なグラデーションよりも、歪ませたり複数を組み合わせるなどの工夫が必要です。また独自の色を選ばずに、色見本やプリセットからアレンジするほうが失敗がありません。

 

奥行き感のあるベース

『ドロップシャドウ』で差をつける

使用したカラーパレット

参照したデザイン

切り絵・空間遠近法

使用したツール

Illustrator

テロップではおなじみの手法ですが、ここではベースとテロップを交互に配置し、おたがいのドロップシャドウの影響を受けることで立体感を演出しています。また配色も奥に行くほど淡い色をつかう空間遠近法を使うとより一層キレイになります。

 

動くベース

『After Effects』で差をつける

使用したカラーパレット

参照したデザイン

メンフィススタイル・ジオメトリー

使用したツール

After Effects

テロップに複雑な動きをつけることは、もはや珍しくありません。出現のアニメーションは激しく、その後はゆっくりと動くようにして、テロップの視認性を損なうことのないように配慮することが大事です(サンプル動画:https://bit.ly/m_base)。

 

昔懐かしいドットベース

『なつかしさ』で差をつける

使用したカラーパレット

参照したデザイン

レトロフューチャー

使用したツール

Photoshop・After Effects

ミスマッチさが際立つドット表現は、いつかやってみたい手法ナンバーワン。いざ作ろうとすると手間にはなりますが…。あえて、どぎつい配色を選んでいるのもポイント。

 

今回のまとめ

今回はあの手この手を使ってテロップベースを作ってみました。アイデア次第でどうにでもできることを知ってしまった以上、もうあの頃のような「とりあえず敷いただけのベース」に戻ることはできないでしょう。作ったものをストックしておけば自分だけのサステナブルなテロップのできあがりです。

 

CHECK!!

今回の作例は、本誌掲載のURLからダウンロードして構造をチェックしよう!

 

 

VIDEO SALON2022年10月号より転載