レポート●湯越慶太 モデル●西東しおり
Samsungから、Galaxy S25 Ultraの後継機となる最新フラッグシップスマートフォン「Galaxy S26 Ultra」が発売されました。
Galaxy S25Ultraに対してCPU性能は約19%高速化、またNPU(Neural Processing Unit)においては39%もの高速化を果たしています。このNPUとはAI駆動に特化した演算回路のこと。AIがバックグラウンドで常に稼働することがほぼ前提となった現代のスマートフォンにおいてはAI専用の処理回路に課せられた役割は非常に重要なものとなっています。
また、今回の大きなトピックのひとつとして「APV」Advanced Professional Videoという全く新しい動画コーデックが採用されました。こちらについても考察していきたいと思います。
すでにさまざまな媒体からレビューが出ている機種ですが、今回は動画撮影という観点からこのGalaxy S26 Ultraの機能を深掘りしてみましょう。
外観、そしてスタイラスペン

デザインを見てみます。外観はこれぞスマートフォンなスタンダードスタイルです。ラウンドしながらエッジが立ったシェイプやレンズの出っ張りを段差で収めるデザインラインは近年では見慣れたものになりました。底部にはスピーカー、充電と通信用のUSB-Cコネクタ、SIMスロット、そしてGalaxyではお馴染みのスタイラスペンが収納されています。ちょっとした操作には重宝しそうです。


カメラ性能をチェック

レンズは3つの大きめのユニットとその隣にやや小さなユニットが並んで4連装備となっています。また同じエリア内にLidarセンサーとフラッシュライトも配置されています。レンズスペックは以下の通り。
| レンズ | ミリ数 | 開放F値 | 画素数 |
| 超広角 | 13mm | F1.9 | 約5000万画素 |
| 広角(メインカメラ) | 23mm | F1.4 | 約2億画素 |
| 中望遠 | 66mm | F2.9 | 約1000万画素 |
| 望遠 | 113mm | F2.4 | 約5000万画素 |
メインカメラは2億画素と、S25Ultraから引き続き超高画素で驚かされます。レンズ開放F値がF1.4という点も特筆すべきかもしれません。センサーサイズは公表されていないようですが情報によると1インチよりやや小さいサイズとのことで、スマホのカメラでも後処理抜きにボケ感のある画作りをすることができそうです。またそれ以外のカメラユニットもF値、画素数ともに非常に意欲的なものになっており、画作りに期待が持てます。





Samsungが提唱する新しい動画コーデック「APV」とは?

さて、このS26Ultraのスペックで動画制作者として気になるのが、今回初めて搭載された新しい動画コーデック「APV」について。「Advanced Professional Video」の略とのことですが、一体これはなんでしょうか。
APVはスマートフォンを起点とする動画制作におけるプロ用途の編集やカラーグレーディング耐性を持つコーデックとして、Samsungがクアルコムと共同開発した全く新しい動画コーデックです。iPhoneにも搭載され従来プロの動画制作においてメジャーであったProResとは異なり、最初からスマートフォンのSOCやストレージを活用することを前提に設計されており、イントラ圧縮、12bit色深度と 4:4:4 クロマ サブサンプリングに対応(ただしS26Ultraは4:2:2とのこと)、そしてProResに対して約10%のデータ軽量化を実現しています。
そしてそれをオープンソースとしていることからも、まずは普及させようとする意欲が感じられます。ProRes的なプロ用途の中間コーデックとしてというよりは、より具体的にスマートフォンによる動画制作というこれから増えると思われる制作スタイルにフォーカスした、新しい思想の動画コーデックであると言えるのかもしれません。
ちなみに編集、グレーディングはDaVinci Resolve(Ver.20)を使用しましたが、全く問題なく扱うことができました。

APV実践編~カメラ機能を検証してみる

さてS26 Ultraのカメラ機能を見てみましょう。カメラアプリから入ると「動画」それと設定の奥に「プロ動画」という項目があります。「動画」設定でも「プロ動画」でも収録コーデックにAPVをチョイスすることが可能です。また、自分が普段スマホで動画を撮影するときによく活用する「Blackmagic Camera」アプリでも検証してみましたが、これも収録フォーマットでAPVを選択することが可能となっています。


APVにはAPV422HQ(ハイクオリティ)とAPV422LQ(ロークオリティ)の2種類の圧縮率を選択することができますので、ストレージと画質によってチョイスするとよいでしょう。

また内蔵だけでなく本体下部のUSB-C端子を介して外部ストレージに収録することも可能とされていますが、手持ちのSSDで試してみたところ認識がうまくいかないことがちょくちょくありました。外付けSSDやストレージの中には要求する電圧が高いものがあり、S26 Ultraの端子からではコントロールできない場合もあるようです。もし外部ストレージを使用する場合は必ず事前に検証をお勧めします。

LogはSamsung Logに対応しています。またノーマル、ブロックバスター、青春、ロマンス、スリラー等のプリセットLUTを搭載しており、簡単に雰囲気のある絵作りをすることができます。ただし8Kをチョイスした時はビューイングLUTには対応していないようです。








カメラ機能に関しては、シャッタースピードや感度、ホワイトバランスなどより詳細な設定が可能な「プロ動画」モードのほうが、より自分の意のままに撮影したい方にはお勧めしたいと思います。
画像処理の意外な違いについて
さて、ここで普通ならより拘りたい方向けにBlackmagic Cameraアプリをお勧めしたいところなのですが、実は地味に大きな落とし穴があります。
ほとんど同じカメラ位置で、「動画」モード、「プロ動画」モード、そして「Blackmagic Camera」アプリのLog撮影で、太陽を入れ込んだ逆光という意地悪なシチュエーションで比較をしてみました。









さて、S26 Ultraでは、センサー情報を処理してAPVデータを作成する際に、「動画」「プロ動画」そして「Blackmagic Camera」アプリでは結構違う処理をしているようなのです。これはS26 Ultraの内部のGPUやISP、そしてニューラルネットワーキング処理を受け持つNPUがセンサーのノイズリダクションや階調表現にかなり手を入れているからだと思われます。
Blackmagic Cameraアプリの場合、標準カメラに比べて処理が限定的なパイプラインを経由したデータを直接収録しているのではないかと思われるのですが、それだと諧調のつながらない、やや残念なデータになってしまう恐れがあります。
標準カメラアプリの「動画」モードでは、一見Blackmagic Cameraに似た分布となっていますが、階調が滑らかにつながっており、内部でHDR処理やトーンマッピングがLog生成前段に介在している可能性が推測されます。
そして「プロ動画」モードで撮ったLogではハイライトの階調が一番なだらかに処理されており、面白いことに太陽周辺は「動画」モードで撮った時よりも早く飽和してしまっているのですが、LUTをかけて処理した動画ではハイライト近辺の見え方は一番自然な印象を受けました。推測の域を出ませんが、プロ動画においてはダイナミックレンジよりも階調性を優先させるような処理がされているのかもしれません。これは単純なセンサー性能の問題ではなく、「どのようにLogを設計するか」という思想の違いとして非常に興味深いと感じます。
自分はこれまでスマートフォンで動画を撮るときには「とりあえずBlackmagic Camera」という感じで収録をすることが多かったのですが、スマートフォンの内部処理によってこれだけ結果が変わることを踏まえると、センサー撮って出しが偉いとは必ずしも言えないんだなと認識を改めることになりました。現代のスマートフォンではセンサーデータだけでなくそこからさまざまな処理系を経て加工された「加工済みLog素材」を受け取るのが正解という考え方でも良いのかもしれません。
ただし、6K OpenGate収録など、このアプリでしかできない機能もいくつもあるため、機能面においてBlackmagic Cameraアプリをチョイスするという選択肢も充分あり得ます。その場合はセンサーを含めたこのカメラのポテンシャルを最大限に活用できていないというリスクを理解することは必要かと思われます。
テスト撮影
女優の西東しおりさんに協力いただき、国立新美術館でテスト撮影してみました。
4:3のオープンゲート撮影ができることからBlackmagic Cameraアプリを使用して撮影しています。
今回、あえてLog撮影、それもAPVを使っての撮影ということで、あえて濃いめの仕上がりを志向し、ダビンチでカラコレの際に「フィルムルック・クリエイター」エフェクトをかけてみました。簡単にフィルムルックの映像にすることができますが、S26 UltraのSamsung Logが破綻することもなく、非常に素性の良いデータだと感じました。


先ほどの検証前の撮影だったためBlackmagic Cameraアプリを使用しての撮影ですが、4:3の画角でちょっとしたムービーを作成してみました。





まとめ
今回のテストではスマートフォンそのもののレビューに加えてAPVという次世代コーデック、そしてアプリのモードによる処理の違いにメインのフォーカスを当てたレビューとなりました。そのことからわかるのは現代のスマートフォンはセンサーだけ、レンズだけで成立するようなものではなく、CPU、GPU、ISP、そしてNPUといった処理系が総力戦で映像を作り上げるものなのだということです。そしてAPVという次世代コーデックが作られたのもまさにそうしたスマホ時代の新しい動画コンテナが必要であるという要求があってこそなのだと思います。
その一方で、Blackmagic Cameraのようなアプリを駆使した撮影にも門戸が開かれているのですから、ユーザーは自分に合ったやりやすいやり方で簡単に映像を作りことができます。
スマホによる映像制作が完全に市民権を得た今だからこそ手に取る価値がある、「その先」を感じるスマートフォンだと感じました。
