【インタビュー取材REPORT】Flowtech75という共通脚を採用したヴィンテンとザハトラーのこと〜ヴァイテックプロダクションソリューションズ


ヴァイテックグループについては、ビデオサロン2018年8月号でヴァイテックイメージング(旧マンフロット)の新井社長と上原氏にインタビューしているので、そちらをぜひチェックしてほしいが、4月1日にマンフロットがヴァイテックイメージングに社名変更したのと同じタイミングで、ヴァイテックビデオコムも、ヴァイテックプロダクションソリューションズに社名変更した。この会社、耳慣れない人も多いかもしれないが、要はヴィンテン&ザハトラーのことで、ヴァイテックとはホールディングカンパニー。2013年に、ヴィンテンジャパンとザハトラージャパンが一緒になってヴァイテックビデオコムという会社が誕生。そしてその会社が今年2018年の4月1日に社名変更されたという経緯である。代表取締役の日野貴史社長に会社の歴史、近年の動向、そして大ヒットしている脚、Flowtech(フローテック)75についてお話しを伺いレポートとしてまとめた。(本レポートはビデオSALON.webのみの記事です)        ( 一柳)

Flowtech75は、ヴィンテンとザハトラーの75ミリボール径のビデオヘッドとのセットとして販売されている。左はヴィンテンのVision blue5とのセットで、Vision blue5システム(ミッドスプレッダー/Flowtech脚)VB5-FTMS、右はAce Lとのセット(Ace L/Flowtech脚/スプレッダーなし)で、システムAce L Flowtech 75。これ以外に、ヴィンテンではblue3やblue、ザハトラーではFSB4、FSB6、FSB8とのセットが組まれている。

 

創業100年のヴィンテンがベースに

ヴィンテン(Vinten)の歴史はかなり古く、創業100年を越える。その歴史についてはこちらのサイトにまとめられているが、1910年、ロンドンの郊外の町工場で創業者のWilliam Vintenがキネマカラープロジェクターの製造を始めたのが始まりとされている。その後、第一次世界対戦をきっかけに、航空機に搭載するシネカメラも作るようになる。つまり最初はカメラメーカーだったというのである。そのうち、BBCからの依頼を受けて、ペデスタルを作るようになった。そこから我々が知るヴィンテンに繋がっていく。ちなみにヴィンテンの代名詞とも言える、完全バランス機構を活用したビデオヘッドは1986年に誕生している。

その後、創業家は、軍事関係の事業を売却し、その資金で企業買収を始めることになる。1989年から1995年の間に、ヴィンテンは、マンフロットやジッツオ、ザハトラーといった有力な企業を買収。1995年には企業名をヴァイテックグループと変更した。

そのヴァイテックグループには、ふたつの事業部があった。マンフロットを中心としたフォトグラフィックディビジョンと、ヴィンテンを中心としたブロードキャストディビジョンだ。

ブロードキャストといっても、市場が伸びないので、ビデオコム時代に、取り扱いブランドが15ほどにもなった。現在は、ヴィンテン(Vinten)、ザハトラー(Sachtler)、OConnor(オコナー、米の三脚ブランドで映画業界に強い)、アントンバウアー(Anton/Bauer、バッテリーブランド)、ライトパネルズ(Litepanels、米の新興LEDライトブランド)、オートスクリプト(Autoscript、英プロンプターブランド)、オートキュー(Autocue、英プロンプターブランド)の7つである。ビデオコム時代は、テラデックやパラリンクスなども扱っていたが、そちらは今回に再編により、ヴァイテッククリエイティブソリューションズという主にアメリカの新興メーカーを束ねている会社が扱うことになった。ちなみにヴァイテッククリエイティブのほうは、現在、日本法人はない。

CP+2018でのマンフロットの社名変更記者会見の資料より。

 

放送局向けがメインだが2000年以降はクリエイター向けの75㎜ボール径も

ヴァイテックイメージングとヴァイテックプロダクションはかつては写真とビデオという棲み分けだったが、今、機材の垣根は低くなり、一眼でもムービーを撮る時代だ。マンフロット製品でも動画関係のものが増えてきている。2つの会社の違いで大きいのは「売り方」の違いで、ヴァイテックイメージングが量販店中心の販売形態なのに対して、ヴァイテックプロダクションは、放送局への直販やディーラーへの販売が多くを占める。ただ、それも最近では個人で映像制作をする人が広がりを見せ、各企業内でも映像制作されるようになってくると、今後はヴィンテンやザハトラーといったブランドも映像クリエイター向けにさらに訴求していく必要がある。

かつて、ヴィンテンやザハトラーの三脚といえば、個人では手が届かないような高価なものしかなかったが、2000年以降は、カメラがショルダーからハンドヘルドへ、そして高性能化することに合わせて、より軽いカメラでバランスがとれるヘッドが開発されていった。一時期はヴィンテンとザハトラーで毎年のように75㎜ボール径の新製品が出ていた頃もある(その頃はビデオサロン誌上でも三脚の特集が多かった)。それも、ヴィンテンがVision blueシリーズ、ザハトラーはFSBシリーズとAceシリーズを完成させたことで、小型カメラ用のヘッドの開発としてはひとまずは終わったという印象がある。

ヴィンテンもザハトラーもコスタリカ生産の比重が高まる

ヴィンテンとザハトラー、同じ会社になっているとはいえ、それぞれ伝統と個性がある。統合された当初の10年は、別々に工場があり、商品企画があり、ホールディングカンパニーでそれを調整していた。2004年に商品開発を一括してやるようになり、工場もひとつになったそうだ。実はその頃イギリス主導で、ドイツの工場をなくし、コスタリカに工場を作っている。ザハトラーのすべての製品、ヴィンテンは大型ヘッドとペデスタル以外はコスタリカ生産になっている。当初は、コスタリカ生産で大丈夫かという心配もあったそうだが、それが経験とともに技術力が向上し、現在ではイギリス生産よりも品質が上のものもあるほどだ。

コスタリカの一般的なイメージといえば熱帯雨林。昆虫や鳥などが生息できる自然環境を守り、自然エネルギーを活用しようというのが国の方針で、軍隊にお金を使わず、その分、教育に力をいれている。中南米はブラジル以外はスペイン語圏だが、コスタリカでは英語教育に力を入れ、大学の授業料は無料。産業政策としてハイテク企業を誘致している。税制上の優遇と高い教育レベルに支えらえ、各企業の工場がどんどん進出しているという。また、赤道近くにありながら、高地が多いので、1年中20度くらいでエアコンが要らないという気候の良さも後押ししている。

現在ではヴィンテンもザハトラーも商品開発を管轄するトップは同一になり、同じ工場で作られているとなると、両ブランドの個性は今後どうなっていくのかが心配だ。日野社長は、「ヴィンテンは革新的、イノベーションというイメージを大切にして、スタジオ中継やハイエンドの分野を担当していき、ザハトラーはダイヤルでかちかちっと決められるドイツ的な機構を大切にして、スピードセットアップ、迅速というコンセプトで、ENGやインディペンデントコンテンツクリエイターを対象にしていく」という。「もちろん、ヴィンテン、ザハトラー、それぞれが好きな人たちはいるので、個性は残していくし、ヴィンテンでも入門用のモデルは残していく」という。

ヴァイテックグループには、三脚ブランドとして、オコナーが加わっているが、これはザハトラーが完全バランスの技術を取り入れたいという思惑で買収したのだが、その機構がザハトラーのヘッドに入らないという事情があって断念した経緯がある。ヴァイテックとしては、オコナーはアメリアではシネの現場で強いので、ブランドを残していくつもりだ。ただ、開発の方法はかわり、製造現場は、カリフォルニアからコスタリカへと移った。今後、シネ用としてはザハトラーではなく、オコナーで新製品を出していく予定だという。

 

中国のコピー三脚に対抗するには他社にできない製品を開発するしかない

現在、ビデオ三脚は世界的に価格競争が厳しくなっている。その背景は中国だ。ご存知の方も多いと思うが、中国のメーカーがザハトラーの機構、デザインを真似したいゆわるコピー製品をそれこそ半分の価格でどんどん出してくる。もちろん性能は劣るが、それを使うユーザーがいる。中国のマーケットでは、ブランドにこだわる人もいるが、同じようなもので品質がそこそこであれば受け入れる土壌がある。であれば、簡単にコピーできない、つまり他社が作れない、圧倒的に差別化をはかったものを作るしかない、というのがヴァイテックグループの考え方だ。それがマンフロットのNitrotechであり、ヴァイテックプロダクションのFlowtechなのである。

Flowtech75の製品レポートはビデオサロン2018年8月号に菅原安氏のレポートを掲載。

撮影&テスト:菅原 安

 

工場に莫大な設備投資が必要なFlowtech

Flowtechはこれまでのビデオ脚とはまったく違う構造で、湾曲したカーボンの板が一番上のレバーロックを解除することで、スライドして伸びる。高さを調整するのにかがむ必要がないし、ヘッド近くの操作で脚の高さを調整することできる。カーボンのカーブした板がひねりに対して高い強度を保つ。脚の開きは3段階あり、基本的にスプレッダーは必要ない。実はヴァイテックグループは、2002、3年ごろにファイバーテックというカーボンファイバーの板状の脚を出したことがある。モノとしては良かったものの、残念ながら耐久性に難があり、1年で終わってしまった。今回の製品は、そのフィードバックもあり、慎重に開発した。工場に莫大な投資をして、特殊な機材でカーボンを編み上げている。歩留まりの関係もあり、昨年2017年の9月に発表して多くの注文を受けたのち、順次世界に少しずつ出荷してきた。日本ではInter BEEでお披露目の後、ようやく3月に発売が開始されたが、まだ台数は限られているという。つまり簡単には作れないもの、しかも工場に莫大な投資が必要とあれば、なかなか中国メーカーにキャッチアップされないだろうという思惑があるのだ。

撮影&テスト:菅原 安

 

75ミリボール径の脚はFlowtechに集約する方向

現状での販売は、供給が追いつかないということもあり、脚単体での販売ではなく、ヴィンテン、ザハトラーの各75ミリボールヘッドとのセット売りとなる。一旦供給が追いつき、脚単体で欲しいというリクエストの声が大きければ、単品販売も検討するというが、実はヘッドセットとの価格差は2、3万円になりそうで、セットが断然お得な価格設定になるのだそうだ。Flowtechのヴィンテンとザハトラーの脚は基本的な構造は共通で、レバーの色が違うのとブランドロゴが違うだけ。周辺パーツも共通化している。今後は、これまでの75ミリボール径用の脚は整理していく方向だという。価格競争が厳しいのに、多品種をラインナップし、それぞれにアクセサリーをもっていてはとても市場競争に勝てないからだ。ちなみにFlowtechは、イギリスの本社工場で製造している。

 

グランドスプレッダーが秋頃に出てくる

Flowtechにはスプレッダーは不要なのだが、特に日本市場においては、スプレッダー、特にグランドスプレッダーを求められる。カメラマンがヘッドにドラッグを重めにかけたときに脚が動いてしまうんじゃないかと不安でスプレッダーを踏んで使うという事情があり、グランドスプレッダー付きの脚を選択するからだ。スプレッダーはFlowtech専用のものが必要になるが、ここでも、これまでにない新機構のグランドスプレッダーを開発中だという。Inter BEEの頃には見せられるのではないかとのこと。一体どんな製品なのか、とても楽しみだ。日本市場ではそこからさらにFlowtechが現場に入っていくことになるだろう。

●Flowtech75の製品レポートはビデオSALON 2018年8月号 に掲載しています。他にも充実した記事が盛りだくさん! 詳しくはこちらから。