映像クリエイターでMVや映画、CMなどでも使われる8/16mmフィルム現像所・HIGHLAND SUPER 8 LABを運営する酒井洋一さん。フィルムをこよなく愛する酒井さんがinstax mini Evo Cinema™でテスト映像を撮り下ろし、実際に使ってみて感じたカメラの魅力を教えてもらいました。
テスト・文◎酒井洋一(HIGHLAND SUPER 8 LAB)/モデル◎ANALICIA GRAÇA/構成◎編集部 萩原
instax mini Evo Cinema™で撮影した映像
instax mini Evo Cinema™
オープン価格(実売55,000円前後)

ジダイヤル™と各年代のエフェクト
1930:初期のモノクロ映画
1940:テクニカラーのような初期のカラー映画
1950:当時の白黒テレビのような質感。
1960:8mmフィルム
1970:初期ビデオ・ブラウン管カラーテレビ放送
1980:35mmカラーネガフィルム写真の質感
1990:ホームビデオ(VHS/Hi8)
2000:初期デジタルビデオのような質感
2010:アプリフィルター(スマホの写真加工アプリで流行したような、少し浅めの色乗りやコントラストの効いた質感)2020:現代・高精細(ノイズのないクリアで鮮明な、現代のデジタル映像の質感)。
偏見を覆した完成度
アナログとデジタルの融合の代名詞とも言えるこのカメラ。昔の8mmフィルムカメラに形が似ていることでも話題ですが、今回は実際に8mmフィルムをこよなく愛する私が撮影してきた感触をお伝えします。
1930年代の白黒フィルムからVHS/ 8mmビデオ、そしてデジタルまで、異なる時代の映像トーンを「時代」という切り口で1台に詰め込んだコンセプトは、手にする前から素晴らしいと感じていました。一方で、VHSや8mmビデオからデジタルへの転換期をリアルに体験し、本物のフィルムを愛する者として、デジタルで再現された画への偏見もありました。他社製品に見られるような、フィルムのホコリや傷、走査線やノイズの過剰な表現を見慣れていたためです。
しかし今回はそのような心配もなく、レンズ周りのエフェクト度合い調整ダイヤルで度合いを3〜4に抑えることで、控えめで嫌味のない表現に仕上げられた点も嬉しかったです。
「手間」を愛でるコンセプト
このカメラの最大の特徴は録画やダイヤルの操作性を、あえて8mmカメラのトリガーを引く感覚や設定を物理的に指先で変えることに寄せ、撮影に向けて、作業をさせることにあると思います。これは単なるギミックではなく、作法として現代に蘇り若い世代の方にも訴えるものです。
世の中のあらゆることがオートメーション化、コスパやタイパが叫ばれる中、あえてカメラを操る「手間」を加えたことは、称賛を込めて、かなり尖ったコンセプトと言わざるをえません。
動画は最大15秒・8mmフィルムカメラのようにトリガーを引いて録画する


各時代のトーンの特徴
流行ったスイーツとともに撮ってみた
1930:モンブラン/初期映画のような白黒で、コントラストが強くハイライトが飛び、シャドウが潰れがちな設定。余計な情報を削ぎ落とし人物を際立たせるため、被写体を浮かび上がらせたいときや、逆にディテールを映したくないときに最適です。

1940:キャラメル/テクニカラー風の絵画的な発色が特徴。クラシックな黄金期ハリウッド映画のような雰囲気で、ビビッドな色が画面に入り込む場面で特に映えます。

1950:プリンアラモード/1930年代の白黒設定と対象的な、コントラストの低い、輪郭も柔らかい感じの白黒。湿度や温度さえも伝わるような淡く優しい印象で、古い時代をストレートに表現したいときにぴったりです。

1960:ショートケーキ/私が最も楽しみにしていた8mmフィルムの質感。富士フイルムはシングル8という独自規格でフィルムとカメラを製造してきただけあり、力の入った仕上がりです。強度を3〜4に落とすことで加工感を抑え、「記憶」や「思い出」をテーマにした撮影に最適なトーンになります。

1970:パンケーキ/ブラウン管TVを思わせるしっとりしたトーンに、ビビッドな発色が共存する独特の設定。良い意味で人工的な印象を与えるため、遊園地や大型遊具のある公園でのポートレートなど、作品撮影にぴったりです。

1980:クレープ/35mm写真フィルムの質感。柔らかく淡い描写で、色が転んでいる感じが今の時代にはない魅力です。解像度を追い求めない「甘さ」があるからこそ、写っている人の表情や空気感がより生々しく、記憶に残りやすい質感として定着します。

1990:ナタデココ/VHSビデオ風の描写で、色が乗りすぎない冷めたようなトーンが被写体をリアルに捉えます。カセットテープのように再生を重ねると画が乱れるなど、今では経験できない儚さを持つメディア。何気ない日常を切り取るホームビデオとしての用途に自然とマッチします。現在もMVなどで意図的に採用されるケースがあり、フィルムと並んで人気のレトロルックです。

2000:マカロン/初期デジタルビデオのような質感で、色乗りが良く彩度・コントラスト高めの暖色系。明るく元気な血色に映ります。まだ完璧でないデジタルが世界を鮮やかに捉えようとするエネルギーを感じる、人物撮影にぜひ使いたい設定です。

2010:かき氷/スマホアプリのような質感。そして続けて……

2020:カヌレ/現代の一般的なデジタル映像の質感。変化球を投げず、ありのままを記録したい時に最適です。ここまでクリアに撮影できると、デジタル技術の発展の凄まじさやありがたさも感じます。こちらは最高の明瞭さが活きるような記録やスナップメモ、気軽な普段使いにおすすめです。

映像文化を未来につなぐ実用機
今回の撮影で、不便さを愛でる心を蘇らせてもらえた気がします。15秒という撮影時間の制限など当時の制約を凝縮したこのカメラは、過去の完璧な代替品とはなり得ません。しかし時代を体感した世代はもちろん、レトロ・アナログに興味のある若い世代も、アナログとデジタルの境界線を気軽に楽しめる一台です。
10時代のトーンを搭載したこのカメラは、人気ゲームのオムニバス版や、ヒット曲を集めたプレイリストのような、あのワクワク感によく似た感情を呼び起こします。かつてクリアフィルターにカラーマジックで色を塗ったり、レンズにストッキングをかけたりと、アナログのクリエイティブに励んでいた時代も懐かしく思い出されます。誰でも簡単に撮影できながら、撮影者の意図や演出次第でさまざまな画を引き出せる、会話しながら使える愛機になるのではないでしょうか。
8mmフィルムの灯を絶やしたくない私にとって、「instax mini Evo Cine ma™」は単なるガジェットではなく、かつての映像文化を現代と若い世代につなぐ実用機です。これをきっかけに多くの方がアナログメディアにも興味を持ち、レトロブームが一過性に終わることなく、文化として末永く継続することを願っています。
instax™ miniのフィルムにプリントできる






専用アプリでリモート操作やチェキプリント™も




専用アプリ「instax mini Evo™」。カメラで録画・撮影した動画や写真をスマホにデータ転送できるほか、リモート撮影機能やチェキへのダイレクトプリント、動画編集などの機能を備える。
別売の専用ケース

