REPORT◉丁 龍海(R&Y Factory)

 

ビデオサロン2020年1月号付録より転載

 

 

「映像」というお仕事は撮って編集するだけではなく、現場で映像を切り替えてスクリーン出しや中継、配信などがある。この作業はスイッチャーなしではできない業務。その範囲は広く、セミナーやライブなどジャンルを問わず様々である。最近はYouTube Liveなども多くなってきている。機材面においては、スイッチャーは価格帯も下がり、誰もが手軽に操作することもできるようになった。今回はその実例をいくつかご紹介し、スイッチャーでできる業務の実務をお分かりいただければと思う。

 

【ケース①】2会場のセミナーでの収録

メイン会場(A会場)は3カメ3PC入力のため、V-60HDを導入。PC2台はタイトルスライドや映像資料のため、HDMIで接続。PC1台は登壇者が使うため、HDMIをVC-1-SCにてSDIに変換して長く引き回してきて入力。SDI4系統、HDMI2系統をフルに接続している。

音声は、会場音響卓からの入力だが、スイッチャーやカメラに振り分けたいので、ローランドのR-88を使用した(音声のバックアップにも使用)。スイッチングアウトの映像はATOMOS SHOGUN FLAMEに記録する。

出力が、会場スクリーン上映、登壇者への返しモニター、セカンド会場(B会場)へのサテライト、インターネット中継の4系統必要であり、AUXへの振り分けによって、分配器を使わなくてもSDI2系統、HDM2系統の出力できる。AUXのスイッチングの操作には少しばかり慣れが必要だが、2台分のスイッチャーの役割をしてくれる便利なシステム。

B会場は2カメのみの切り替えなので、コンパクトなV-02HDを導入した。2カメスイッチングをワンマンオペするため、フットスイッチで対応。音声は、会場音響卓からの入力だが、スイッチャーやカメラに振り分けたいので、コンパクトなZOOMのF8nのミキサーを使用。F8nはミニステレオフォンのサブアウトから+4dBuが出力されるので、V-02HDのミニステレオフォンに変換なしで対応。サイズ感も同じで綺麗にコンパクトにまとまった。

 

【ケース①】2つの会場のセミナーをV-60HD、V-02HDを利用してマルチカメラ収録

▲メイン会場(A会場)に6ch映像入力とタイトルや静止画などの2ch、合計8ch切り替えられるV-60HDを入れた。映像スイッチャーとして最適。

 


▲A会場は後方に3台のカメラを設置。PC入力は合計3つでV-60HDとSDIとHDMI入力はフル活用している。プログラムアウトはSHOGUN FLAMEで記録。音声は、会場音響卓からR-88に入力。音声のバックアップにも使用。



▲A会場の登壇者のPCの画像はVC-1-SCでHDMIからSDIに変換しブースまで引き回した。

 



▲セカンド会場(B会場)にも映像音声を送り、こちらでも2カメをスイッチング。そのためにV-02HDを入れた。音声はこちらも会場音響卓からのものを利用。ZOOM F8nを利用してカメラとV-02HDに振り分けた。

 


▲V-02HDのスイッチングはカメラマンが行うため、V-02HDと連動するBOSSのフットスイッチを用意した。

 

 

【ケース②】セミナーをライブ配信

次に1会場内でPC3台、カメラ2台、マイク4つ、PC音源を入力した事例。PCやカメラ映像が全部で5系統のため、最初V-60HDを検討したが、音声ワークが容易なVR-50HD MK IIを用いた。映像が4系統しか入力がないのは残念だが、カメラの2系統をV-02HDでスイッチングを行い1系統に集約してそれを補った。VR-50HD MK IIでは音量調整をフェーダーで調整するので、音響を同時に対応する場合にはとても扱いやすい。普段使うV-60HDの本体ではダイヤル式ということで、とっさの時に反応が遅れたりしてしまう(*1)。音もオペレーションする必要があるときには、VR-50HD MK IIが最適なシステムだ。

*1:純正ではないがV-60HDに対応したフェーダー、トモカ電気TMF-08-Rがある。

 

【ケース②】セミナーのライブ配信でVR-50HD MK IIで音声も一緒に管理

▲VR-50HD MK IIを利用することで、音響、映像卓がこのようにコンパクトに収まるので、狭い現場にも対応できる。

 

▲VR-50HD MK IIの音声ミキサー部。音量調整などは、フェーダータイプが使いやすく、細かな調整もしやすい。

▲VR-50HD MK IIのすぐ後ろに薄型モニター+スタンドをこのように使って、ケーブルの抜き差しが楽なようにした。

 

 

【ケース③】4台のカメラでライブ中継

そして最後に、4台のカメラでのライブ中継の事例を紹介しよう。音源に関しては調整された音源がPA卓からもらえるので、いつもの映像スイッチャーでも問題ないが、今回はVR-50HD MK IIに内蔵されたUSBストリーム機能を使っての配信を行なった。別途エンコーダーを用意する必要がなく、パソコン側はUSBカメラとして認識するので、負荷も少なくシステムの簡素化ができる。現場で、スイッチャー、コンバーター、PCのどれが悪いのかを探すトラブルもなくなり、リスクヘッジしたシステム構築ができる。

スイッチャーを扱うのにSDIやHDMIの出力は数が多いほど便利。別途スプリッターを設けなくても良いので、電源の確保や設置、撤収の時間も短縮される。

実際、VR-50HD MK IIでライブ配信業務を行なってみて気がついたのが、音楽ライブにおいてTバーがあれば曲の雰囲気に合わせて切り替えのタイミングをマニュアルで調整できるが、そもそもTバーがないので、一定の切り替えしかできなかった。演出までを考慮するならTバーの備わったスイッチャーが良いだろう。VR-50HD MK IIは音楽ライブもいいが、どちらかというとトークショーやセミナーといった現場に最適ではないかと感じた。

【ケース③】音楽ライブをカメラ4台で撮影してYouTube Liveに配信するシステム

▲VR-50HD MK IIのUSB端子は3.0と2.0の両対応だが、配信転送を考慮すると3.0のケーブルでの運用をお勧めする。

▲VR-50HD MK IIにはタッチパネルモニターが装備されているが、視野角も狭く、角度調整できないので着席の場合は別途モニターを用意したほうが良い。



▲カメラマンへの返しモニターにIDX CW-1dxを使えば、配線や電源確保などの手間がなくなる。返しモニターのスマートフォンの電源は、VバッテリーのUSB電源を確保

 

 

様々な機能を持つスイッチャーがある

ローランドのスイッチャーには、様々な機能を備えたモデルが存在する。V-600UHDは、4Kからトリミングしてスイッチングできるようになっており、利便性が高い。対談やセミナーなどそれほどカメラワークがない現場では、4Kカメラさえあればトリミングして8chスイッチングができる。

V-60HDには「スマートタリー」といった機能がある。これはスマートフォンがタリーの役割をしてくれるもので、現場では助かる無線式システム。

VR-1HDやVR-50HD MK IIでは、「ビデオ・フォロー・オーディオ・モード」といった、音声に合わせて映像をスイッチングしてくれる便利な機能がある。

また、V-60HDやVR-50HD MK IIではLAN経由でパナソニックやJVCのPTZカメラを専用コントローラーなしで直接制御することができる。

このようにスイッチャーには様々な特徴がある。その特徴を生かし、使い勝手に合わせて選ぶのが大切だ。

ローランドのラインナップで言うと、VシリーズとVRシリーズに分かれる。VシリーズはTバーが備わり、映像のスイッチング機能を重視していると思って良いだろう。一方VRシリーズは、オーディオミキサーにフェーダーを用いて、オーディオ部分を強化している。また、USBストリーム機能も採用し、ネット配信でのワンマンオペレーションの手助けをしてくれる。この両タイプは甲乙付け難く、映像スイッチングをオペレーションの中心にするなら「Vシリーズ」、映像と音の両方のケアが必要な場合は「VRシリーズ」と考えればよい。つまり、どのようなワークスタイルかによって選択するといいだろう。

 

 

VIDEOSALON 2020年1月号より転載