昨年のInter BEEで参考展示され話題を集めていたニコンの動画撮影向けパワーズームレンズがついに発売された。そこで気になるのが以前から発売されている同じ焦点距離・絞り値を持つソニーのパワーズームとの比較。今回はふたつのレンズを実際に使い比べてレポートしていく。

テスト・文 羽仁正樹(Saha Entertainment)
家電量販店ディスプレイやカメラメーカーのデモ映像制作、TVCM 向けの映像を手掛ける。8K 撮影をスタンダードとしており、日本の絶景、都市空撮、都市風景の映像を世界に向け発信中。使用カメラは、REDのHELIUM 8K S35 やニコンZ9、ソニーα1、FX3、Qoocam3 Ultra、DJI Avata2、GoPro など。過去に使っていたカメラはキヤノンEOS R5、ブラックマジックデザインBMPCC 6K、パナソニックGH5S。カメラ、ガジェット好き。
ニコンからNIKKOR Z 28-135mm f/4が4月25日に新発売されたので、ソニーが以前から発売しているFE PZ 28-135mm F4 G OSSと比較してみた。
まず寸法はニコンが105×177.5mm ソニーが105mm×162.5mmとニコンのほうが少し大きい。重さはニコンが約1120g(三脚座なし)ソニーが1215g(三脚座なし)とニコンのほうが少し軽い。最短距離撮影に関しては、ニコンのほうが全焦点距離で寄れるようだ。
それぞれのレンズの最短撮影距離
ニコンNIKKOR Z 28-135mm f/4
• 焦点距離28mm時:撮像面から0.34m
• 焦点距離35mm時:撮像面から0.34m
• 焦点距離50mm時:撮像面から0.34m
• 焦点距離70mm時:撮像面から0.39m
• 焦点距離85mm時:撮像面から0.43m
• 焦点距離105mm時:撮像面から0.49m
• 焦点距離135mm時:撮像面から0.57m
ソニーFE PZ 28-135mm F4 G OSS
0.4(W) – 0.95(T) m (AF/MF)
0.95m (Full MF)
さて、肝心の画質に関してだが、2025年4月25日発売のNIKKOR Z 28-135mm f/4と2014年12月19日発売のFE PZ 28-135mm F4 G OSS。10年の差がどう画質に現れるのだろうか?
結論から言うと、全焦点距離でNIKKOR Z 28-135mm f/4がFE PZ 28-135mm F4 G OSSより圧倒的な画質で優っていた。
今回カメラはニコンZ9を使用して、8K/24p NRAWで撮影している。8Kは3,300万画素あるので、10年前のレンズにはいささか荷が重かったようだ。細かく見てみよう。

広角側28mmで撮影比較
50インチの有機EL4Kモニターで見ると、画面中心はFE PZ 28-135mm F4 G OSSも頑張っていると思うが、よく見ると画面中心も周辺部も圧倒的な解像度の差を感じる。2枚くらいシャープネスを落とすフィルターが入っているのではと思うくらい差を感じた。


50mmで撮影比較
ソニーは10年前に発売された製品ではあるので、致し方ない部分もあるとは思うが、やはり28mmと同様で画面中心も周辺も圧倒的な解像感の差を感じる。正面の窓や、手前の緑の木々なども、くっきり写っているNIKKOR Z 28-135mm f/4と比べてFE PZ 28-135mm F4 G OSSはだいぶ劣る。


望遠135mmで撮影比較
28mmと50mmと同様で画面中心も周辺も圧倒的な解像度の差を感じる。モニターで見ると正面下の駐車禁止の看板や画面右側のエレベーター上にある屋根の際などはわかりやすかった。また、広角では気づかなかったが、FE PZ 28-135mm F4 G OSSはパープルフリンジなども見られる。おのおの画像をクリックして原寸大にして比較してみてほしい。


ズームリングの滑らかさや、フォーカスリングに関して
次にズームリングとフォーカスリングの操作性をチェックしてみた。
ズームリングはNIKKOR Z 28-135mm f/4のほうが回しやすく、意図したところでズームがピタッと止まる感じだ。FE PZ 28-135mm F4 G OSSはトルクが若干重くズームリングを止めても、少し遅れて止まる所が、とても気になる。
逆にフォーカスリングに関しては、NIKKOR Z 28-135mm f/4のほうがトルクを感じ、FE PZ 28-135mm F4 G OSSのほうが軽い印象を受けた。フォーカスに関しては、トルクがあるほうが使いやすかった。
FE PZ 28-135mm F4 G OSSには焦点距離や絞りなどの数値がレンズ自体に記載されてあるので、視認したいユーザーには嬉しいポイントである。



まとめ
ユーザーの意識からすると、ボディを買い替えることはあっても、持っている焦点距離のレンズを買い替えることは少ないと思う。映像の画作りとしてフレアや収差が味わいになることももちろんあるのだが、筆者としてはより解像感が高く、収差も少ないレンズが好きなので、今回のテストを通じて、10年前のレンズ性能から改めて最新レンズの進化を感じることができて胸が高鳴った。