第6回「CP+2017で気になったVR関連の展示」
写真・文●染瀬直人

写真家、映像作家、360度VRコンテンツ・クリエイター。日本大学芸術学部写真学科卒。360度作品や、シネマグラフ、タイムラプス、ギガピクセルイメー ジ作品を発表。VR未来塾を主宰し、360度動画の制作ワークショップなどを開催。Kolor GoPro社認定エキスパート・Autopano Video Pro公認トレーナーYouTube Space Tokyo 360度VR動画インストラクター。http://www.naotosomese.com/

※この連載はビデオSALON2017年4月号より転載

 

カメラと写真のワールドプレミアショー「CP+2017」が2月23〜26日、パシフィコ横浜で開催されました。今年の来場者数は会期合計で66,665人、前年比98.3%とほぼ横ばい。ここではVRカメラとその周辺機器をレポートしていきます。

リコーは例年になくTHETAの展示面積を拡大

▲RICOH Multi-Imaging Technologyのデモ。THETA Sで撮影した全天球写真にK-1で撮影した高解像度画像や動画を合成。

▲(左)HDを4Kにアップコンした映像の比較。()THETA Sによるライブ配信のデモ。

コンシューマー向け展示

リコーブースではTHETA Sによるライブ配信デモをはじめ、ボールチェアでVRゴーグルをつけてコンテンツを視聴できる体験コーナーや「RICOH THETA Instagramコンテスト」の入賞作品ギャラリーを設置。

個人的に興味深かったのはTHETA Sで撮影した全天球(360°)写真にPENTAX K-1の高解像度の写真や動画をレイヤー化して、俯瞰とクローズアップの品質を両立させた「RICOH Multi-Imaging」でした。その他、空間音声やTHETAのHD素材を画像処理で4Kとして見せる技術の参考展示など、例年になく大幅にTHETAの展示面積を拡大しているのが印象的でした。

一方、ニコンでは昨年のCP+で参考出品、10月に発売されたニコン初の全天球カメラKeyMission360を展示。4K/24pの動画撮影、防水30m、耐衝撃2m、耐寒-10度、防塵の性能を備え、スポーツ撮影などに適したアクションカメラということが売りです。別売のリストマウントなど豊富なアクセサリーも各種展示されていました。

カシオEX-FR200は画角185°のアクションカメラ。カメラ部を1台追加することで、完全な360°全天球の撮影も可能となります。ブースで装着を試してみたところ、合体もスムーズに行えました。

ニコンとカシオもカメラを展示

▲(左)昨年は参考展示だったニコンKeyMission360が正式リリース。各種アクセサリー機器も合わせて展示されていた。()カシオEX-FR200。カメラ部を2台にすると、360°VR動画の撮影が可能。

業務用の機材展示

インタニアは、250°の超魚眼レンズEntaniya Fisheye 250 MFTを展示。3つのイメージサークルを選択できるのがユニークで用途に応じて最適な解像度で撮影ができます。今回は新たにEマウント用も出展されていました。同社ではこれまでGoPro用パノラマ魚眼レンズを発売してきましたが、より高品質な360°VR制作に向けたデジタル一眼用レンズが登場したことは注目すべき動向と言えるでしょう。

この他、チェコ製のパノラマ雲台BUSHMAN Panoramic、360度パノラマとタイムラプスを組み合わせた新撮影ソリューションPanoMoments、韓国のGUERILLA製360度撮影用リグや水中ハウジングなど様々なVR関連アクセサリーが展示されていました。さらにKadincheとサードウェーブデジノス、ブラックマジックデザインとのコラボによるVRライブ配信のソリューションなどが併せて出展されていました。

また富士通やパナソニックが出資するSoC(※)プロバイダーのソシオネクストでは2つのセンサーに対応したDualカメラシステムなど業務用の展示も見られました。

別会場の「プロ向け動画エリア」も業務向けの展示で九州・宮崎のよしみカメラが3DVRカメラ・セットZ-Cam E1 ver.iZugarを、三友は昨年末に国内発売となった550万円のハイエンドVRカメラ・ノキアのOZOを展示していました。

※SoCとは一つの半導体チップ上にシステムの動作に必要な機能の多く、あるいは全てを実装するという設計手法のこと。

インタニヤではVR撮影用レンズや周辺機器を多数展示

▲(左)Entaniya Fisheye 250レンズはマイクロフォーサーズに加え、Eマウントレンズも登場。(右)Blackmagic Micro Studio Camera 4Kに装着した状態。

▲(左)サードウェーブデジノスのPCと組み合わせたライブ配信セット。(右)チェコ製のパノラマ撮影用雲台BUSHMAN Panoramic。

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海外の映像機材の展示ショーに比べるといまひとつ盛り上がりには欠けるCP+のVR機材の展示でしたが、VRのムーブメントは既存のカメラファンとは異なるシーンで確実に起こっており、それがやがて国内のカメラ業界にも波及することと予想しています。 

プロ向け動画エリアには業務用VRカメラの展示が目立つ

▲(左)よしみカメラのiZugar3DVR撮影セット。(右)三友ブースに展示されたノキアOZO。

▲(左)ソシオネクストが展示していたDualカメラシステム。(右)昨年12月発売のカールツァイス製VRゴーグルVR ONE Plus(15,800円)。

 

◆この記事はビデオSALON2017年4月号より転載
http://www.genkosha.co.jp/vs/backnumber/1616.html