ソニーイメージングギャラリーは、7回目となる映像作品展を黒田教裕/Hidetoshi Koizumi・Ryuta Tomiyama/スギノユキコ/中山莉瑠映像作品展『G. F. E. G. 』を11月7日~11月20日に開催する。

映像作品展は、公募で15分以内の短編映像を募集し、ギャラリー側で出展者をマッチング、グループ展として開催。例えば2022年に開催した『衣斐 明 / 谷+1。/ 趙 可人 / 福田 健太郎 映像作品展 The Flow of Time and the Wind』では風景や季節の移ろい、そして生き物に焦点をあてた作品が集まっていた。これまではそのように同じ回の出展者の作品には何らかの共通する点が存在してきた。

しかし今回の『黒田 教裕/Hidetoshi Koizumi・Ryuta Tomiyama/スギノ ユキコ/中山 莉瑠 映像作品展 G. F. E. G.』では、4組の作品に特に明確に語れる共通点のようなものは見出せないという。それぞれの作品は鑑賞者の中に様々なキーワードのような言葉や、何かの感覚を思い浮かべさせることだとしている。



出展作品・作者

■黒田教裕
『光凪  ―Quiet Shine―』
『the Ray of Waves』

©黒田 教裕

海の光と波は、絶えず繰り返されながらも二度と同じ姿を見せることはありません。映像はその一瞬を留め、何度でも同じ時間を再現することができます。変化し続ける自然の景色と、固定化される時間。その矛盾のあわいを見つめることによって、映像がもたらす新たな体験が生まれるのではないでしょうか。今回は、海と時間の関係を探る二つの作品を出品します。

光凪  Quiet Shine

広島県三原市・小佐木島周辺の海を撮影した映像作品です。日が昇ってからのわずか二時間ほど、陽光を受けて海がきらめき、時に滑らかに、時に強く輝く姿を見せます。その変化は毎日繰り返されながらも、波や空の状態によって決して同じにはならず、人々の営みを乗せた船の動きと重なり合います。

ピアノとチェロによる演奏は、光の粒子や波のゆらぎを音で描き出し、瀬戸内海の凪の時間をより豊かに響かせます。移ろいゆく光景を映像と音楽で結び、儚く過ぎ去る瞬間を永遠の時間として留めました。

the Ray of Waves

岡山県倉敷市・下津井沖の松島にある旧分校の美術館で制作した作品です。港の海面に反射する夕陽が窓を通して室内に差し込む光景は、この地に滞在しなければ出会えない特別な瞬間です。

波が刻むリズムと光の軌跡を重ね、かつてこの分校に通っていた子どもたちの記憶や時間と、いまここに流れる静かな風景とを結び合わせることを目指しました。

黒田教裕(くろだみちひろ)プロフィール

1987年宮崎県生まれ。武蔵野美術大学造形学部映像学科を卒業後、フリーランスの映像エディターとして活動し、Web CMなどの広告映像や展覧会映像の編集を手がける。2016年より尾道市立大学美術学科に着任、現在は准教授として映像デザイン領域を担当している。

近年は海景を撮影し、その映像をもとに「時間の視覚化」をテーマとした作品制作や、映像インスタレーションによる展示を中心に活動している。

主な展覧会歴に、Media Ambition Tokyo 2014(六本木ヒルズ・東京シティビュー)、CHANGWON ASIA ART FESTIVAL(韓国・昌原、2016)、「物質と記憶」のトレモロ(三原市芸術文化センターポポロ、2022)などがある。


■Hidetoshi Koizumi・Ryuta Tomiyama
『Not all who wander are lost.
うろうろしているように見えても迷っていないこともある』

©Hidetoshi Koizumi・Ryuta Tomiyama

後ろは振り返らない。日々前を向いて歩いている。しかし、人生が前に進んでいるかはわからない。「本当に前に進めているのか」と確認すればするほど、不安になっていく。それでも、歩みを進めてしまう。まるで目的地が見えているかのように。何かから逃れるように。私たちの足取りに迷いはない。道の終わりに何が待っているのかは、わからないのに。

Hidetoshi Koizumiプロフィール
フランス・日本で活動するエレクトロニカ・アンビエントの作曲家・編曲家。2010年にフランスのUltimae Recordsと契約。以降、フランス、ハンガリー、ドイツ、日本でライブ活動を行う他、ファッションブランド、映画、広告(CM)、プロジェクションマッピング、ゲーム音楽への楽曲提供も行っている。日常のふとした光景や人々の動きを眺めることで得られるインスピレーションをシンプルな音にして表現することを試み、それが聴いてくれる人の様々な生活シーンの一部になってくれることを常に願い楽曲制作を行っている。

Ryuta Tomiyama プロフィール
メディアアーティスト/VJ。テクノロジーを駆使したモーショングラフィックスとリアルタイム・データビジュアライゼーションを得意とし、「その場で生まれた音・動き・脳波・環境情報を取得し、その場だけの映像へと変換する」手法でライブ演出を行う。2023年に以降、個人での作品制作活動を始め、2024年からは電子音楽家の「HIDETOSHI KOIZUMI」とコラボレーションを開始。ライブステージでの映像演出やミュージックビデオ制作、アート分野での作品提供を行っている。



■スギノユキコ
『すきとおる.』

©スギノユキコ

難病となり、徐々に、できていたことができなくなっていく日々の中、紡いだものです。
この時、この先も変わらず生きていくということを想像できなかった私には、
それまで生きてきた自分を紡ぐということは、必要な作業だったのだと思います。


昨日も、あの日も、今日になり、すべては繋がっている。
毎日何かを探して、幸せになろうとしていた自分。
そう、不幸になろうとした日なんて一日もない、と安心する。

ミラノでこの映像を観た女の子が、泣きながら、
「私のお母さんもあの時、こんなに悲しかったんだ」と言いました。
私は、「そうか、私もあの時、悲しかったんだ」と気付きました。
女の子に「気付かせてくれてありがとう」と言いました。

誰にでも、今日まで生きてきた自分がいます。
どんな昨日も、どんな明日も、やはり全て自身であり、それはこれからも変わらない。

どうか、しんどい時は、生きてきた自身を紡いでみてください。

スギノユキコ プロフィール
1970年生まれ。神奈川県川崎市出身。三人姉兄の末っ子。
3歳よりモダンダンスを習い、日本女子体育短期大学舞踊科を卒業。独学で写真を学び、
雑誌等でポートレートを撮る。約10年のブランクの後、iPhoneでインスタを始め、写真を再開。

展覧会
2023年 3月  横浜 関内駅チカギャラリー 「 1号室のミドリガメ 」
2023年 4月  大阪 galerie SPUR 「 1号室のミドリガメ 」
2023年 6月  大阪 Gallery Hommage 「 宝箱 」
2024年 9月  和歌山 かまどの下の灰までgallery 「 すきとおる 」
2025年 1月  Milano Gola Gallery 「 swim 」
2025年11月 奈良 アートイベント「ROOM」 



■中山莉瑠
『Connect』

©中山 莉瑠

私は福島県出身で、実家では養鶏場を営んでいる。実家の養鶏場は、福島第一原子力発電所から離れた場所にあり宮城県との県境に位置している。この県境には物理的な壁はない。だが、「福島」の養鶏場であることで様々な弊害が起きた。今作では、当時私の家族がどのように思い、行動していたのかを伝える。

そして、今作には自分の意見を持つことを大切にしてほしいという思いがある。震災や原子力発電が議題にあがると、「私は当事者ではないから」と考えることをやめたり、意見があっても発言ができなかったりする。だが、「当事者」とは一体どこからどこまでの人のことを指すのだろうか。日本から遠く離れた海外の人でさえ、ニュースを見て心を痛めたら当事者なのではないだろうか。そのためにまず、自分の経験、自分の周りの経験を公開することで、東日本大震災の中の一つの出来事として、多くの人に知ってもらうことが必要だと考えている。この一つの出来事と鑑賞者それぞれの当時の出来事を合わせて、震災や原子力発電に対して考えてもらいたい。

中山莉瑠(なかやまりる) プロフィール
2000年3月10日生まれ。
福島県国見町出身
2022年 東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻領域卒業
2024年 東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻卒業

主な活動歴
【グループ展】
2022年   「もやい・next」横浜市民ギャラリーあざみ野(神奈川)
2023年   「第二回ヤギの目ビエンナーレ もしも私がヤギならば」たいけん美じゅつ場VIVA(茨城)

【個展】
2023年     「ダイヤ探し」ココシバ壁ギャラリー(埼玉)



ソニーイメージングギャラリー
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