2026年2月26日(木)から3月1日(日)までの4日間、パシフィコ横浜で開催された「CP+2026」。本記事では、そこで行われた玄光社のVIDEO SALONとCommercial Photoがプロデュースしたイベント企画「CREATORS EDGE Spring Edition」の株式会社トロイカの撮影監督/Visual Effects・津田 涼介さんによるセミナーの模様をお届けする。3月1日(日)16:20-17:00にステージBで行われたこのセッションでは、「実写にも活かせるルックづくり」の発想を解説した。アニメにおける「撮影」の定義やAfter Effectsを用いた表現処理の具体例を解説した。
写真・文●奥山貴嗣
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まず「アニメの撮影」とは何か
今日は、「アニメの撮影って何?」という方に向けて話します。
最近やっと名前が出てきたセクションだと思うんですが、実は元々ずっと昔ある工程です。

アニメにおける撮影は、作画と着色されたセルデータ、背景美術のデータをタイムシートと呼ばれる設計図を元にパソコン上で合成して、1カットの映像を作っていく工程の名前です。
セル(キャラクター)と背景を重ねて、タイムシートに書かれた動きを打ち込んで動かす。これが基本の仕事になります。
「撮影」と呼ばれているのは、昔は撮影台とフィルムカメラでセルを1フレームずつ本当に撮っていた名残です。
今はAfter Effectsがメインツールで、セルと背景を読み込んで作業します。


撮影監督の仕事は「画面づくり」と「管理」と「仕組み化」
撮影監督の仕事は、単に手を動かして合成するだけではありません。
絵コンテを元に撮影打ちで、必要な効果を得るために、どんな素材が必要か他セクションに発注したり、どういう雰囲気に画面にするか等をスタッフへ伝達する。
映像演出的な側面と、スケジュール管理も含めて滞りなく撮影を進める管理の仕事があります。
さらに最近は効率化を進めるために、ツール開発も自分たちで行っています。

例えばタイムシートに書かれた尺やカット番号を打ち込むと、サーバーから素材をコピーしてAfter Effectsを立ち上げ、素材を入れて「とりあえず動きがない状態で合わさった」ところまで持っていくような定型処理をボタン一つで回す、といった仕組みも用意しています。

ルックの本質:アニメは「全部作る」から、足し引きの判断が画になる
アニメは基本的に全ての画を意図的に作っているので、実写みたいに偶然が入り込む、ということは本来ありません。
必要なら足す。足しすぎたら気持ち悪くなるので減らす。こういう足し引きの判断が必要になります。
監督から「こういう画にしたい」という情報は当然もらいますが、その上で「どんな画にしますか」をテストしながら決めていく、という進め方です。

それと、作り物だからこそ「嘘を嘘と見せないためにはどうするか」という話になります。ただ、リアルに寄せれば寄せるほど「別に実写でいいじゃん」になってしまう。
だから情報をそぎ落として、どれだけデフォルメするか、引き算の美学が重要になってきます。
After Effectsで撮影をするようになってからは何処までも効果を足せてしまうので、他セクションで練り上げた方向性を撮影で壊してしまうという事が容易に起こりえます。それなので撮影では加える処理を慎重に決めていく必要があります。

実写にも転用できる撮影処理:フレア/ボケ/歪み/ディフュージョン/雨雪
ここからは、アニメ撮影で実際に何をやっているのか、具体例をご紹介します。
まず「素組」(効果を入れていない状態)に対して、狙いに合わせて処理を足していきます。例えば暗くしたい・減光したい部分に入れる「パラ」は、フィルム時代にカメラ前にパラフィンを置いて減光させていた効果の再現です。
今はAfter Effects上でキャラクターだけに当てることもできるので、画面全体だけではなく、キャラの影部分だけに処理を掛けたりもします。


TROYCAではLenscareというプラグインでボケを入れる事が多いです。アイリスの形状が調整したり強調したりできるので、ハイライト部分を抽出してボカしたものを追加で重ねてハイライト部分をさらに強調したり、ハイライト部分をチラつかせる処理を施した後にボカして止まった背景を「時間軸が感じられる」「生きている」画にする事も可能です。





歪み表現である「波ガラス」は、フィルム時代にカメラ前に「文字どおり」歪んだガラスを置いて効果を得ていた手法の再現で水中の揺らぎ、風、熱気などに使えます。
白黒マップを用いて歪ませますが、その白黒マップはAfter Effectsのフラクタルノイズなどで作成します。



レンズフレアについては、実写だと極力入り込まないようにするものかと思いますが、アニメでは現実感のある画、印象的な画にするために好んで使われます。アニメの場合は、実際のレンズの特性を厳密に再現するというより画的な方を優先する事が多いです。
「ここにカメラがありますよ」「誰かが撮っていますよ」ということが見えてしまうため、カメラが存在しない世界のファンタジーものや主観カットなどにレンズフレアがある事は一気に作り物感が出てしまうので、どんな時に使うかのルールは持っておくべきだと思います。
ディフュージョンはレンズのフィルターを再現しようとした処理です。明るいところが拡散する特性を再現するために、明部を抽出し、少し色を乗せてボカしたものをスクリーンや加算で合成しています。
これはアニメだけでなく、写真や実写映像などにも応用できるかと思います。
雨は通常Trapcode Particularが作成する事がほとんどですが、私は動作が重くなるのを嫌って、After Effectsの標準フラグインのCC Rainfallを使います。その雨にフラクタルノイズでディテールを足して粒感を強調したりもします。


雪は、雪の破片をTrapcode Particularのスプライトに割り当てて飛ばしています。雪の結晶に関してはAfter Effectsで作成していますが、過去には半紙に墨汁を垂らして破片を作成したりした事もあります。また、画用紙に茶こしや歯ブラシを用いてスパッタリングをして遠景の雪を作成したりもしました。
実写素材については、煙やレンズゴースト、炎など「後で足すエフェクト効果」として実写素材を撮って配置したりします。

違和感なく見せ、あとから技術で読む
最後に。僕らの仕事は、まず「違和感のない映像を作る」ことです。
最初から撮影処理だけが目立ってしまうのは作品として良くない。
まずは作品を楽しんでもらえて、そのあとで「撮影はどんなことをやっているんだろう」と見てもらえると嬉しいです。
「CREATORS EDGE 2026」 9月29日 開催決定!

『Commercial Photo』と『VIDEO SALON』が主催する、写真・映像クリエイターのための展示会イベント CREATORS EDGE(クリエイターズ・エッジ)。
広告、エディトリアル、Web(YouTubeやSNS)などさまざまな分野で活動するクリエイターが集まり、仕事の現場で役立つノウハウを学ぶ場として開催しています。
出展メーカーによる最新機材の展示のほか、両編集部が注目するクリエイターによるセミナー、出展社セミナー、実機体験ができるワークショップなどを予定しています。
開催概要
CREATORS EDGE 2026
日時
2026年9月29日(火)
会場
TODA HALL
〒104-0031
東京都中央区京橋一丁目7番1号 TODA BUILDING 4階
https://toda-hall.jp/access/
主催
玄光社 Commercial Photo / VIDEO SALON

