2026年2月26日(木)から3月1日(日)までの4日間、パシフィコ横浜で開催された「CP+2026」。本記事では、そこで行われた玄光社のVIDEO SALONとCommercial Photoがプロデュースしたイベント企画「CREATORS EDGE Spring Edition」のTOSH SHINTANIさんによるセミナーの模様をお届けする。3月1日(日)10:30-11:10にステージAで行われたこのセッションでは、フォトグラファー出身のTOSH SHINTANIさんが、ビデオグラファーとしての入り口から、監督業、そしてチーム化・会社化までの変遷を自身のキャリアから振り返る。最初の突破口になったのは「表紙撮影のメイキング」を、舞台裏ではなく映像作品として成立させる発想だった。個人の限界をどう越えるか、SNS向動画を量産しながら質を保つ進め方、そして信頼を積み上げるための考え方を、具体例とともに解説していく。
写真・文●奥山貴嗣

TOSH SHINTANI
Film Director。株式会社SHIKI 代表取締役。 高校卒業後、渡米。 ファッションスタイリストのアシスタント、そして雑誌のアシスタントを経て帰国。 帰国後はファッション・ビューティ撮影を中心にフォトグラファーとして活動。 現在は映像ディレクターとして、企画・演出・撮影・編集まで一貫して行うスタイルを強みに、様々な雑誌・アパレル・化粧品など、企業のWebCMのディレクションを担当。 現在は株式会社SHIKIを立ち上げ、SNSやWebを中心としたコンテンツ制作を行っている。
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今日話すのは「ビデオグラファーとしての変遷」です
改めて自己紹介します。いまは株式会社SHIKIという、映像制作をメインにしている会社の代表をやっています。
もともとはフォトグラファー出身で、そこから映像を始めて、ビデオグラファー、映像ディレクターという流れを経て、いまは会社としてチームで作る形になりました。
今日のテーマは「これからの映像制作者たち」ですが、僕の話は、ある意味ビデオグラファーの話に寄っていると思います。
どうやって映像の仕事が生まれて、仕事の中身がどう変わって、働き方がどう変わっていったのか。そこを自分の経験を整理してお伝えします。

ビデオグラファーの入り口:メイキングから始まった
僕が映像を仕事としてやる最初のきっかけは、メイキング撮影でした。
フォトグラファーは自分でライティングを組んで、自分で撮影して、モデルやタレントにディレクションしながら進めますよね。
その土台があったので映像でも、いきなり一人でライティングを組んで撮る、みたいな入り方ができたのが大きかったと思います。
当時はInstagramもいまほど動画が当たり前ではなくて、写真メインで、「表紙の撮影があるからメイキング動画を撮って」みたいな、軽い動画が多かった印象があります。
ただ、メイキングってそのままだと舞台裏になりがちなので、僕は最初から、それを「何かのイメージムービー」として成立させる意識で撮っていました。
メイキングだけど、モデルに目線カットをもらう。目線が入ると、メイキングでも「特別感」が出る。
そういうアグレッシブさで撮っていったのが、仕事の突破口になった感覚があります。

監督へ:仕事が深くなっていくまで
雑誌の表紙のメイキングを撮りまくっていると仕事の実績もでき、現場での進行や立ち振舞いも分かってきて、プロデューサーから「CMの監督としてやってくれませんか?」と連絡が来るようになりました。
そこからCM監督、映像ディレクターの仕事につながっていきました。
僕の中ではざっくり、映像を仕事で始めたのが2018年くらい、2019年に雑誌のメイキングを撮りまくって、2020年に監督の仕事をし始めた、という流れです。
メイキングで現場に入り、映像として成立させる経験を積み、そこから任せられる範囲が広がっていった、という感覚です。

個人の限界とチーム化:会社で作る意味
僕はフォトグラファーとして売り出していたというより、基本は映像だけでやっていました。そうすると毎日朝から晩まで働くようになって、「この生活を一生続けるのはきついな」と感じるタイミングが来ます。個人でやることの限界です。
体力の話だけじゃなくて、クリエイターとしての天井みたいなものも、いつか来るんじゃないかという感覚もありました。
感覚的な動画をずっと最先端で作り続けられるのか、将来を見据えた時に今のうちに違う形を作らないと一生は難しいかもしれない。そう考えてチーム化しました。

最初は僕ともう一人、フォトグラファーの直アシみたいな形から始まって、いまはトータル7名です。
監督だけ、編集だけ、撮影もできる、みたいに役割を分けながらプロジェクトを進めています。
会社にしたことで、僕が全部を抱えて回すのではなく、チームの中で役割を分担しながら、制作の幅と継続性を作れるようになりました。

SHIKIの業務フロー:量産・変化・信頼・ケーススタディ
SNS向けの動画は、とにかく本数が多く必要です。
1本の15秒CMみたいに、絵コンテ確定まで1ヶ月、みたいな進め方をしていたら回りません。
なので僕らは、一つ一つの動画に「この動画はこう撮ります」という絵コンテを毎回作るのではなく、お客さんから大体の方向性をもらって一度打ち合わせで擦り合わせ、あとは現場に行って撮影するのみ、という進め方を採っています。
確認フェイズが少ない方が、逆に自由度高くたくさん作れる、という感覚がありますし、そこも含めて進め方として提案します。

例えばアパレルブランドのSNIDELさんの案件では、一回の撮影で動画を5本作ることもあります。
そこで重要なのは、毎回変化をつけることです。
編集するメンバーを企画ごとに変えたり、撮影する人を変えたりして、ちょっとした変化を付け続けます。
ずっと同じ動画を作っていると、時代とズレたり飽きが来たりするので、クオリティを保ちながらチームで変化を作るのは会社じゃないと難しい部分だと思っています。
信頼については、一言で言うと「丸投げ」です。
SHIKIに頼めばいい感じになる、が回を重ねて積み上がっていく。
担当者さんは企画を同時並行で進めているので、映像周りは任せておけばいい感じにしてくれる、という信頼を目指しています。

また、クライアント・代理店・制作会社がいて、その下に僕らが入る、いわゆるCM座組の中で、監督・撮影・編集を任される仕事もあります。
例として、トヨタのグローバルなInstagramアカウント向けの撮影で、3日で12本作る、という形で進めた話をしました。
外部連携が増えると機動力が落ちる一方でクオリティは上がる。
でもSNSではスピードと予算も避けて通れない。だから分業のチームで回して解決する、という考え方です。
発想としても、カメラカーが必要なところをジンバル付きカメラで走り回って撮る、みたいなアナログな工夫が出てきますし、フォトグラファー出身として照明がある程度わかることも強みになる、と感じています。

フォトグラファー出身の強みと、これから始める人への一言
僕がいまこういう形で映像の仕事ができているのは、フォトグラファーというキャリアを通っていなかったらできていなかったと思います。
特にライティングや質感の考え方は、そのまま監督の仕事に効いています。
これから始める人に対しては、まず撮ること。いまは5秒、3秒の動画でも成立する時代です。
写真の動画版をワンカット止めで撮るだけでも十分始められます。

その上で、自分にとって一番大事なのは何かを考える。作家として追求したいのか、仕事で出会う人や経験が好きなのか、ライフスタイルを重視したいのか。
理由に正直になって、働き方や組織の形を選んでいけばいいと思います。
「CREATORS EDGE 2026」 9月29日 開催決定!

『Commercial Photo』と『VIDEO SALON』が主催する、写真・映像クリエイターのための展示会イベント CREATORS EDGE(クリエイターズ・エッジ)。
広告、エディトリアル、Web(YouTubeやSNS)などさまざまな分野で活動するクリエイターが集まり、仕事の現場で役立つノウハウを学ぶ場として開催しています。
出展メーカーによる最新機材の展示のほか、両編集部が注目するクリエイターによるセミナー、出展社セミナー、実機体験ができるワークショップなどを予定しています。
開催概要
CREATORS EDGE 2026
日時
2026年9月29日(火)
会場
TODA HALL
〒104-0031 東京都中央区京橋一丁目7番1号 TODA BUILDING 4階
主催
玄光社 Commercial Photo / VIDEO SALON

