Appleから新たに発売されたiPhone 15 Pro Max。動画機能の目玉は、Log撮影が可能になったということ。果たして、どれほど使用に耐えうる実力をしているのか。映像クリエイターの白木修太さんに、さっそくミュージックビデオの現場で使ってもらった。

レポート●白木修太


白木修太Profile
愛知県豊川市生まれ。名古屋ビジュアルアーツ卒業。映像制作・タレントマネジメントを行う、株式会社CrazyBank 取締役。監督したMVは200本以上、総再生回数は1億回を超える。
WEB:https://crazybank.co.jp/


 

はじめまして。

MVディレクターをしております、株式会社CrazyBankの白木です。Log撮影の機能が搭載されて話題のiPhone 15 Pro MAXを、撮影現場で使用しましたのでレポートします。

 

iPhone、ついにLog撮影を獲得

スマホを現場で使うなんて…と思っておりましたが、13にシネマティックモードが搭載されたことにより注目を浴びるようになったiPhone。以前、それについてもレビューをさせていただきました。

iPhone13でMVを全編撮影!シネマティックモードはプロの現場でも使えるのか?

確かにボケ感があるとそれっぽい映像が撮れる。が、あくまで擬似的なボケでなので、プロからすると違和感が残る。結果、発展途上の感じが否めないという結論に至りました。その後、14では手ぶれ補正に力を入れていたので、現場で使用できるのはまだ遠いか…とさえ思ったのですが、今回なんとLog搭載。

そうだよ、それだよAppleと思わず唸りました。

ボケやギミックなどで勝負しないで、プロユーザーが求めているのはカメラ機能の本質的な進化。

これは楽しみです。

 

Apple Logを使ってみた(撮影編)

 

1カ月で4現場にて使用しました。今回はirienchyというバンドのMV『最強のぼっち』の映像を見ながらを検証していきます。今作はa7CR(s-Log3)と併用して撮影をしました。性能についてのレビューを行うので、Logの設定方法は割愛します。

 

今回の撮影では、iPhone 15 Pro Max(左)とソニー α7CRを併用。

まずiPhoneの画面でLogの映像を見れることに感動しました。さすがにLUTを当てる機能はないようですね(サードパーティ製アプリで適用可)。 iPhoneで撮る際、露出がオートなのでそこは注意です。また画面長押しで露出の固定が可能でした。

一応、4:2:2 10bitではありますが、センサーが小さく、初のLogなので慎重に。4:2:2 8bit S-Log2を扱う気持ちで撮影すると、感覚としてはちょうどいいです。

またアンダーの体制が弱いので、気持ちハイキーで収録する事を心がけるとよかったです。 Pro Maxは画面が大きいのでミラーレスの液晶より見やすいのもよかったです。

 

Apple Logを使ってみた(編集編)

 

s-Log3

 

Apple Log

(4K24p収録 グレーディング済)

続いて編集した時の所感をお伝えします。α7CRのs-Log3と比較しながら見ていきたいと思います。外で充分に光量がある場合、問題は無い発色で、「このLogは見せかけだけじゃない!」と感心しました。

 

s-Log3

 

Apple Log

(4K24p収録 グレーディング済)

これはスゴいですね。被写界深度が深いので、Bカメとして扱うよりは、深度の深いカットが欲しい時に決め打ちで使うのがベターかもしれません。フルサイズのカメラと並べると流石に人物の質感は劣りますが、街並みのインサート映像なら負けていないかもしれません。

 

暗いシーンでの実力も検証

MVでは暗いシーンがなかったので、改めて別日に夕暮れと夜の街並みを撮影を行いました。ここからの比較はiPhoneの通常モードと、Logモードの比較です。

通常モード

 

Logモード

(4K30p収録 グレーディング済)

さすがLog。色情報がかなり残っていますね。通常モードとは階調が桁違いだということが分かります。ノイズも気にならないし、普通に使える。これまでのiPhoneは、撮っている最中は発色が綺麗だと思っていても、大きな画面で確認するとそうでもないことがよくありました。Log撮影なら、そういった点を解決できそうです。

 

通常モード

 

Logモード

(4K30p収録 グレーディング済)

続いて夜景です。正直、これは厳しいという印象です。はじめに、4:2:2 8bit S-Log2を扱う気持ちでお伝えしましたが、あながち間違いではないかもしれません。暗部、暗所でLog撮影は避けたほうが良さそうです。通常モードは悪くないので、使い分けが必要ですね。

 

結論、iPhone 15 Pro Maxは現場で使用できる。

 

サブ機として非常に優秀という印象を受けました。ただし、被写界深度の問題があるので用途は限られます。 シネマティック(被写界深度の進化)、アクションモード(手ぶれ補正の強化)と続いていたので、少し動画性能を心配してましたが、Log撮影が搭載され、ここに来て本気を出してきたなと。

被写界深度、手ぶれ補正、Log撮影の搭載。この進化の流れは、2012年頃からの映像業界の流れと似ています。キヤノン EOS 5D mark IIが登場(被写界深度の進化)、DJI スタビライザーの登場(手ぶれ補正の強化)、Blackmagic Pocket Cinema Cameraの登場、S-Log2の登場(Log撮影)。となると、iPhoneの次の進化は?

今ホットなのはグレーディング、収録データ品質の向上になるでしょうか。カメラの機能進化は良いところまで来ているので、次はセンサーを大きくするか、本当の意味での被写界深度の進化を見せていただきたいです。

iPhoneがどこまで進化していくのか楽しみです。

●製品情報

https://www.apple.com/jp/iphone-15-pro/