昨年からDJIのドローンエントリーモデルが拡充されている。これから空撮を始めてみたいという人々に向けて、過去のDJIドローンすべてを使ってきたドローンクリエイターのイナダユウキさんに新たに登場したDJI FLIPをはじめ、Mini 3 Pro、Neoの3機種の違いを比較レビューしてもらった。
レポート●イナダユウキ(コマンドディ)
毎年様々なDJIドローンのレビュー記事を作成させていただいていますが、ここ1年DJIはハイペースでドローンを発表してます。2024年4月にAVATA 2、9月にNeo、10月にAir 3Sときて、新たにDJI FLIPが登場になります。
このDJI FLIPの特徴としては、今までの空撮用ドローンだけではなく、「自動の自撮りカメラとしての進化」を感じた商品です。DJI公式でも「DJI Flipは、空撮、日常の録画、レジャー活動に最適なオールインワンのブログ用カメラドローンです」と記載されています。
今回登場するFLIPは、MiniシリーズやNeoと似ている部分もあるので、「どういった使い方をするか?」によって、「どの製品が最適なのか?」が変わってきます。本レビューでは、前半にDJI FLIPの基本性能について、後半にMini、Neo、FLIPを比較して違いをご紹介してきます。
※補足
最新はMini 4 Proなのですが、私が所有しているのはMini 3 Proなので、その比較となります。カメラの画質が同じレベルだという点については、過去のMini 3 ProとMini 4 Proの記事をご参照ください。(https://videosalon.jp/report/dji-mini4pro_air3/)
DJI FLIPの基本性能について
セットおよび価格
DJI Flip:66,660円
DJI Flip(DJI RC2付属):93,390円
DJI Flip Fly Moreコンボ(DJI RC2付属):112,750円
以下は、DJI Flip Fly Moreコンボ(DJI RC2付属)で、本体、モニター付き送信機、バッテリー3本、充電ハブ
▼今回ご提供いただいたDJI Flip Fly Moreコンボ(DJI RC2付属)
以下の一式が専用のショルダーバッグにバッチリ入ります。
別売りで専用のNDフィルター(ND16/64/256の3枚セット)があります。カメラの絞りがf/1.7固定で、野外で飛行することが多いので、NDフィルターは欲しいところ。
押し込むだけの取り付けで、しっかりと引っかかりもありマウントされてますので、飛行中に外れる心配はなさそうです。
折りたたみ式、全面保護プロペラガード込みで249gの軽さ
海外では、航空法などドローンの各種法令による規制のかかり方が250gが境目となるため、249gというのがそれをクリアするためのひとつのラインになっています。ただ日本においては、99g以下が規制対象外となるラインになるため、DJI FLIPも他のDJIドローンと同様に機体登録の手続きが必要となります。ただ、自動飛行するカメラとして考えた時に、ガード付きで、折りたたみができて、249gという軽さは、使い勝手(法令上の)と安全性のバランスを高次元で調整しているなと感じました。
1/1.3インチ CMOSセンサー搭載のカメラ性能
DJI FLIPは、4,800 万画素の写真撮影が可能で、1/1.3 インチのイメージセンサーを搭載し、デュアルネイティブ ISOに対応しています。最新のMiniシリーズと同様に、クアッドベイヤー配列技術で4,800万画素を1,200万画素サイズの写真に作成、個々のピクセルサイズが2.4μmの大きさとなり、低照度環境下でも高品質の映像を撮影することができます。さらに4K/60pで、カラーモードがノーマル/D-Log M: 10-bit 4:2:0 (H.265)に対応し、新たな機能として、素材をエクスポートする際には自動的に美顔処理に対応しています(ON/OFF可能)。
AIトラッキングで、ベストアングルから撮影
AIトラッキングにより、被写体をフレームの中心に捉え続け、まるで専属カメラマンが付いているかのように動きに合わせて的確にトラッキングします。ドローニー、サークル、ロケット、スポットライト、ヘリックス、ブーメランなど、多彩なクリエイティブな撮影がワンタッチ操作で可能なり、素早く簡単に撮影できます。
操作方法について
DJI FLIPは、以下の4種類のコントロール方法をサポートしています。
・手のひらコントロール
・モバイルアプリコントロール
・音声コントロール(英語もしくは中国語に対応し、日本語は今のところ非対応のためレビューなし)
・リモートコントローラー(送信機)コントロール
手のひらコントロールとモバイルアプリコントロールの機能が「気軽」かつ「ハイクオリティ」な自撮りをするための機能と言っても過言ではないので、この機能が使いたいかどうか? がDJI FLIPを選ぶポイントだと感じています。手のひらコントロールは、DJI Neoにも実装された機能で、送信機不要でドローン本体のみで、本体のサイドのボタンを押すことで、モード切り替え、長押しで離陸、手のひらをドローンの下にかざして着陸ができる、自撮りに特化した機能です。
日本の航空法では、特定飛行を行う場合は、操作に介入できることが条件なので、この機能は利用できません。特定飛行を行わない場合に利用しましょう。
▼指の場所がモード切り替え&離陸ボタン
正面のグリーンの表示がどのように飛ぶかを表示してくれます。下の画像は「ロケット(上昇しながら俯瞰で飛行)」。
モバイルアプリとの接続の場合は、スマホのアプリとWi-Fiで接続して飛行させます。
安全を確保するためにドローンの最大飛行高度は30m、最大距離は50mに制限されています。一応仮想ジョイスティックが画面上にありますが、撮影中のドローンの位置を微調整したり、ドローンを帰還させる際にのみ使用されます。できることは手のひらコントロールと似ていますが、着陸させずにスマホで飛行モード切り替えができるので、色々撮影したい場合はこちらが便利です。
DJIリモートコントローラー(スマホ接続のDJI RC-N2、N3もしくはディスプレイ搭載のDJI RC2)を使用する場合は、今までの空撮ドローンとしての用途を利用できます。アプリの画面や操作感は、今までのDJIドローンのように利用できます。
使用してみて気づいた点
・折りたたみの開閉で電源ON/OFF
広げるイコール飛ばすなので、自動で電源がON/OFF切り替わるのにはびっくりしました。細かなユーザー体験をしっかりと技術で実装しているのは流石DJIだと感じました。
・障害物センサーかガード付きかの問題
DJI FLIPにはMiniシリーズなどのように障害物検出センサーに対応していません。これはあくまで筆者の想像ですが、今回の自撮りドローンとしての使い方で、手から離着陸させる使い方をする場合、プロペラ剥き出しで操作するのは非常に危険です。そのためにプロペラガードを一体化させて安全を確保しています。また、障害物検出センサーがあると離着陸で、ユーザー自身を障害物として認識してしまうので、それも問題となります。よって、自撮りドローン=プロペラガードあり障害物センサーなしという構成になると考えられます。
・充電ハブがバッテリーふたつ同時の充電に対応
今までは、バッテリーがひとつずつしか充電できませんでしたが、DJI FLIPの充電ハブではふたつ同時の充電が可能になっています。ただ、DJI Flip Fly Moreコンボには、合計で3つのバッテリーが同梱されていますので、充電ハブでは4つまで差さるので、差し込みがひとつ余ります。
・飛行時の音が大きい
マイナス点として気になったことは、飛行時の音がプロペラガードがある機体にありがちな、飛行しているときの音が少し低い音で、耳に障ります(レビュー動画に入れているのでぜひ聞き比べてください)。
Miniシリーズ、Neo、FLIPの比較
冒頭に書いたように、自動のフライングカメラとしての進化を研ぎ澄ませた感があります。この3つの製品はそれぞれの特徴が違うので、望む用途によって選ぶ必要があります。
純粋なスペックシートの比較はこちらです。
DJI Neo | Mini 4 Pro | DJI FLIP | ||
本体性能について | 重量(バッテリー込み) | 135 g | 290g(インテリジェントフライトバッテリープラス使用時) | 249g |
本体重量(バッテリーなし) | 90g | 171g | 165g | |
バッテリー重量 | 45 g | 121g(インテリジェントフライトバッテリープラス) | 84g | |
送信機(モニター付き)重量 | 非対応、スマホをモニターとする場合、送信機重量320 g(DJI RC-N3) | 421g(DJI RC2) | 421g(DJI RC2) | |
本体、バッテリー3本、送信機の合計重量 | 545g | 949g | 922g | |
サイズ (L×W×H) | 130×157×48.5 mm | 折りたたみ時: 148×94×64 mm 展開時: 298×373×101 mm | 折りたたみ時:136×62×165 mm 展開時:233×280×79 mm | |
最大飛行時間 | 約18分 | 45分 (インテリジェントフライトバッテリープラス使用時) | 31分 | |
最大風圧抵抗 | 8 m/s | 10.7 m/s | 10.7m/s | |
最大伝送距離(日本) | 6 km | 10 km | 8km | |
内部ストレージ | 22GB | 2GB | 2GB | |
映像伝送システム | O4 | O4 | O4 | |
カメラ・映像性能について | 広角カメラ | 焦点距離:13 mm 絞り:f/2.8 センサー:1/2インチ 有効画素数:12MP | 焦点距離: 24 mm 絞り: f/1.7 センサー:1/1.3-inch CMOS, 有効画素数: 48 MP その他:2.4μmピクセル(クアッドベイヤー 4 in 1) | 焦点距離:24 mm 絞り:f/1.7 センサー:1/1.3-inch CMOS 有効画素数: 48 MP その他:2.4μmピクセル(クアッドベイヤー 4 in 1) |
中望遠カメラ | なし | なし | なし | |
望遠カメラ | なし | なし | なし | |
ジンバル | 1軸 | 3軸 | 3軸 | |
電子手ブレ補正 | RockSteady、HorizonBalancing | なし | ||
ISO感度(動画、通常時) | 100~6400 | 100-6400 (ノーマル) 100-1600 (D-Log M) 100-1600 (HLG) | 100~6400(ノーマル) 100~1600 (D-Log M) | |
デュアルネイティブISO | なし | 100、800で切り替え | 100、800で切り替え | |
動画解像度(広角の場合) | EISオフ: 4K (4:3):3840×2880@30fps 1080p (4:3):1440×1080@60/50/30fps EISオン: 4K (16:9):3840×2160@30fps 1080p (16:9):1920×1080@60/50/30fps | 4K: 3840×2160@24/25/30/48/50/60/100fps FHD: 1920×1080@24/25/30/48/50/60/100/200fps | 4K:3840×2160(24/25/30/48/50/60fps) FHD:1920×1080(24/25/30/48/50/60/100fps) 2.7K縦向き:1512×2688(24/25/30fps) FHD縦向き:1080×1920(24/25/30fps) | |
動画フォーマット | MP4 | MP4 | MP4 | |
最大動画ビットレート | 75Mbps | 150 Mbps | 150 Mbps | |
カラーモード&サンプリング方式 | ・ノーマル: 8-bit 4:2:0 (H.264/H.265) | ・ノーマル: 8-bit 4:2:0 (H.264/H.265) ・HLG/D-Log M: 10-bit 4:2:0 (H.265) | ノーマル: 8-bit 4:2:0 (H.264/H.265) D-Log M:10-bit 4:2:0 (H.265) | |
縦向き撮影 | なし | カメラ向き切り替え(4K) | 画素切り出し(最大2.7K) | |
その他 | 障害物センサー | 下方ビジュアルポジショニング | 全方向デュアルビジョンシステム | 前方:3D ToFセンサー 下方:ビジョンセンサー1つと赤外線センサー1つ |
対応送信機 | DJI RC-N3、DJI Goggles 3、DJI RC Motion 3、DJI FPV送信機3 | DJI RC-N2、DJI RC2 | DJI RC-N3、DJI RC2 |
上記ではわかりにくい、使い勝手のポイントとしては
・携帯性と重さ
・カメラとしてのクオリティ
・自動飛行などの自撮り性能
が選ぶポイントになるかと思います。
気になる点をまとめた動画がこちらです。
画質の比較、飛行音の比較、自動飛行の流れ
本体の携帯性(サイズ感)
Neo = Mini 3 Pro > FLIP(Neoは薄くて広い、Miniは厚みがあって小さい)
左からDJI NeoをFPVするときの送信機とゴーグル、DJI Neoを通常飛行する場合の組み合わせ、DJI FLIP、DJI Mini 3 Pro
広げたときのサイズ感
Neo < FLIP < Mini 3 Pro
映像の質感
Mini = FLIP > Neo
MiniとFLIPは同等。Neoは解像感が低いと感じました。スマホではなく、それなりのディスプレイで見ると、如実に差が感じられます。以下は動画から切り出した画像です。
飛行音の気になる度合い
FLIP > Neo > Mini
飛行音の大きさは上の通りでした。サンプル動画の37秒からをご覧ください。
耐風性能:実際飛行させてみた体感値
Mini = FLIP > Neo(微妙にMiniとFLIPではFLIPが若干風に弱い気がしたものの誤差)
本体のみもしくは、スマートフォン接続での自動飛行
FLIPとNeo:対応、Mini:非対応
FPVとしての飛び方やゴーグルの可否
Neo:対応、FLIPとNeo:非対応
という状況です。よって新しいDJI FLIPが、良いというわけでもないことが伝わりますでしょうか?
用途で選ぶ入門ドローンとしてどれがいい?
上記検証を結果を表にまとめると――
Mini 4 Pro | Neo | FLIP | |
画質 | ◯良い | △劣る | ◯良い |
持ち運びの大きさ | ◯厚みあるけど小さい | ◯薄いけど広い | △ガード分大きい |
FPV対応 | ×不可 | ◯可 | ×不可 |
風への耐性、画のブレ | ◯良い | △ブレる | ◯良い |
自動自撮り機能 | △新機能に非対応 | ◯新・旧機能対応 | ◯新・旧機能対応 |
スマホもしくは本体のみでの飛行 | ×不可 | ◯可 | ◯可 |
まとめ | 小ささと画質重視。The空撮の用途オンリー。自撮りはあまりしない人向け。 | 小ささと多機能&FPV優先。画質と風に弱いのは妥協してOK。 | 画質も自動飛行もバッチリ。ガード分大きいのはしょうがない。 |
1.画質も気にしつつ空撮を気軽にしたい場合
・Mini 4 Pro
荷物は小さいほうがいい。
・FLIP
自撮りの自動飛行が気軽にできてプロペラガードもついている。ただガードの分荷物の面積が少し大きい
2.自撮りカメラにしたい場合
・DJI Neo
カメラの質よりとにかく小さい方がいい。風には弱い。
・DJI FLIP
多少大きくても、カメラの質が高く、風に強い。
3.FPVで空撮したい場合
・DJI Neo1択
ゴーグルおよび専用送信機に対応、FPVっぽい動きができるMモードにも対応
まとめ
新たに登場したDJI FLIPは、DJI Neoのような自撮り機能を持ちつつ、カメラのクオリティをMiniレベルにUPさせたいいとこ取りのドローンとして仕上がっています。前述したようにFPVをしたいならNeo、自撮りをしなくてもっとコンパクトがいいならMiniとそれぞれの用途に合わせたドローンデビューのきっかけになるのではないでしょうか?
DJI FLIPの製品情報
【ドローン飛行ルール・機体登録について】
ドローン飛行ルールについて、ドローン飛行する人全員にとって、資格や飛行許可申請が必須なわけではありません。ドローン飛行する人にとって必須なのは「ドローン登録」です。しかし、ドローンの登録プロセスも、ポイントを押さえれば簡単です。
航空法に定められた100g以上のドローンを飛行するにあたって、必ずしなければならないことは―――
①機体登録 ②登録記号の表記 ③リモートIDの機体へのインポート
まずは、DIPS 2.0で機体登録申請を行い、登録費用を支払います。その後、発行された登録記号をシールなどで機体に表示。最後に、DJIドローンであればDJI Flyアプリを使用して、リモートIDを機体本体にインポート。リモートIDは車のナンバープレートのようなもので、個人情報は含まれません。
登録・リモートIDのインポートが完了したら、早速飛行の準備です。飛行準備では、まず、ドローン飛行したいエリアや方法に問題がないか確認しましょう。
こちらのページの「特定飛行に該当する飛行」に、飛行したいエリアや飛行方法が該当していないか確認しましょう。該当している場合は、別途飛行許可・承認手続きが必要になります。飛行したいエリアや飛行方法が「特定飛行に該当する飛行」に該当していない場合、原則、航空法的には飛行可能です。ただし、飛行エリアの土地の管理者(所有者)が飛行を制限している場合もあるので、そちらの確認も忘れずに。
ドローンを購入したら、まず「機体の登録」「登録記号の表記」「リモートIDの機体へのインポート」の3ステップを行いましょう。ドローンを飛行する前には、「飛行エリア·方法に問題がないか」「飛行エリアの土地管理者の飛行制限の有無」の2点を確認しましょう。これらのポイントを押さえて、楽しく安全に飛行しましょう。