2026年2月26日(木)から3月1日(日)までの4日間、パシフィコ横浜で開催された「CP+2026」

本記事では、そこで行われた玄光社のVIDEO SALONとCommercial Photoがプロデュースしたイベント企画「CREATORS EDGE Spring Edition」の蒼井ゆいさんによるセミナーの模様をお届けする。

3月1日(日)12:50-13:30にステージAで行われたこのセッションでは、「カメラの楽しみ方」をテーマにトークを行った。スマホでも十分きれいに撮れる時代に、カメラならではの撮り味を具体例で示しつつ、その違いに辿り着くには「触り続けること」が欠かせないと強調。続けるための環境づくりや、自身の挫折と再スタートの経験も交えながら、カメラが日常に根付くプロセスを語った。



蒼井ゆい(あおい・ゆい)

写真家。スナップ、ミニチュア、自然、風景、動物など、ジャンルを横断しながら「どこを見るか、なぜ撮るか」を大切に撮影。作品だけでなく、撮るまでの視点や思考も含めて写真だと捉えている。YouTubeではPOV視点を通じて構図や判断のプロセスを発信。SNSフォロワー数は20万人以上。「カメラをもっと身近に」をコンセプトに、日々写真の楽しさを発信している。自身が運営するオンラインコミュニティ「蒼い彗星」では、作例や講座を通じて表現の奥深さを共有している。

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どのカメラを買うかより、どう楽しむか

今日は「どのカメラを買うか」ではなく、カメラをどう楽しむかの話をします。

設定や構図、機材の知識ももちろん大事です。

でも、今日はもっと手前にある「楽しさが続く形」を中心にお話しします。

難しいことは後からで大丈夫。まずは、カメラが楽しくなる入口を作るところからです。





カメラが楽しいと感じる瞬間って、思い通りに撮れたとき、綺麗に写ったとき、誰かに褒められたとき。いろいろあると思います。

私が思う共通点は、スマホとの違いを感じた瞬間です。

高いお金を出して買ったカメラで、いつもと違う写真が出てきたら、「買って良かった」と思える。

その体感が、楽しさにつながると思っています。





スマホとの違いは「届く範囲」。ボケ、歪み、トリミング、夜、望遠

ただ、今はスマホでも本当にきれいな写真が撮れます。私も広角で撮るときはスマホを併用します。

それでもカメラに手を伸ばす理由は何か。

私の答えは、写真の結果をコントロールできる範囲が広いことです。





例えばボケ。カメラのボケは丁寧さが違って、玉ボケのような表現も作りやすい。

主役を立てたいときに、ボケが効くと立体感が出ます。

紫陽花の例でも、主役がすっと浮き上がって見える感覚があります。





歪みの少なさも違いが出ます。

同じ場所で撮っても、スマホは奥行きで歪みが出ることがある。

広角の特性もあるので仕方ないところはありますが、カメラは「見たまま」に近い再現がしやすいです。





トリミング耐性も大きいです。

鳥の例だと、目の周りのリングや模様、毛並みまで描写されるので、寄っても迫力が落ちにくい。

解像感が高いと、後から拡大しても絵が持ちます。





夜景でも差が出ます。

観覧車の例だと、スマホはネオンが滲む感じがある一方で、カメラは鉄骨や時計表示が残りやすい。

夜の情報が崩れにくいのは強みです。





望遠になると、さらに分かりやすいです。

月の模様や周囲の星まで残る。普段、目で見えないところまで届く。

鳥の飛び立つ瞬間も、ブレを抑えながら透明感ごと残せる。

スマホにはない良さは、こういう「撮れる範囲が変わる」ことだと思います。





違いに辿り着くには「触り続ける」。難しいことは後からでいい

ただ、この違いに辿り着くには、触り続ける時間が必要です。

始めたての頃って、せっかく買ったのにスマホと変わらない写真が出てきたり、うまく撮れなかったり、設定が難しかったりする。

そこで触らなくなると、興味が薄れて、諦める方向に進んでしまいます。

だから私は、カメラを買ったら触り続けることが大事だと思っています。

使っていく中で、「F値って何だろう」「このボタンは何に使うんだろう」「レタッチしたらどう変わるんだろう」と疑問が自然に生まれてくる。

疑問が出たら、そこから理解が始まります。

私も過去に一度「カメラは難しい」と感じて諦めた時期があります。

今振り返ると、理解して続けるんじゃなくて、続けるから理解していく。順番が逆でした。

だから難しいことは後からで大丈夫。まずは触って持ち出す、ここを最優先にしてほしいです。

そして「続ける」ためには環境づくりが効きます。私が大事だと思うのは、

・すぐ手に取れる場所に置いてあること

・軽くて持ち出しやすいこと

・見た目が好きなこと

その3つです。





私はNikonのZfcを見た目だけで買いました。

可愛さに惹かれて持ち出していたら、結果的に設定も覚えたし、もっと知りたくなった。

最初の一台は、性能以前に「持ち出したくなるか」が本当に大きいと思います。





挫折しても戻れる。続けた先で、楽しみ方は増えていく

私のカメラ遍歴も、最初から順調だったわけじゃありません。

SONYのZV-1から始めて、ZV-E10、α7IVと進んだあと、うまく撮れずに挫折して、防湿庫にしまいっぱなしだった時期もありました。 そこからNikon Zfcに出会って、改めて持ち出すようになって、写真の魅力に少しずつハマっていきました。

Zf、Z9、長望遠で鳥や月にも挑戦して、動くものを撮るなら連写性能が必要だと感じて選んだ、という流れもあります。

その後は動画用途で別の機材を使ったり、α7C IIをきっかけに写真の面白さにハマり直したりして、また撮る世界が広がっていきました。





そして「続けた結果」の話をすると、私は先行プロモーションを担当させていただいたり、いろんな出会いが増えていきました。

実際に、SONY α7Vの先行プロモーションを担当させていただいています。

さらに、ついこの間はみなとみらいギャラリーで写真展も開きました。

写真を「ものとして残す」楽しさにも気づけた時間でした。

その流れで、CP+のソニーのスペシャルセミナーへの登壇が決定したほか、いまこの場所のように公式の特設ステージに登壇させていただく機会もいただきました。

「カメラを楽しみながら続けていたら、こうなっていた」という感覚です。 これは私の一例ですが、カメラの楽しみ方は人の数だけあると思います。

続けることでしか見えない世界がある。

だから、まずは持ち出すところから始めてほしいです。





難しいことは後からでいい。撮って、持ち出して、触り続ける

今日お伝えしたかったのは、カメラの楽しさはスマホとの違いを体感した瞬間に見えやすくて、その違いに辿り着くには「触り続ける」ことが必要だということです。

続けるためには、置き場所、軽さ、見た目みたいな「続けられる状態」を先に作るのが効きます。

難しいことは後からで大丈夫。まず撮る、持ち出す、触り続ける。

そこから自然に「もっと知りたい」が生まれて、楽しみ方も広がっていくと思います。





CP+ 2026