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木村博史(クリエイティブディレクター)


こんにちは、クリエイティブディレクターの木村博史です。企業が動画を自分たちで制作できるようになるためのサポートするようになってから10年を超えました。この10年の間にもライブ配信やショート動画、さらには各SNSプラットフォームの動画対応、採用サイトやニュースリリースでの自社やサービス紹介の動画提供など、動画はビジネスに恒常的に欠かすことができなくなっています。

だからでしょうか? 動画制作なんてしたことがない人たちが、上司からいきなり「動画を作って」と依頼されることが珍しくなくなりました。

とはいえ「何をどうやって?」「何から?」と「?」だらけなのが実際のところ。この企業担当者の疑問を解消しよう! というのが今回の連載です。

でも「ビデオサロン」ですからプロの制作者がたくさん読んでおられるのももちろん分かっています。この連載、プロの皆さんにもぜひ読んでほしいのです。

というのも動画制作を完全に自走しようなんて思っている企業はほぼありません。そのためここぞという時はプロに依頼するのですが、企業の動画制作依頼への不満やトラブルが本当に多いのです。

 そしてその問題の多くが、プロとの感覚相違や共通言語不足など、ミスコミュニケーションによるものなのです。この連載では企業担当者の感覚をプロの皆さんに知っていただき、溝を埋めることも目指したいなと考えています。

前置きが長くなりましたが、1回目のお題に入っていきましょう(全3回)。

動画制作未経験者が「動画を作って」と言われても「どうやって?」となるのは当たり前のこと。私が教える時には「何をどう撮るか考えて、撮って、編集して」という3ステップの大枠を理解してもらうことから始めています。

当たり前のようですが、はじめて動画制作にチャレンジする人によくあるのが時系列にカメラで撮りながら辻褄を合わせようとしてしまうことなのです。これでは上手くいきません。

だからこそ「何をどう撮るか考えて、撮って、編集して」が大切で、これを普段の仕事で使っている身近なものを“三種の神器”として活用することで、自分たちでの動画制作にチャレンジしてほしいのです。

企画をノート(テキスト)にまとめる

それぞれを詳しくみてみると、「何をどう撮るか考えて」は、企画です。動画に限らず何かを制作するときにはコンセプトや運営計画が大切。これは手帳やノート、パソコンならWordやExcelなどに文章としてまとめていくことですので、ノートなどが第一の神器なのです。

動画制作で大切なこの企画の設計は下記の順番で「考える」ように伝えています。

コンテンツの目的
動画での伝えたいメッセージや目標を明確にして撮影や編集の方向性がぶれないようにします。

ターゲットの設定
誰に向けた動画なのかを明確にすると、動画の目的を理解してもらうためのメッセージや表現方法が定まりやすくなります。ターゲットを具体的にイメージし、そのニーズや関心、さらには使う言葉も合わせるようにします。

アイデアの収集と整理
目的とターゲットに合わせて伝えたいことを積み重ねていきます。そのためにオススメなのが普段から気になったことを書き留めておいて、後からそれを見ることで思考のインスパイアが発生するようにしておくこと。これがネタ帳です。

ネタ帳は単語を徒然に書き留めておくものなので読んでも意味が分からなくて大丈夫。遠目で見直すところから、作る動画に合うように新たなインスピレーションが湧き出てきます。毎回ネタ出しをすると大変ですが、ネタ帳があれば一気に効率化します。

ストーリーボードの作成
シーンの流れやカットを整理するために、ストーリーボードを作成します。これは進行の流れを箇条書きにするだけでも大丈夫。ストーリーボードがあれば撮影や編集が効率的に進むだけでなく全体の構成に一貫性を持たせたられるようになります。

撮影はスマホで、音はピンマイク

「撮って」にはスマートフォンのカメラが役立ちますので、第二の神器はスマホです。

最近のスマホはカメラ性能が飛躍的に向上しており、手軽に高品質な動画を撮影できることはご承知のとおり。仕事でもスマホを多くの人が使っているのですから使わない手はありません。

身近なスマホゆえにどうすればいい動画が撮れるか、ということになるので、まずは下記を大切にするように伝えています。

見る人を安心させる安定した撮影
手ブレなどがなく安定した動画は視聴者に見やすい動画になりますので、スマホ用の三脚やスタビライザーの活用です。手持ちで撮影する場合も体を固定してゆっくりと動かすなど、カメラの性能ではなく撮り方も大切な知識だということを伝えています。

照明による明るさの演出
適切な照明で鮮明さや色合いを向上させることに加えて、スマホカメラの露光調整なども使って、目的に沿った伝え方ができる明るさを作り出します。

動画の出来を左右する音声の質
動画のクオリティに音声の質が重要なことはプロの皆さんならよくご承知ですが、企業担当者はカメラに映る映像に気が持っていかれて音が疎かになっていることがよくあります。スマホの内蔵マイクで撮影すると、指向性がカメラを中心に広いので周囲の雑音を拾ってしまいますので、スマホに対応した外部マイク、特にピンマイクなどを検討します。良好な音は視聴者の集中力を高めますので、メッセージを効果的に伝えることにつながります。

編集は無料のCapCutで

「編集して」はパソコンの動画編集ソフトが役立ちますので第三の神器はパソコンです。動画編集ソフトはパソコンソフトでもスマホアプリも数多くリリースされています。さらに使える機能は限定されますが、仕事で活用する動画には充分なほどの機能が無料版の動画編集ソフトでも提供されています。

そのため動画編集についても、パソコンやスマホなど日常業務で使用するもので大丈夫、わざわざ準備する必要はないのです。

「CapCut」のように無料で使えて操作も簡単なパソコン用の動画編集ソフトも登場しましたので、動画編集の基本的なスキルを身につければ、仕事に使っているパソコンでも魅力的な動画コンテンツを作り上げることができます。

もちろんパソコンのスペックやインストールができないパソコンもあるかもしれませんが、ブラウザ上で動画編集ソフトのように編集ができるサービスもありますし、スマホでも様々な動画編集アプリがリリースされていますので、最初の一歩については身近にできるものからチャレンジすると良いのです。

どうでしょう? 「動画を作って」と急に言われても、ノート、スマホ、パソコンの3つがあれば動画を作ることができます。そう動画制作に特別な準備は必要ないのです。この身近な3つの道具は動画制作初心者の「三種の神器」になるのです。

次回は「動画を発注する時のために知っておきたい発注者と受注者のハラのウチ」ということで、プロと企業担当者の感覚の齟齬から起きる問題とその解決方法について書いていきます。トラブルが多発する理由を探りますので楽しみにしてください。

「はじめての動画制作読本」
著・木村博史

7月23日発売  2,200円+税

主に企業内で動画制作をする人に向けて、ネタと企画、撮影、編集、演出、チームという5つのポイントから解説した入門書。動画制作をアドバイスする立場の人にも参考になる一冊となっている。

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VIDEO SALON 2024年8月号より転載

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