RAINBOW HALOは被写体を包み込むような渦巻き状のボケで主役を際立たせるレンズフィルター。今回は、このフィルターをウエディングムービーの現場で活躍する榎本 駿さんに実際の現場で試してもらった。

レポート●榎本 駿(えのもとしゅん)
1993年4月6日東京生まれ。駿河台大学メディア情報学部を卒業後ビデオグラファー/ディレクターとしてシネマティックデイズへ入社。ベトナム・ダナンにて映像制作講師も担当。シネマティックデイズWEB
RAINBOW HALOその名の通り、オールドレンズを思わせるようなゴーストを作り出し、幻想的な画を簡単に作り出すことのできるフィルターでした。私は普段、ブライダルムービーに携わることが多いのですが、式の準備から式の間、撮影・編集を行い、式の終わりに映像を上映する「撮って出しエンドロール」の映像に携わっています。限られた時間の中でひとつの作品を作らなければいけません。そんななかで、こうした簡易的でありながら一発で世界観を伝えられるフィルターは大きな武器となります。
RAINBOW HALOは、一日の撮影の中で常に使用するものではありません。視覚効果として使用するものだと思います。このフィルターを使用した画が入るだけで見る人の目をひく映像を作ることができると思います。

フィルター径は82mmと比較的大きく設計されています。ステップアップリングを使用して撮影しました。

また、メーカーサイトには製品情報として記載がなかったため、実際に測定してみたところ厚さは1.5cm、重さ120でした。フィルターとしては大きく感じられる方がほとんどだと思います。
撮影実践
こちらは実際にブライダルの現場で撮影した例となります。1カット目は「暗所で指輪を順光にてライティング」。2カット目は「同条件で、逆光にてライティング」。3カット目は「光源が入らない状況で撮影」。4カット目は「強い光源を入れて撮影」したものです。レンズの焦点距離は50mm前後。絞りはF4で撮影しています。
50mmよりも広角で撮影すると、歪みや渦巻き状のボケが大きくうつり、中心部だけがくっきりと映ります。望遠で撮影すると、歪みの効果はなくなり、オールドレンズのフレアのような現象が発生します。もちろんさらに広角に、さらに絞り値を開放に近づけていくことで、効果はより大きくなりますが、1枚の写真であれば、RAINBOW HALOの特性を活かして、いろいろな表現を楽しむ撮り方もありだと思います。しかし、ウエディングムービーとして、ひとつの作品を作り上げることを考えると、RAINBOW HALOの効果は控えめにしておくと、作品にも違和感なく馴染んでいってくれるだろうと考えました。


1カット目と2カット目の同条件での順光・逆光ライティングについて


暗所かつ、指輪自体が光を反射して光源となっているため、ある程度のゴーストリングのようなものが発生しました。ただ逆光のほうが分かりやすくリングが発生したことと、ゴーストリング自体も徐々に円が発生していく形は非常に幻想的でした。私は日頃のウエディングムービーでも、こうした指輪のカットを作品に取り入れてきましたが、RAINBOW HALOを導入したことで、より指輪の輝きを増して感じられます。また、RAINBOW HALOが中心の被写体をしっかりと写し、周辺を幻想的に歪ませるという特性があるため、指輪だけを映すというよりも少し引き気味のサイズで撮影しました。そこで空いた空間にRAINBOW HALOの効果が表現されていきます。個人的にはその余白を使って表現されていく様はとても気持ちが良いと感じました。
3カット目の最も効果が小さかった花びらのカットについて

このカットは、薄くやわらかい外光が入る状況で、真っ白な台紙の上に置かれた花びらを撮影したものです。光源もなければ、花びら以外のものがないため色味も少ない環境下でした。それゆえにRAINBOW HALOの効果が大きく表れたわけではないのですが、私は個人的にこのカットは好きでした。じっくりと見てもらうと花びらと同じ色の皿の上に置いたような、水彩画タッチの薄い円形が周辺に表れているかと思います。これがあるとないとでは、余白の温かみが全く違ったのではないかと思いました。一見派手な効果を出すフィルターのように思われていましたが、実は状況に応じてやわらかく、あたたかい表現もできると知れた、RAINBOW HALOの可能性を膨らませてくれたカットとなりました。
4カット目の最も効果が大きかった街灯カットについて

最もRAINBOW HALOらしい恩恵を受けたのは、このカットでした。要因としては、強い光源と周辺に木々の背景があったことでより、その効果が分かりやすかったというところだと思います。画面右上の部分は、本来森林の影が落ちて暗く落ちていたはずが、大きなゴーストリングが発生したことで、全体を明るく演出してくれています。そもそも演出として、森林の影の部分を出したかったのか、ぼかしたかったのかというのは別の話となりますが、ぼかすことができるという選択肢が生まれるだけでも表現の幅が広がります。
全体を通して
メーカーの製品紹介サイト内にも「余計な被写体をぼかす」というワードがありました。また私自身も上の4カットの解説の中で「余白」「ぼかす」というワードを自然に使っていたことに気づきました。
「余白」を使い「余計な被写体をぼかす」ことで「被写体に吸い込まれるように表現する」というのは、このフィルター使用時に重要な意識となっていきます。被写体に視点を誘導しながらも、周辺視野にRAINBOW HALOの効果を感じさせてその幻想的な世界観に没入させていく。
今もうひとつ、作品に自分らしさを加えたいというクリエイターには大きな武器になるフィルターになるでしょう。