ビデオサロン2011年6月号掲載「スチル&ムービーで撮る 花の映像作品術」より。全国の花の名所と開花情報、美しい映像を公開している人気サイト「花の名所案内」(http://www.hanazakura.jp/)を運営しているプレスメディア社の庄子利男さんの撮影&編集術を紹介している。詳細は6月号の記事をご覧いただくとして、4月下旬に山梨県笛吹市で行った撮影の撮影舞台裏と、編集後YouTubeにアップされた作品をご紹介する。
三脚に据えたカメラ(パナソニックLUMIX GH2)でムービーを撮りつつ、デジカメ(キヤノンPowerShot G11)で静止画を撮影。
「花の命は短くて…」。季節モノであるだけに、花の撮影はスピードが命。旅行雑誌では来年の桜特集のために今年の桜を取材するのだが、情報の速さがウリのWEBでは、今咲いている花の情報をリアルタイムで紹介しなければ意味がない。
庄子さんのモットーは「素早く撮影してすぐに編集してアップする」。撮影にも編集にも時間をかけず、なおかつクオリティの高い映像作品を作る。そのためには、機材は小型軽量で機動力の高いものを選び、短時間で撮影ポイントを回って撮影を終えることが必要。庄子流「花の撮影術」のキモは、動画と並行して静止画も撮っておき、それも映像の素材として有効に活用すること。
映像作品の素材はムービーでなければならないという思い込みがある方も少なくないようだが、静止画であっても、編集上でパンニングやズーミングを使って動きを作ることは可能だ。花の場合では、風に揺れる様子など情景を見せたいところに動画を使い、じっくりディテールを見せたいところには静止画を使うというふうな使い分けが効果的だ。また、静止画をうまく挟み込むことでカット数を稼ぐことができる。短時間の撮影でも、静止画を押さえておくことで素材が豊富になるわけだ。
使用するカメラはムービー用パナソニックLUMIX DMC-GH2とスチル用のキヤノンPowerShot G11。デジタル一眼なら1台でも済ませられそうだが、GH2は動画と静止画が同じファイル内に保存されるため後で扱いが面倒になるのと、ムービーを撮りながら同時にスチルも押さえるため、あえて別にしている。GH2を三脚に据える場合は、レンズは主に標準ズーム(14-140mm)を使用。
庄子さんの“秘密兵器”がライト用ブームを利用した簡易クレーン(左)。花をクローズアップで俯瞰気味に撮る場合に活躍。同じく俯瞰ショットには一脚も使える。
花めぐりをする旅行者の目線になれるのが、ステディカムを使った移動撮影。庄子さんが愛用するのは、1.3kgまでのカメラに対応するグライドカムHD1000(左)。GH2で使用する場合、14mmのパンケーキレンズを使うと重心がボディ側になり安定する。時にはグライドカムを持ちながら同時にスチル撮影というアクロバット的撮影も(右)。
庄子さんは早朝に出かけ、午前中に撮影を終えてしまう。この日は比較的遠距離(東京から約100km)だったのと、天気待ちの時間があったため午後早めの終了となったが、午前の早い時間は人も少なく撮影がしやすいのと、戻って午後からすぐ編集作業に入れるメリットがある。撮ったその日か、遅くとも翌日には映像を編集してYouTubeにアップしてしまう。今咲いている花の映像をリアルタイムで楽しめるし、その気になれば現地に行ってみることも可能だ。花の開花情報に加えて、“撮れたて新鮮”な映像が見られることがサイトの付加価値になっている。
編集に使うソフトはMacにバンドルされているiMovie。BGMを決めたら、その尺に合わせてだいたいのカット数が決まるので、あとはスチルとムービーからカットを選び、並べていく。トランジションなどを使ってつなぎをスムーズにして、文字を入れて細かな調整を行う。編集にかける時間は1~2時間程度。あまり凝った演出やエフェクトは使わなくても、メイン以外の花や雲などのインサートカットをたくさん用意して変化をつけてやることが退屈させないコツ。また、おいしいカットは最後に残しておくのが庄子流だ。
じっくり時間をかけて素材を撮り集め、編集するのもいいが、このようにフットワーク軽く出かけて撮ったらすぐに編集して作品の形にするクイック撮影&編集術もぜひおすすめしたい。