ログライン→プロット→シナリオの順に構成していく

ログライン=「誰が、どうなり、何をする」

すべての元になるのがログライン。「主人公の目的」「立ちはだかる壁」「主人公の行動」の3つ意識して面白くなりそうな一文を考える。





ログラインを15ブロックに分けたプロット

プロットをシナリオに落とし込む




ここでリアリティラインの確認も!

名著『SAVE THE CATの法則』の参考に15のブロックに分けているが、物語が崩壊しないように映画内の“リアル”を改めて検証する。







画を作り込む前段階で尺を決めておくことが重要

シナリオを絵コンテに起こしたあとは、それをビデオコンテにしていきます。AI映画なのになぜビデオコンテを作るのか、それは映像が時間芸術だからです。僕の印象として映像は音楽に近いもの。多くの音楽は尺が決まっていて、Aメロ・Bメロ・サビ…という型を使って制作すると思いますが、感覚としてはそれと同じで、まず尺を決めてから実際の画を作るほうが圧倒的にラクです。

考え方としてはアニメーションの制作に近いかもしれません。アニメーションではまず脚本や絵コンテがあり、それに合わせてレイアウト、原画、動画…と描いていく。これらの作業は尺という全体像があるとより効率的に進めることができます。『ラストドリーム』はAIツールでセリフ、効果音、音楽を生成して、Premiere上で絵コンテと合体してビデオコンテにしました。この時点で作品の尺を10分に確定させています。

10分にしたのにも大きな理由があります。本作は完成後にプロモーションも兼ねて映画祭への出品を想定していました。映画祭における30分の映画は「ロングショートフィルム」と呼ばれていて、上映することが非常に難しいんです。映画祭のプログラマーは事前に膨大な数の出品作をチェックしないといけないですし、映画祭期間中の上映枠にも限りがあります。そうなると、30分の作品と対決するのは10分の短編×3本、つまり1対3の戦いになるんですね。10分の作品を3本流したほうが、映画祭としてたくさんの作品を紹介できますから。

これまでいろいろと映画祭を回って見聞きしてきましたが、30分の1本ではなく10分の3本のほうがだいたい勝ちます。実感としては、大きな映画祭になると30分はセレクション率が2〜3%、10分なら5%はあるかな、という。ただ、短いほどいいというわけでもなく、5分では作品の意図することが描ききれず、やはり物足りない。なので10分がベストの尺なんじゃないかということですね。



シナリオから絵コンテに起こす

串田さん曰く、絵コンテ制作は愚直にシナリオを絵に書いていく作業。モニターで映像を見る感覚に近づけるために、串田さんはA4用紙1枚につきワンカットずつ絵にしていくそうだ。それをクリップでまとめて紙芝居的に確認し、適宜入れ替えなどの調整を行う。








ElevenLabsでセリフ・効果音を生成

声優のキャラクター決め(Voice Design

ElevenLabsでセリフを生成する際に、まずは「Voice Design」のプロンプトで声優のキャラクターを定めていく。串田さんはChatGPTでプロンプトを作成したが、それをコピペして「Generate Voice」を押せば、3パターンの声優が作られる。あとはイメージに合うものが出るまでプロンプトを調整や生成を繰り返す。


指示テキスト内に「:」は過去にそれでうまくいったことがあるた めで、ある意味で願掛けのようなものだと串田さんは言う。






セリフをしゃべらせる(Text to Speech)

セリフをしゃべらせる工程ではパラメータ調整がキモになる。どこまで芝居じみたしゃべり方にするか、どのスピードで言わせるかなど、細かく設定していく。また、プロンプト(セリフ)にも演技指導を入れる。ここでは「(conversational mature)=会話的で落ち着いている」とした。




効果音の生成(Sound Effects)

効果音の生成はシンプル。宇宙船が爆発するシーンでは「spaceship Explosion」というプロンプトを入力し、尺を決めて生成した。1回の生成で方向性の違う4つのパターンの効果音が生成される。




Sunoで音楽(劇伴)を生成

劇伴の生成に使ったのはSuno。インスト曲の場合はプロンプトだけで生成が可能だ。串田さんはここでもChatGPTを活用し、音楽のイメージや具体的な音色などを指示してプロンプトを作成、Sunoの入力欄にコピペした。








うまく動画を生成するための画像生成工程

スタイルリファレンスを使って 画像の世界観を統一する

ビデオコンテまで完成したら、ここからはエンジニア領域に入っていきます。画像生成にはMidjourneyを使いました 。プロンプトの例としては「Hyper realistic photo. A Full size shot of an astronaut is floating outer space. ISS behind him.」みたいな感じ。生成の精度を上げるために英語のプロンプトにしていますが、「スタイル」「サイズ」「人物」「状況」「背景」など、イメージする画像に対して過不足なく単語が入っていることが重要で、正しい文法である必要はありません。

個人的にはただ闇雲に生成するのではなく、スタイルリファレンスを使うことをオススメします。生成する画像の作風を指定することで、世界観やキャラクター造形に統一感が生まれるので、今回のように何百枚も生成する際にはとても便利です。Promptsrefのようにスタイルリファレンスを検索できるサービスがあるので、そこから自分が求めている作風を探して、実際のプロンプトを与えてみる、イメージが違ったら別のスタイルリファレンスを探して…という繰り返しの中から理想の作風を見つけていきました。



スタイルリファレンスで作風を指定してキャラクター造形を決める

前段階として使う「Promptsref」のスタイルリファレンス。セル画アニメ、リアルな実写風など、作風を指定してできる。




スタイルリファレンスの例

スタイルリファレンスの作風は番号で管理されている。上画像は別のスタイルリファレンスに同じプロンプトを与えた例。気に入るスタイルが見つかるまで探していく。





完成したキャラクター造形

数ある作風の中から『ラストドリーム』で使用したのが下の画像(スタイルリファレンスの番号は非公開)。このキャラクター造形をキービジュアルとして定めておくことで、Midjourneyで生成される画像の世界観やディテールが統一される。





Midjourneyで絵コンテの各カットを画像生成




完成したカット

下の画像は宇宙飛行士のクローズアップの例。Midjourneyにキービジュアルのキャラクター造形を反映させたことで、別カットでも世界観を統一しながら生成できていることが分かる。





さらにMagnific AIで高画質化&ディテール生成

後に動画化するうえで効果的なのが画像のアップスケール(高画質化)。Magnific AIは単に高画質化するだけでなく、ディテールのテクスチャも付与。拡大して見ると、宇宙服の素材やバイザーに反射した地球の細部の質感がより豊かになっている。








静止画からひたすら動画生成(Runway、Kling AI、Luma AI)

メインで使用したのはKling AI。下の画像は宇宙飛行士が岩を抱きしめるシーンの始点となるカット。静止画と同様にChatGPTにプロンプトを作成してもらった。Kling AIが不向きなシー ンや生成できない一部のシーンではRunwayとLuma AIも駆使している。





Topaz VideoでHDから4Kに

編集時にブローアップできる余地が残せるようにHDから4Kにアップスケールしておく。『ラストドリーム』ではTopaz Videoを使用した。





オンライン編集&MAでクオリティアップ

SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザの設備をフル活用して本編集とMAを行なっ た。この工程によって劇場鑑賞用作品のクオリティになったと串田さんは言う。





技術的にできることを見極めてストーリーや演出を考える

『ラストドリーム』は僕がひとりでクリエイターとエンジニアの領域を兼ねて制作しましたが、やはり映画の勝利パターンは「クリエイターとエンジニアがお互いの力を引き出す」ということに尽きると思います。

『トイ・ストーリー』(95)は世界で最初に作られた長編フル3DCGアニメですが、なぜオモチャを主人公にしたかというと、当時の技術で作れるのはツルツルのプラスチックみたいな質感だけだったからです。この技術的な課題を目の当たりにしたクリエイターたちが考えて、「だったらオモチャを主人公にしよう」となった。つまり、お互いにリスペクトがあったということです。

エンジニアが技術的にできることを見極めて、クリエイターがそれにあったストーリーや演出を考えるというのは、いまのAI作品でもまさに求められていることだと思いますね。






AI映画は今後どうなっていくのか?

串田さんが見聞きしてきた各国のAI映画の動向

韓国

国の成長戦略の中心。AI映像教育センター設立。2030年に照準を合わせている。



フランス

フランス国立映画映像センターなどの創作保護が最優先でAIの自由放任には否定的。



アメリカ

AIへの投資が加熱している。一方で、ハリウッドでは組合のストライキが起こっている。



中国

「データ」「国家戦略」「人 材」の三拍子が揃っている印象。AI発展がダイナミックかつスピーディ。



日本のAI映画の可能性

コンテンツ産業の強化

車に次ぐ第2の輸出産業としてコンテンツ産業に力を入れる。クリエイター支援基金の強化も行なっているので、海外に通用するAI作品を作るという点では、国のサポートを受けることも可能?



そもそもAIに寛容な国

諸外国に比べてAIに対する規制・ルー ルは緩やか。一部業界やSNS上では否定的な意見も見られるが、全体として見れば大きな反発は起きておらず、論争も落ち着いている印象。



巨大資本よりも“作家性”

日本映画の傾向として、制作費が集まっている作品ほど保守的になりがち。海外の映画祭で評価されるのは、低予算で作家主義の作品が多い。制作費に依存しないAI映画は相性が良い?



日本はAI映画との親和性が高い…? 個人作家・小規模チームの復権の希望

僕は常に「映画祭」「劇場公開・有料配信」「無料配信・ SNS」という流れを考えているので、『ラストドリーム』もまず映画祭にトライしました。映画祭は世界の映画人に共有されている評価の基準で、権威ある映画祭での上映や受賞は注目を集めて監督の次のステップにつながります。ただ、ひと口に映画祭と言ってもレベルはさまざまです。評価の高い映画祭は100ぐらいありますが、その内のひとつに正式出品されて上映することが目指すべきところなのかな、と。

映画祭にエントリーするうえで三種の神器になるのが「キービジュアル」「予告編」「プレスシート(日本語・英語どちらも)」 です。これがないと映画祭のプログラマーに興味を持ってもらえませんし、本編を見てもらうことすら叶わないと思います。エントリーの際に注意してほしいのが、詐欺的な映画祭には出さないようにするということ。ほんとに開催しているのか分からないような映画祭や、エントリー料を目当てにした悪いビジネスをしている主催者もいます。「セレクションに入りました」と連絡が来たとしても上映にあたってまともなプロモーションがなく、どこかのローカル映画館を2時間だけ借りて受賞式だけを行う、とか…。自分のキャリアを傷つけないためにも、事前にしっかり調べてほしいと思います。

『ラストドリーム』を出品した海外映画祭をいくつかまわると、各国のAI映画に対するスタンスも見えてきました。上にまとめていますが、国の支援も受けながら急速に組織化している韓国、AIによる濫製にネガティブなフランス…など、国によってAIを取り巻く状況はさまざまです。最近面白いなと思ったのが、中国のジャ・ジャンクー監督がAI作品を作ったこと。国際的に評価のあるジャ・ジャンクーにAIを使わせるんですから、「中国、本気だな…!」と感じました。

では、日本はどうか。もともと海外の日本映画ファンからは、平均化されたビッグバジェット作品ではなく、低予算でも作家性が発揮されている作品が好まれていました。そこに応えるような日本のAI映画が将来出てくるんじゃないかと期待していますし、AI映画との親和性は高いと思います。ただ、「人材不足」「予算と時間」「著作権リスク」といった課題は残されています。ちゃんとしたガイドラインができれば、日本で個人作家や小規模チームが復権する可能性はあるはずです。


串田さんが所属するピラミッドフィルムが立ち上げたPYRAMID AIの第1弾プロジェクトでもある『ラストドリーム』。2024年のスタートからAIとクリエイターの協働による新たな映像表現を探求している。