ライブプロダクションに関わるユーザーの間で、コストパフォーマンスの高さから話題を集めていたOsee(オーシー)のスイッチャー。以前からアマゾン等で購入できたが、今年6月終わりに銀一が国内総代理店となり、サポート面でも期待が持てるようになった。実際のところ、その性能はどうなのか? 日頃からライブ配信に携わる秋葉原ベストセラースタジオのみなさんにテストしてもらい、使用感をレポートしてもらった。今回は、HDMIに加え、SDI、USB Type-C、NDIでの入力が可能なOsee GoStream Duet SDIをベースに組まれたオールインワン配信キット・GoStream Duetをテストしていただいた。

レポート●秋葉原ベストセラースタジオ鳥居

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ライブ配信を手掛ける経験者の方の多くが「もっと手軽に、もっと高品質な配信をしたい」という共通の課題に直面します。その実現にあたり、様々なスイッチャーが選択肢に入りますが、機能を充分に活用するためにはPCやタブレットなどの外部機材が必須だったり、メニューの複雑さが課題となってしまう場合が多くあります。また、必要な機材数が増えると当然、運搬する機材の数も量も加速度的に増えていきます。ワンオペでの現場も珍しくなくなってきた昨今、交通手段や運搬費用に縛られるのは大きな負担となります。

そんな中現れたのが「Osee GoStream 」シリーズです。コンパクトな本体ながら、多くの機能を内蔵したスイッチャーとして注目されました。今回は、同シリーズから、ハードケースとディスプレイなどがワンセットに収められた「GoStream Duet Kit」についてレビューしていきます。

 

置き場所に困らない機能的なケース

GoStream Duet Kitの最大の特徴は、スイッチャーとして最低限欲しいものがこのコンパクトなケースひとつにまとめられていることです。スイッチャー本体に加え、マルチビューモニター・空冷ファンが内蔵されています。

モニターの持ち運びや設置場所、空ケースの置き場など、撮影や配信の経験者であればみんな頭を悩ませたことがあるかと思いますが、こちらであればケースを置いて開けるだけ。設置を短時間かつ省スペースにまとめ、即座に作業へ移ることが可能です。

また、本体上部から出ているUSB Type-Cケーブルにモバイルバッテリーなどを接続することで、そちらからも電源をとることが可能です。

モバイルバッテリー電源のみで本体、マルチビューモニター、ファンすべて起動確認。

ちなみにUSB Type-C電源アダプタによる給電・起動も確認できました(写真のAnker電源タップではPD側の端子で起動確認、iQ側端子では起動せず)。モバイルバッテリーでの運用により、屋外や電源を取りにくい場所など、使用環境に縛られることなく多彩な運用ができます。既存の電源との冗長化も可能です。

 

ケースごと三脚に固定できる

ケース本体の側面・底面にチーズプレートがついているため、三脚や各種スタンドにねじ止め固定することができます。

屋内の限られたスペースや屋外など、場所を問わず設置できるよう設計されています。ケース一体型、モバイルバッテリー駆動、ネジ穴プレートなど、総じてワンオペでの現場や屋外など、限られたスペースを最大限活用できるようつくられているものと思われます。

 

コンバータ不要でSDI/HDMIソースどちらも入力可能

ここからはGoStream Duet SDI本体の機能について書いていきます。このスイッチャーの大きな強みのひとつが、SDI・HDMIどちらも入力可能な点です。合計で最大4入力接続することが可能です。
※対応信号は1080p/23.98、25、29.97、30、50、59.94、60

入力はSDIとHDMIを4本ずつ接続可能で、入力1〜4それぞれにSDI・HDMIいずれかを排他利用する形になる。

単体のスイッチャーとして発売されているGostream Deck Duet SDIでは、本体サイズの都合かSDI入力が側面に追加される形になっていましたが、この「GoStream Duet Kit」ではケース背面に整列されてわかりやすくなっています。

 

簡略化されたセットアップ

ケースの電源を入れてから、マルチビューモニター・本体の起動まで10〜20秒ほど。時間との戦いになるライブ配信の現場でこの起動の速さは大きなアドバンテージになります。

まずほかのスイッチャーと比較して驚くのは、セットアップのシンプルさです。ひとつの入力に対して、複数の種類の接続端子を備えるスイッチャーの場合、たいていはCh1はSDI、Ch2はHDMIなどとどの接続をどの入力にとひとつひとつ選択する必要がありますが、GoStream Duet SDIの場合は接続さえすれば即座に認識してくれます(デフォルト設定ではSDI優先で認識され、SDIが挿さっていない番号のHDMIが認識される。優先度を変更することも可能)。事前設定せずとも即座に接続可能な点は初心者にもわかりやすいと思います。

 

外部アプリでのコントロール

外部PCと共有ネットワークで接続することで、専用のコントロールアプリ「GoStream Software Control」が使用可能です。

Windows版
Mac版

PCアプリでは、Keyerの配置やクロマキーの設定などの際、画面上でドラッグしての位置変更ができたりと、より直感的にコントロールすることが可能です。

 

UVC接続、NDI HX入力が使用可能

また、これはスイッチャーとしても珍しいと思われますが、USB接続でのWEBカメラ認識、NDI入力を標準機能で受けることが可能です。本体へUSB Type-C接続、LAN接続するだけで入力が受けられます(動画プレイヤー・UVC・NDIはいずれか選択して排他使用、途中で変更も可能)。NDIはHX2までの対応となる。

マルチビューのメニュー画面より。AUXソースで選択できる

外部変換なしに使用できるカメラの選択肢が増えるのはとてもありがたいです。また、逆にUSB Type-CからUVC出力も可能です。ZoomなどのWEB会議・WEBカメラアプリと併用することができます。

 

本体録画可、配信は3ストリームまで同時配信可能

昨今のライブ配信向けスイッチャーに求められる機能として、本体録画や配信機能が考えられますが、このGoStream Duetにももちろん搭載されています。ケース前方にSDカードを挿入することで内部録画が可能です(録画品質はLow、Medium、Good、Highと4段階。配信も同様)。さらに配信については同時に3ストリーミングに同時配信可能です。帯域には注意が必要ですが、ハードウェアエンコーダーでもなかなか見かけない機能であり、この選択肢が拡がることはとても大きいです。

 

ME機能も搭載

スイッチャーとしてはKeyer機能が含まれており、PinPレイアウトが可能です(Keyerは1レイヤーのみ)。クロマキー・ルマキー機能も搭載されています。また、ブラックマジックデザインのATEMシリーズ と同名の合成機能「SuperSource」も搭載しています。コンパクトな筐体ながら様々な運用が可能です(※ただし、ATEMのSuperSource機能とは別物と言わざるを得ない点がありますので後述します)。

 

Keyer機能

PinPの画面。全画面入力+ワイプで構成。画像は比率25%・右下ワイプのレイアウト。サイズは固定だが位置は自由に設定可能

コンパクトな本体ながらKeyerも備えている本機ですが、その分オミットされている部分もあります。Keyer合成時、映像入力のリサイズが可能ですが、サイズは50、33、25%と、指定された倍率にだけ対応しています。ただ、XY配置とクロップは任意の数値が設定可能なので、ある程度は柔軟なレイアウトが可能です。

 

クロマキー機能

それほど追い込める設定はないが、それでも充分に使える精度

 

Super Source機能

ある程度決められたレイアウトではあるが合成画面がつくれる。【左上】背景(各映像入力も指定可能)+2入力 50%サイズ・横並び。【右上】背景+2入力・左クロップワイプ横並び。【左下】2入力クロップ横並び。【右下】背景+2入力・右クロップワイプ横並び。


また、SuperSourceと名付けられた機能については、2入力かつ上の4つの決められたレイアウトのみ可能となっています。ATEMのSuperSourceは、最大4つの映像ソースを自由にレイアウトできるので、同じ機能名ではあるものの、OseeのSuperSourceにはやや制限があります。調整可能なのはY(縦)配置と、2入力のクロップ範囲の調整のみとなります。背景などつくりこんだ上で自由にレイアウトを作りたい、という場合には向いていない機能となっていますが、最低限欲しいレイアウトは揃っているため、簡易的な選択肢に入ると思われます。

 

その他留意点

音声、特に外部入力については最低限の機能に抑えられており、各映像入力からのエンベッド、またはステレオミニでの外部入力となります。

なお、映像出力についてはHDMI出力1本のみとなっています。単体で発売されているGoStream Duet SDIモデルではHDMI2本でしたが、Kitではうち1本をマルチビューに使用しているためです。基本的にスイッチングから録画、配信まで本機のみで完結させるつくりになっています。バックアップ録画でSDI出力が欲しい場合は別途変換が必要です。

GoStream Duet Kitの背面端子
スイッチャー単体として発売されているGoStream Duet SDIの背面端子

 

まとめ

最後にGoStream Duet Kitについて、ほかのスイッチャーと比較してのメリット・デメリットをまとめました。

<メリット>
・オールインワンで手軽に運用可能
複数の機材の機能が搭載されているため、セットアップも撤収もスピーディー
・PCレスで配信も可能
ATEM MiniはPCとの連携が必須ですが、GoStream Duet KitはPCレスでライブ配信を完結させることができます。これにより、PCトラブルのリスクを回避し、機材の運搬もよりコンパクトにできます
・圧倒的なコストパフォーマンス
ほかスイッチャーと比較してもなかなか見られない多機能性が、廉価な価格帯に凝縮されている
・接続・セットアップが簡易
複数入力可能ながら接続は簡易と、経験者にとっても初心者にとっても使いやすい
・合成レイアウトが可能
最低限欲しいレイアウトが揃っている
・UVC接続、NDI入力が可能
外部入力が合わせて5入力使用可能
・録画&配信も本体で可能
内部録画、さらに配信は同時に3ストリーム同時配信が可能

<デメリット>
・合成レイアウトが限られている
背景素材を作り込んで自由に配置する、などといった運用はできない
決められたレイアウト内で済ませられる配信向き
・出力はHDMI1本のみ
基本的にこれひとつで録画・配信まで完結させるつくりとなっているためか、外部出力機能は最低限に収められている
バックアップが必要な場合は各種コンバーターなどが必要になる
・インターレース信号は対象外
プログレッシブ信号にはひと通り対応しているが、インターレース信号については変換が必要になる
(認識はしても映像が荒れてしまう)

「GoStream Duet Kit」は、スイッチャー、エンコーダー、レコーダーを個別に揃えることを考えれば、本機が提供するオールインワンの価値は計り知れません。特に、これから本格的な配信環境を構築したいと考える中級者にとって、予算と手間を大幅に削減できる最適な選択肢と言えるでしょう。そのコンパクトな筐体に大きな可能性を秘めています。ライブ配信の「新しい相棒」となるスペックを充分に備えている製品ではないでしょうか。昨今の人員・機材の省力化が求められる現場でも強い味方になってくれるでしょう。

 

Osse「GoStream Duet Kit」を囲んで体験会をしました。プロの業務に当たっている方も興味津々でした。

 

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