Panasonic LUMIX DC-GH5&GH5S を活用した映像制作の現場レポート
ネイチャーカメラマンのフィールド

4K/60pとHD240fpsで
オオワシとオジロワシを撮影する

Report_小川浩司(クリーククリエイティブ)

タフさとコンパクトさが
フィールド向き

作品のテーマは鷲。動画撮影のために強化されたGH5Sと、4K/60pが収録できる外部レコーダーのNINJA INFERNOをお借りして、今、世界自然遺産の知床半島・羅臼町に来ている(2月中旬)。

今回は「知床ネイチャークルーズ」さんの船に乗船し、絶滅危惧種で天然記念物の希少な「オオワシ」と「オジロワシ」を撮影している。

船上では三脚の使用は難しいため(振動、移動、安全性の問題)、手持ち撮影を前提とし、手ブレ補正を使える純正望遠レンズを選択した。LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm/F4.0-6.3、LUMIX G X VARIO 35-100mm/F2.8の2本である。

▲使用レンズはLUMIX G X VARIO 35-100mm/F2.8(左)とLEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm/F4.0-6.3(右)。
 撮影にあたっての課題点は多い。まずはフォーカスの問題だ。鷲は海上の餌を獲りに、空から弧を描き素早く滑空する。被写体にピントを合わせ続けることは難しく、AFは追いつかないのでマニュアルにて追尾する。この際に絞り込んで深度を深くすることで成功率を高めるのだが、つまりは暗くなってしまうので、ISOを高く設定したい。この時にGH5Sの強化された高感度性能が役に立つ。同時に使用するNINJA INFERNOの大きい画面とピーキングも見やすくてピントの山を掴みやすい。
▲GH5Sにリグを装着して上にNINJA INFERNOを載せた。
▲船上にて。ストラップを軸にし身体で支えるように被写体を追いかける。

 

▲FHD/240fps/4:2:0/8bit/V-LogL手持ち撮影。LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm /F4.0-6.3  他のカメラのスローモーションは解像感が劣化することが多いが、光量などの条件が良ければなかなか高品質な状態を保ってくれる

▲C4K/60p/4:2:2/10bit/V-LogL手持ち撮影。LUMIX G X VARIO 35-100mm/F2.8  C4Kの4096 × 2160の解像度はまるで動く写真。動画から切り出したフレームに、撮影時には気付かなかった瞬間を発見することも。

もう一つ、フレーミングの問題がある。テレ側で最大で換算800mm相当のレンズの画角となるため、手持ちで画面に収め続けることが難しい。これはハイスピード撮影で解決する。240fpsは最大で10倍のスローとなる(フルHD)。3秒間しっかり撮れれば、編集時に30秒の尺を得られるので、スローモーションの作品にすることを前提でこの問題は解決した。

▲4K/60p/4:2:2/10bit/V-LogL/LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm/F4.0-6.3 35mm換算800mmのレンズはかなり寄れる。ライカレンズの解像感も驚くほどシャープ。オジロワシの羽一枚一枚のディティールがしっかりと描写されている。
▲4K/60p/4:2:2/10bit/V-LogL/LUMIX G X VARIO 35-100mm/F2.8  逆光気味のシチュエーションでもアンダー側の情報がしっかり残っており、カラーグレーティング時にラチチュードの広さに感心する。それとパナソニックの純正レンズは基本、電子式のピントリングでMFの操作性に不満を抱いていたが、使用したこのLUMIX G X VARIO 35-100mm/F2.8はマニュアル時の操作性も非常に良く素早く正確な操作が可能だった。

 

ボディの寒冷地での耐性も強く、撮影期間中最大で-20℃を下回ることもあったがREC中フリーズするなどの問題は一切なく、バッテリーの消費もまずまず。日の出から夕暮れまで野外で撮影して、平均-5℃の環境で3~4個程度の純正バッテリーで事足りた。

何よりこの小ささ、機動性が役に立つ。業務用のデジタルシネマカメラのスペックが手のひらに、そして小さめのショルダーバッグにレンズ数本とバッテリーがすっぽり入る。フィールドでは機材がかさばるほど、とっさのシャッターチャンスの機会損失に繋がるので手元にレンズやバッテリーを備えられるのは心強い。

▲ショルダーバッグにレンズ3本、バッテリー10個が入ってしまう。機動性は言うことなしに優れている。

感度耐性の強化や240fps対応などGH5からさらにパワーアップして現れたGH5S。映像に対するパナソニックの革新的な動向に今後も期待したい。

WildBard [RedcrownedCrane] otowa-Bridge Hokkaido Japan

WildBard [Whooper swan] LakesKussharo Hokkaido Japan

撮影協力:ウィルダネスロッジ・ヒッコリーウィンド

小川浩司(オガワコウジ)=千葉県在住映像作家。安藤誠に師事し、2年連続「ネイチャーズベストフォトグラフィーアジア」受賞。クリーククリエイティブhttp://creekcreative.jp

※この記事はビデオSALON 2018年4月号特別付録に掲載した内容を転載しています。