久松慎一+ 株式会社援軍
Vol.10 広告運用時に重要な指標(KPI)を理解しよう
前回からは広告の入稿方法について説明してきました。今回からはいよいよ実際に広告が掲載されたあと、主に広告運用時に確認する広告の成果指標(KPI)の内容・種類について解説します。広告を管理する画面で確認できる数字をもとに説明します。
目的に合った適切なKPIを設定する
広告は出稿する以上、必ず叶えたい目的・目標があります。サイトには目的や役割が存在しECサイトであれば、サイトへの訪問数を増やして売上を〇%獲得するといった内容が目的となりますし、ブランドサイトであれば市場のシェアを〇%獲得するなどの内容が目的になります。これらをKGI(経営目標達成指標)と呼びます。
KGIを達成するにはまず現在の状況(視聴率や動画のシェア率など)を客観的に把握する必要があります。目標達成するために置かれた指標をKPIと呼びます。次の表ではサイトのカテゴリ別に代表的なKPIをピックアップしてみます。実際にどんな数字を設定することができるのかを把握しておきましょう。
ブランドサイトでのKPIの一例
動画広告は文字だけの広告に比べて商品やサービス内容をわかりやすく訴求することが可能であるため、ブランドサイトなどで商品・サービスのブランド認知を目的とした場合に使用されるケースが多いです。そこでブランドサイトで運用する際のKPIについて深堀りしたいと思います。
商品・サービスなどの認知度を表す数字はさまざまありますが、認知について大きくふたつに分けることができます。ひとつは「商品・サービスそのものを知っているのか」もうひとつは「商品・サービスについて理解・好意は持たれているのか」。以下の表にまとめてみました。
KPIはさまざまな項目でチェックすることができます。下の表にまとめています。
各種KPIについて
視聴率などのKPIは主に広告管理画面から確認が可能
これまでも何度か説明していますが、WEB広告の効果測定は広告の管理画面の数字が中心です。例えば動画の効果は動画キャンペーン>動画をクリックすると、視聴率など動画に関する指標を確認できます。
▲動画キャンペーン>動画をクリックして表示される指標。視聴回数など公開した動画の効果を分析するのに役立つ数字が並ぶ。
より深堀りして確認する場合はYouTubeアナリティクスを使用する
広告管理画面からの数字以外にもGoogleアナリティクスやYouTubeアナリティクスからも動画に関する数字を取得することが可能です。
YouTubeアナリティクスは動画専用の効果計測ツールとなり、広告に限らずチャンネルにアップされている動画の成果をすべて確認することができます。
▲YouTubeアナリティクスから確認すればより詳細の数字がわかる
条件を満たせばブランド効果測定を実施することも可能
設定するKPIのなかには、一部の広告の管理画面でのみ取得できる内容もあります。「ブランド効果測定」などがそれにあたり、稼働している広告アカウントにGoogle担当がついているなどの条件に適合する場合に取得できる数字です。また効果を測定するには一定数以上の広告表示が必要です。
稼働するためのハードルは高いですが、他では確認することができない数字を得ることができるため、ブランド拡大を行うのであれば、ぜひ実施したい内容です。
▲広告管理画面からツールを選択すると確認できる
ブランド効果測定を行えるアカウントであれば、項目が追加されています。
▲ブランド効果測定に入り該当するキャンペーンを選択すると成果を確認することができる
ブランド効果測定ではWEB上でアンケート調査を行います。競合となるブランドと比べどれだけ認知があるのかを数字で可視化することが可能です。
設定するKPIの数は必要最低限に絞ること
KGIを達成するためにさまざまなKPIを設定する方がいますが、広告運用上多すぎるKPIは混乱のもとになるためあまりおススメ致しません。
運用で追いかけていくKPIは3つ、多くても5つ程で良いでしょう。広告はマーケティングの根幹となることも多く、多くの方が関わってきます。関わる人全員が把握しやすく、理解しやすい運用を行うためにも必要最低限のKPIで運用を行いましょう。
KPIは短いサイクルで変化が確認できる数字を選ぶこと
広告運用はPDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを回すことが基本。週単位(場合によっては日単位)で改善が走るため、設定するKPIはその期間内で変化がみられるものを選ぶことが重要です。
設定したKPIは適時見直しを図る
KPIとして設定してみたものの、思いのほか活用できないKPIというものもあります。例えばKPIとしてチャンネル登録者数を設定していたが、単発の商品・サービスのため登録に至るまでの数が伸びずKPIとして使用することが難しい場合など。実際に運用していくなかで見えてくるもの・気づくものなどあります。ですので、適時KPIは見直しを図り、目的を達成する運用を行いましょう。
今回のまとめ!
今回はまず、広告運用時に追いかけていくことになるKPIを中心に解説しました。広告施策を走らせながらPDCA(計画、実行、評価、改善)のサイクルを回すことが重要で、繰り返し改善を図りKPIの数字を引き上げていくことになります。最初から適切なKPIを選ぶことは難しいので、運用しながら適時最適なモノを選んでいきましょう。
Twitterの動画広告向け新機能「プレミアムカテゴリー」
本編から離れて、今回はTwitterの動画広告「Twitter Amplify」に新しく追加された「プレミアムカテゴリー」を紹介します。
Twitterに投稿された動画を見ていると、その再生前や再生中に動画広告が差し込まれることがあります。いわゆるインストリーム型の広告ですね。この広告メニューはTwitter Amplifyと呼ばれます。
Amplifyは「プレロール」と「スポンサーシップ」のふたつのメニューがあり、多くの場合に動画コンテンツが開始される前に挿入される動画広告スタイルの「プレロール」メニューを利用することになります。
このプレロールへ出稿する際に、出稿オプションのひとつとしてターゲットとなる視聴者が興味を持つであろうカテゴリーを設定します。
いままで、このカテゴリーはネット広告規格の国際的な標準化団体IAB(Interactive Advertising Bureau)の定めたカテゴリ第1階層の15個の選択肢のなかから指定する必要がありました。
今年の4月にこれが「プレミアムカテゴリー」という名前でTwitter独自に拡張されました。
▲左側が今までのカテゴリー、右側が今回追加されたカテゴリーの例
ただ選択肢の数が増えただけではありません。
IABカテゴリーはかなり大雑把な、(面白みのない)カテゴリーであるのに対し、プレミアムカテゴリーはより細かく具体的なカテゴリーが追加されているのでより出稿のイメージが付きやすくなりそうです。
Twitterの公式資料では上の表記書かれていますが、2020/5/20日現在著者が日本国内の広告主として確認したところ、プレミアムカテゴリーで選択できるのは「Z世代」のひとつの選択肢のみでした。
▲Twitterの広告出稿画面画面で、プレミアムカテゴリーが選択できる
プレミアムカテゴリー機能は4月に発表され、米国・英国・日本で開始されたばかりでカテゴリの組み方も国によって異なるようです。
「パブリッシャーを表示する」のリンクから、対象となるアカウントの一覧が表示されます。
▲配信対象となるユーザーの一覧
まだカテゴリが少ないのでいまいちピンときませんが、プレミアムカテゴリーはこれから追加されていくことになっています。海外事例を見ていても、このプレミアムカテゴリーの導入によりTwitterへの出稿がやりやすくなりそうです。
●VIDEO SALON2021年7月号より転載