ショート動画の制作フロー

企画から完パケまでの一連の流れ

「こういった共感や発話がある」ということを証明するのがソーシャルリスニング

ONE MEDIAのショート動画制作フローは下図のようになっており、基本的にはプロジェクトに応じて3〜4人でタッグを組んで進めていくかたちになります。役割はだいぶグラデーションになっていますが、プランナーの作業領域は桃色のハイライト部分になっている2〜4のフェーズが主となります。ONE MEDIAのプランナーは企画のオーナーであり、誰をチームに入れるか、誰をキャスティングするかといった実装の部分にも関わっています。その相談相手としてプロデューサーにも入ってもらって進めています。

リード獲得に関しては、プロジェクトのリサーチになります。私たちが普段向き合っているのがデジタルなので、デジタル上でどう発話されているかが重要になります。企画がいくら面白くとも、デジタル上でそこまで共感されないような内容ではやってもあまり意味がないと思われてしまうことが多いです。「実はこういった皆の共感や発話がある」というのを証明するのがソーシャルリスニングになり、資料上ではフェーズを分けてはいますが、提案フェーズの戦略策定中もソーシャルリスニングは常に行なっているのが実際です。

フローにおいて特殊な部分なのは制作フェーズの部分です。例えばTikTokerやYouTuberの方々とお仕事をする際は、クリエイターさんに企画コンセプトを説明した上で、クリエイティブのアイデア出しを依頼したり、撮影も私たちがやる場合とクリエイターさん自身がやる場合があったりと、臨機応変に対応しています。

リリース後に関しては配信を行い、そこから配信の数値を踏まえてレポーティングを出し、最後にサイトなどに載せて事例化していくというのが通常のフローになっていて、そこまでプランナーが関わっていきます。



制作フロー図

スケジュールとしては、リード獲得に1カ月弱、そこから提案・制作・配信までに2〜3カ月程度と、合計で約3〜4カ月でひとつのプロジェクトが動いていくのが基本。例外として、IPコラボやアーティスト起用などの場合は、擦り合わせをする人数が増えるため半年から1年かかることもある。








ONE MEDIAのショート動画・企画の作り方

ショート動画は誰でも攻略できる

アルゴリズムがある前提で自分の趣味の探し方をそれぞれが考える時代へ

皆さんは、YouTube Shortsが1日あたりどのくらい再生されているのかをご存知でしょうか。実は2025年段階で1日あたり2000億回以上再生されていて、2024年から2025年にかけて大幅に伸びています。2000年代から2020年代までは、アルゴリズムとともに生きていた感覚があったかと思いますが、今の世代はアルゴリズムがある前提で、自分の趣味の探し方をそれぞれ考える時代であり、その結果縦型動画が主流になったという背景があります。

では、Google検索や長尺動画の需要が減ったのかというとそうではなく、むしろショート動画からSEOや長尺への流入を後押ししているため減ってはいません。ショート動画をきっかけに何かを買ったり、何かの動画に遷移したりと、自分の探したいものをショートから発見する流れができており、自分の求める一次情報をすぐ見つけられることがショートのメリットでもあります。

ただ、「ショート動画ってトレンドがすぐに変わるから再現性がないですよね?」とよく聞かれるんですが、再現性はあると断言できます。

ここからは、「ショート動画は誰でも攻略できる」ということを解説していきます。





アルゴリズム攻略のフォーメーション

10億回以上再生される動画の「型」からヒントを得てそれに則ることが重要

スマホでショート動画を見る際の視聴態度を想像すると、大体の方が「ながら見」をしていることが多いかと思います。そんな中で印象に残すために何をすればいいのかというと、「人間の本能を刺激する」ことが大切になります。

人間の本能を刺激するトリガーは、すでに数値で証明されています。ONE MEDIAでは、10億回以上再生されている動画の「型」からヒントを得ており、ショート動画ではそれに則ることが非常に重要です。

ONE MEDIAでは、型の基本となる3つの手段と12のトリガー、84の切り口の数値を足して、「99」の法則としており、これがアルゴリズム攻略のフォーメーションになります。

まず、絶対に避けて通れない定義として、「アルゴリズムマーケティング」があります。要は、アルゴリズムで最適化された人たちの可処分時間の奪い合いのことを指しています。その上で、いかに人間の本能を刺激できるかという部分においては、「視覚に訴える」「感情に訴える」「思考に訴える」という3つの手段があります。

例えば、ASMRで音と映像をリンクさせて視覚に訴えたり、共感を集めやすいショートドラマで感情に訴えたり、AIコンテンツを使うことで議論を巻き起こして思考に訴えるなどですね。

トリガー部分に関しては、クリエイティブができたときに、「これに則れているか」というチェックリストとして使うことで”ハマった企画”を作ることができるんじゃないかと思います。

その上で、最終的に84の切り口からコミュニケーションアイデアを立案し、ONE MEDIAらしいソリューションを提供しています。



99の法則の構造─3つの手段、12のトリガー、84の切り口




いま企業・ブランドがやってはいけないショート動画の内容

「TikTok初期の1〜2年目で流行っていたことは、現在のユーザーからするとすでに古いものになっており、”アルゴリズムに乗らない”ものと化してきています。例えば、ダンスなどもロジックをしっかりと立てるか、何か強みがなければ厳しいため、ただクリエイターが踊るダンスを作るだけならば、それは“やってはいけない施策”に入ると考えています」と近藤さん。








事例解説─メソッドの実践と設計されたバズ

事例1:トヨタTikTokアカウント

バリューにバリューを重ねることで「見られて当然」という形にする

ヨタさんのTikTokアカウントではビジュアルを大切にしており、視覚に訴える手段を用いています。「この車を買ったら気持ちがいい」という「快感」のトリガーを選んだ上で、より車の気持ち良さを表現するための4つの切り口を選んでいます。海外が主流の題材ならば、日本の需要よりも海外で再生されているものをリサーチして、切り口を決めるのもありかと思います。

本件の場合、ある程度見せる型が決まっていて、そこにネームバリューのあるトヨタさんが乗っかるという”バリューにバリューが重なった状態”だったため、「見られて当然」という形になっており、再生数も非常に伸びた結果となりました。


TikTokアカウントをショート動画カタログにする提案を行い、結果的にオーガニックのみで7,000万回再生、エンゲージメント率5.1%を達成した。






事例2:SUUMO「そうはならんやろ、柴崎さん」篇縦型CM

「違和感」をあえて説明しないところを入口にする

SUUMOさんの事例では、視覚に訴える部分は先と同様ですが、「違和感」をトリガーにしています。出演しているのは柴崎さんというSNSで有名な水彩画家の方ですが、「柴崎さんがお絵描きをする」というスタンスを視聴者が認知している前提で、SUUMOのぬいぐるみを持っている違和感をあえて説明しないところが入口になっています。

また、「そうはならんやろ」というツッコミが元々のコンセプトにあり、それが成立している企画にもなっています。結果として、縦型CM1本のみでエンゲージメントは25万件を超えました。





事例3:超ときめき♡宣伝部×YOLUバスタブレットのSNSプロモーション

この事例がTikTok Ad Awards 2025 Japan グランプリを獲得した。





最も重要なのはファンから感謝されることと共感されること

この事例は、「超ときめき♡宣伝部という人気アイドルが、YOLUのバスタブレットのPRライブ配信を行う」という前提のもと、まさかの寝落ちをしてしまう演出を入れた広告になっています。

特に大事なのは「ターゲットが誰か」という部分であり、本件では超ときめき♡宣伝部のファンをターゲットとしています。さらに、ファンがスクショをして拡散することで、ファンではない人たちにも広がっていくため、最も重要なのはファンからの「共感」と「感謝」であり、これらをトリガーとして感情に訴える手段を用いています。

加えて、「この瞬間しか見れない」という熱量をライブ配信で上げ、「やばいじゃん!」とハプニングで驚かせることで拡散したくなるような切り口になっています。

結果として、寝落ちライブ配信後、UGCは500本以上投稿され、商品自体も入浴剤カテゴリ1位、販売数も2カ月以内に100万個を突破しました。





UGCとは?

UGC(User Generated Content)とは、一般ユーザーによって自発的に制作・投稿されたコンテンツ(口コミ、SNS投稿、レビュー、ブログ、動画など)の総称。






パーソナライズして話しかける・界隈を捉える

誰に話しかけているのかを明確にすることが気持ちのいいコミュニケーションに

SNSは主に私生活やライフスタイルを共有する場所なので、広告が立ち入っていい場所ではないと考えています。

例えば、カフェで突然「皆さん、新商品が出ましたよ!」と言われても、無視されてしまいますよね。そうではなく、コーヒーを飲んでいる方に対して、「コーヒーのおかわりはいかがですか。新しいフレーバーが出まして」と言えば、新しいフレーバーを試してくれる可能性は高いです。さらに、美味しければ周りの人にも勧めてくれる可能性が上がります。これは今のSNSの関わり方の特徴でもあり、自分がいいと思ったものや発見したものを共有したいんですよ。

デジタルも同じで、誰に話しかけているのかを明確にすることが気持ちのいいコミュニケーションとなり、そのためのパーソナライズが重要です。それがいわゆる「界隈」であり、界隈をうまく捉えることでターゲットが発話してくれ、施策の火付け役になってくれます。



界隈をうまく捉えると、ターゲットが施作の火付け役となる。




発話の設計

共感・拡散層と批判・炎上層がどんな気持ちになるのかを重視

デジタル施策は、「企画者側が注目されるのではなく、発見した人が注目されるための仕掛け」を作ることが大事です。そのためには、デジタルならではのコミュニケーションの取り方を理解した発話の設計が重要になります。

コミュニケーションを取るとき、ターゲットは「ポジティブかつ能動的に発話をする人」「ネガティブかつ能動的に発話をする人」「ポジティブだけど受動的で発話をしない人」「ネガティブだけど受動的で発話をしない人」といった4つの区分に分かれます。ここで大事なのは発話をする前者ふたつであり、その人たちがどんな気持ちになるのかを重視しています。極端な話、後者ふたつはそこまで意識しなくても構いません。

例えば、YOLUの事例であれば、共感・拡散層はブランドに対しての感謝や、状況を皆に共有することが想像できます。批判・炎上層は「騙された」と捉えてしまい、強い言葉で炎上しそうな発話が想像できます。その対策として、画像とともに拡散されるようスクショポイントを用意し、文字面だけでは炎上に見えるものをバズったように見せるための仕掛けを作っています。要は、拡散された際に、ターゲットに対して違和感なく「設計されているもの」であることを伝え、見た人が悲しい気持ちにならない“可愛い事故”に思える表現に変えることで、ポジティブに受け止めてもらえるような発話の設計を組んでいます。


デジタル施策におけるコミュニケーションで重要なのはポジティブにしろネガティブにしろ、発話をする左側の層が重要となる。SNSに拡散された際の発話を想像し、そのための設計をすることでポジティブな拡散が増え、ネガティブな炎上なども回避することが可能。




余白の設計

どんなコミュニケーションを取ってくれるのかを考えレスポンスの余白を残しておく

先の発話に関してもそうですが、受け取った人がレスポンスできる余白を残すことを重要視しています。

例えば、「コーヒーが新しくなりました。とっても美味しいです。ちょっと甘いです」とまで伝えてしまうと、受け取った人は返す言葉がなくなってしまいレスポンスに困ってしまいます。そうではなく、発信するものに対して、受け取った人がどんなコミュニケーションを取ってくれるかを考え、その余白を残しておくことで、UGCも多く生まれていきます。

基本的に最近バズっているものは、誰かが自分でやったことを発信するのではなく、誰かがやったことに気づいた人が発信したものがバズる傾向にあります。広告のコミュニケーションもそれと同様で、企業が発信しても受け入れられないけれど、誰かが気づいて発信したものが拡散されることが多くなっています。あえて伝え過ぎないことで、発見した人が発話しやすくなるための余白を残すことが大切なんです。



コンテンツが波及していく流れ

SNSでコンテンツが波及していく流れは、コア施策の段階で答えを出さず、ファーストフォロワーが答えを発見することで拡散されていく傾向にある。




いじわるの設計

不親切な設計にすることで発話を促すための仕組みを作る

これに関してはやるときとやらないときがあり、「あえて発見しにくい状況を作る」という話です。例えば、先のYOLUの事例であれば、超ときめき♡宣伝部にはメンバーが6人いて、23時から同時に皆で寝落ちをするライブ配信を始めました。当然、アカウントはそれぞれ別々なので、全員を同時に見るためにはスマホが6台必要になります。そのため、企画段階では「配信は順番にやったほうがいいんじゃないか」「同じアカウントで、皆で一緒に寝るほうがいいんじゃないか」など、スマホ1台で見れる親切設計にするためのディスカッションがありました。ただ、それでは発話が減ってしまうし、「自分が見つけた」という発見感を残すことが難しいんですね。だからこそ、あえて意地悪な設計にすることでゲーム的要素を入れ、発話を促すような仕組みを作っています。






ショート動画のこれから

ショート動画のこれから

「どんなことが起きれば皆が投稿したくなるのか」を考える

今までのショート動画はただ見るためのものでしたが、最近は見た人が手を動かす機会が増えてきていると感じています。ショート動画の企画に携わっていると、オフラインの施策と非常に相性のいいことがよく分かるんですよね。

例えば、イベントを行なって、そこに参加した人が撮ったショート動画がバズるようなことが、近年では主流になる傾向にあります。これは元々のTikTokやショート動画の根幹である「誰でも撮れて、誰でもクリエイターになれる」という原点回帰を意味しており、一般の人たちが今後ショート動画にのめり込んでいくきっかけになると感じています。

何かを作るのって、どうしても面倒くさいじゃないですか。だからこそ、いいものを作るための仕掛けや装置、広告などは私たち企業側が用意して、そこに訪れた人たちが気軽に撮って遊ぶようなケースが今後増えてくるんじゃないかなと。そのほうが広告としても有意義ですし、ただ見るだけでなく体験をしてもらえることはものすごく価値のあることだと思うので、広告に関しては向こう1〜2年はそういった方向に偏っていくんじゃないかなと予想しています。