第2回 シャイなあなたへ、自分撮りのススメ


文=長谷川修(大和映像サロン会長)
タイトル=岩崎光明

持って生まれた性分とでも申しましょうか、他人に気軽に声を掛けるのにためらいを感じてしまい、話をするきっかけが掴めないシャイな私です。そんな私でも可能になるビデオ制作の極意は“自分撮り”です。

十人十色と申しますが、世の中いろいろな人がいて、それで成り立っているわけですね。ビデオを趣味とするからには皆さん同じ性格の人ばかりかと思いきや、そうでもありません。「俺が俺が!」と常に前を走らないと気が済まない輩がいるかと思えば、内気で控えめな私のような(?)人もいるのですョ!

他人に取材の主旨を話し、了解を得る能力と実行力を兼ね備える人は、間違いなく映像制作の基本をしっかりと会得されている人だと思います。

私の知り合いで高名な女性映像作家のK女史と、たまたま新潟県の旧山古志(やまこし)村に同行する機会がありました。山古志村の春をのんびりと楽しもうとしていた私を尻目に、K女史の動きの素早いこと。田植えをしている人に素早く了解をとり、前から横から斜めから、じっくり粘ってたっぷり時間をかけて撮影していました。ここで同行者に気を遣って撮影を早々と切り上げるようではダメ! なぜなら、そのように没頭できるということが優れた才能なのです。

そんな場面で同行者に気を遣い、早々と切り上げるあ・な・た! そんなあなたに相応しいのが自分撮りビデオなのです!

不思議なもので、他人に対し突撃インタビューや撮影交渉ができる人が、衆人環視の中で、独りでカメラに向かってアクション(演技)ができるかというと、これは全く別の話なのですネ。できる人もいますが、恥ずかしくてできない人が殆どなのですョ。ところがシャイな人が、この独り芝居といいますか自分撮りができるのですから不思議ですね。さあ、あなたの出番ですよ~!

以前『ボクのCM劇場』という作品を作りました。昭和のCMソングに合わせて展開するホームドラマです。一曲ごとにシチュエーションを考え、歌詞に合わせた演技が求められます。自分が監督ですから下手な演技でも自分が納得さえすればOKです。NGだと思えば何回でも撮り直せるのが強みですね。

何回か演じているうちに、恥ずかしいという気持ちが突然消えるのですョ! シャイな自分が消えて、そこに突然役者になった自分がいるのです。昔から「乞食と役者は一度やったら止められない」と言いますが、本当なのです。嘘だと思ったら一度試して下さい。

代表的なシチュエーションは私の入浴シーン。脱衣所でズボンを下す後ろ姿、次に真っ白なブリーフが…ここでCMソング。スリガラス越しにおぼろげな私、突然風呂場のドアが開き、私の上半身。「お~い、石鹸がないよ石鹸!」 家内「棚の上にあるでしょう?」(声だけ後から録音して挿入)私、棚の方を見ると牛の鳴き声がモ~~♪「花の香り おちちの泡立ち 牛乳石鹸 よい石鹸」(この間にカメラは牛乳石鹸をズームアップ)このプロットは受けましたネ。

でも、少なくともこの撮影は自分撮りでしかできないですよね。裸で曇りガラス越しのショットはともかく、撮影が終わったら風呂場からカメラへ向かって出て来るわけですから…むろん編集でその部分はチンじゃなくてチョンですけれど…。

それから別の作品では、ビデオ仲間と西伊豆へ一泊撮影旅行へ行った時のビデオを面白く編集しようとして、旅行に行けなかった仲間に電話で旅の楽しかったことを話すという設定にしました。

部屋の電話が鳴る。腰にバスタオルを巻き、タオルで頭を拭きながら私が登場。受話器を取って「ハイもしもし…」となって相手に旅の思い出を話す(画面はその話に合った映像が展開している)。そして、長い電話が終り、すっかり湯ざめをした私が大きなくしゃみをするとバスタオルが落ちる。すかさず「おしまい」の文字が落ちて弾む。単調になりがちな懇親撮影旅行ビデオも大いに受けました。

2作品とも自分撮りだからこそ表現できるテクニックなのです。考えてもみて下さいよ、大の男がバスタオル一枚で部屋をうろうろ。挙句の果てに、すっぽんぽんになるわけですから、自分撮りしかない!

経験的に自分撮りで一番難しいのが“歩き”です。最初のうちは緊張して、足がもつれそうになるものです。新婚旅行で最初の宿に到着し、正面玄関に入った途端「いらっしゃいませ~」。見ると宿の人全員が(と思うぐらい大勢が)ズラリとお出迎え、入口からあがり端までの距離の長いこと! 当然足がもつれますョ。それと同じです。

まあ、それから見ればどうってこともありません。場数だけです。皆さんナレーションは独りで録音しているでしょう? それからしたら独り芝居なんぞはお茶の子さいさいですよ!

『ボクのCM劇場』

9分23秒

月刊「ビデオサロン」2015年2月号掲載