いとうたかとし
大学時代から音楽イベントを中心に、企画・制作に携わる。イベント関連業務として独学で映像を学び、卒業後はフリーランスとしてイベント撮影、MV、企業PV等幅広く手がける。2015年にMOMENT-TOKYOを創業し、アフタームービーやVJといったイベント映像を軸にライブ配信、PR戦略など幅広く手がける。
WEB●http://www.moment-movie.com/
文●松岡佳枝
いとうたかとしさんの作品
EDC Japan 2019 GMO Recap movie
全米最大のEDMとアートの音楽フェス「EDC」の日本版として毎年5月に幕張メッセで開催されている「EDC Japan」の模様を記録したアフタームービー。
GUESS × JBALVIN After Movie
ファッションブランドのGUESSとグラミー賞受賞アーティストのJ.バルヴィンによるコラボコレクション・Vibras(ヴィブラス)の発表を記念して行われたイベントの模様を収録。
よかった瞬間を繋げることで いい思い出として残せる映像の魅力
もともと映像が好きだったという、いとうたかとしさん。現在、SNS向けのイベントアフタームービー映像、ライブなどの映像制作を中心に活躍している。
「大学時代の契約アルバイトではイベント会社に在籍していました。映像やVJなども映像はそこから始めています。大学の先輩や社会人に、『こういう映像って作れる?』と言われ、まず『作れます』と返事をしてしまってから勉強するというサイクルでした(笑)。当時はYouTubeのチュートリアルなどもなく、Video Studioというソフトを使って、とにかく触って、こうしたらこうなるというのを繰り返して覚えましたね。イベントは、頑張って作り上げても、何にも残さないと水物だなという感覚があって、それを記録するために映像を録り、音楽に合わせて映像化してみると、とてもよかったんです。もちろん、いい時だけじゃないんですが、よかった瞬間をつないでダイジェストにすると、イベントもやってよかったなと思える気がするんですよね」
こうして働きながら大学を卒業し、フリーランスに。
「会社に所属するとしても、最終的には自分自身でやりたいということも踏まえ、4年間はフリーランスでした。大学を卒業した2011年から会社を設立した2015年までの間に、自分のなかでバズった企画があって。不動産投資家から投資を受け、“トキワ荘”の映像作家版をつくりたいと思ったんです。Twitterでつぶやいたらすごく人が集まって。シェアハウスブームも伴って、撮影スタジオを併設する4階建ての建物に30人くらいが集まったんです。CG系の人や映画をやりたい人、フォトグラファーなどさまざまな人がいて、ワークショップをやったりしていました。そのあと2015年前後に、映像系をまたゼロから始めようと思って会社を作ったんです」
自分自身のなかで確固たるものを 作りたいと思った
会社を設立するにあたり、自身の活動を見直したという。
「海外に行ったり、著名なアーティストと仕事をしたり比較的要領よくやってきて、器用になんでもできるけど、一体自分は何が得意なのかと漠然と考えるようになりました。そこで、ひとつ確固たるものを作りたいと思い、自分は広い映像業界のなかで何だったら一番になれるかと考えたとき、イベント会社にいた経験とイベントが好きで国内外問わずさまざまなイベントに足繁く通ってきたという部分で、『イベントの映像を専門でやっています』という看板を掲げることにしたんです。事業としてやっていくということで社員も募り、ひとつひとつの尊い瞬間を記録として収めていくことにフォーカスしました。さまざまなイベントを記録するなかで、事前にVコン(ビデオコンテ)も作成するなど、クライアントにとって分かりやすくあることも実践しています。イベントの可能性を映像で追求していけたらと思っています」
●機材リスト
●イベント撮影で主に使用する撮影機材
イベント撮影でのメインカメラはα7R Ⅲ。色味を合わせるため、カメラの機種は統一する。機動性を生かした撮影を行うため、ジンバルは必須だという。よく使う機材を見せてもらったところ、屋外用の大容量バッテリーや社名入りのインカムが出てきたところもイベントを軸とするプロダクションらしい機材。写ルンですやニシカの3D撮影用フィルムカメラN8000もエフェクトとして使うこともあるという。
●アフタームービーはVコンを作り、現地で編集。24時間以内に納品
大規模なイベントでは事前にVコンを作り、クライアントに確認を取る。イベント会場にMacを持ち込み、その場でアーティストの使用許可を取り、編集やカラーグレーディング(イベントではPremiereのを使用)を進める。場合によっては、After Effectsでモーショングラフィックスもその場で制作を行うこともあるという。
●ビデオSALON2019年12月号より転載