プロ機材ドットコムは10月14日(土)、LPSの協力を得てGH5のセミナーを開催した。午前と午後の1回ずつ。
最初に挨拶をするプロ機材ドットコムの森下社長。
■セミナー内容
1.GH5の紹介(静止画編・動画編)、ファームアップの紹介
LPS(ルミックスプロフェッショナルサービス)の中島氏より、GH5についての紹介と先日のVer.2.0へのファームアップについての案内があった。4K60pや6K/4Kフォトが時間無制限で記録し続けられるのがGH5の驚くべきところで、LUMIXシリーズの開発にも長く関わってきた中島氏より、熱シミュレーションについて深い話を聞くことができた。熱シミュレーションには時間がかかり、一度シミュレーションしたものを検証するだけ1ヶ月くらいかかるなど、開発にはノウハウと時間がかかっている。GH5には空冷ファンがなく、センサーや基板からボディ全体に熱を伝達して均熱化することで外装から熱を逃している。
それでもGH5ではGH4に比べて処理する量が膨大になる。特に10ビット映像の処理量は膨大だ。設計の最後の段階でフラッシュのスペースを開けることで放熱し続けることに成功したという。
Ver.2.0では、4:2:2 10bit記録で150Mbpsのビットレートのさらに上位として、ALL-Iの400Mbpsが加わった。さすがに400Mbpsという高ビットレートなので、V90というSDカードを利用しなければならなくなるが、150MbpsのLong GOPから一皮剥けた映像が撮れるようになったという。またHLG(ハイブリッドログガンマ)の採用により、GH5で撮って、そのままHDR対応(HLG対応)のディスプレイで観るだけで、効果を体感できる。特に同社の有機ELテレビで観ると、驚くような映像体験ができるという。
プロ向きの機能としては、USB3.1を利用したUSBテザー撮影が可能になったこと。PCでモニターしながらシャッターを切ったり、RECボタンを押すだけでなく、カメラの機能をほぼすべてをPCから設定できるようになる。
2.GH5とドローンやリグ等を使った映像撮影手法紹介
GH5を数々の現場で使ってきた、ビデオサロンでもおなじみの渡邊聡氏(Multicamloboratory)が、現場での使い勝手や運用方法を紹介。対応レンズと組みあわせた手ブレ補正が強力で、ほとんどのシーンを手持ちで撮れるようになっているという。またプロの映像制作ではオートフォーカスに頼ることはあまりなかったが、GH5では、マニュアルとAFの組み合わせた使い方がいいという。バリアングル液晶モニターを横に開き、フォーカスを合わせたいポイントを左手でタッチし続けると、フォーカスも早いので、実用的だという。
これもビデオサロン別冊「ビデオグラファーのための映像制作機器ガイド」で紹介したものだが、GH5をB4マウントレンズで使え、さらにショルダーにもでき、Vマウントバッテリーで長時間運用できるというENGスタイルセットは、渡邊氏が組み合わせをアレンジし、パーツなどを用意して、プロ機材ドットコムで販売しているもの。
手持ちの手軽なスタイルで使えるだけでなく、従来のENGビデオスタイルで電動ズーム操作をしながらビデオカメラ的に使えるのがGH5の魅力である。
3.シグマシネレンズの紹介
今回のセミナーの特徴的なのはレンズメーカーとのコラボレーションで、多数のレンズを試せるようになっていた。特にシネマレンズを最近出し始めたシグマは、これまで、EFマウント、Eマウントのイメージが強く、GH5との組み合わせでSIGMA CINE LENSを使っている人は少ないかもしれない。しかし海外ではメタボーンズなどのマウント変換アダプターを利用してGH3、4の時代からシグマのARTシリーズを使ってムービーを撮っている人は多かった。
シグマの若松さんは、GH5はまぎれもなく優秀な「シネカメラ」なので、せっかくのGH5のコンパクトさはスポイルさせてしまうことにはなるが、シネライクな映像を狙うならぜひ検討してほしいと、SIGMA CINE LENSの代表的な2本のズームレンズを持ち込んで紹介。
4.KOWAシネプロミナーレンズの紹介
興和光学(KOWA)も定番とも言える、KOWA PROMINARを紹介。マイクロフォーサーズマウントの単焦点高画質レンズといえば、KOWA PROMINARがGH4時代から現場で使われていて、ギアをつけたCINEタイプも登場している。
今回、興味深かったのは、アナモフィックレンズについての説明。残念ながらKOWAからすぐに新製品が出るというわけであけではないが、現状、どのようにユーザー(特に海外、タイでは大人気だという)がアナモフィック撮影を楽しんでいるか、その原理や実状の説明があった。現状、アナモフィックレンズはeBayなどで中古が取り引されており、新製品ではSLRMagicくらいしかない。
もっとも出回っているのがKOWA製のフロントアダプターで、実はこの製品は撮影用ではなく、16ミリの映写機のレンズの先につけて左右に引き延ばすためのアナモフィックレンズだったという。したがって流通量が多く、手頃な価格である。GH4、GH5でアナモフィックモードが搭載されたことでまた火がついた感じで、今回のGH5のVer.2.0によって、正確な画角で液晶モニター上でモニタリングできるようになったので、アナモフィックレンズによるシネスコ撮影がやりやすくなった。
専用のアナモフィックレンズもあることはあるが、多くはマスターレンズの前にアナモフィックアダプターを装着する。ニコンの50mmの装着してみたのが以下の写真。35mmから100mmくらいでないと焦点が合わないらしいが、35mmだと周囲に歪みがあるので、50mm前後が使いやすいという。どうしても画質はかなり落ちてしまうことになるが、単にシネスコを解像度を保って撮れるというだけでなく、70年代のSF映画で見られたような左右に伸びる青い光芒などや楕円形のボケなど、それっぽい雰囲気を出せるということで人気がある。ただフォーカスはアナモフィックレンズ側とマスターレンズ側の2箇所で合わせなければならないので、撮影時に手間はかかる。また水平がずれてしまうと気持ちがわるい絵になってしまうので、そこも気をつける必要がある。
5. MUKカメラサービスからKistarの紹介
MUKカメラサービスの小菅さんは、OEMレンズを長く手がけてきた木下光学研究所が最近自社ブランドで出したKistarシリーズを紹介。KISTAR 55mm F1.2は富岡光学製の55mm F1.2を現代によみがえらせたレンズで、開放ではややにじみが出るのを残し、柔らかなボケに。絞り込むとシャープになっていく描写性能を再現した。外観は1970年代のヤシカコンタックス風。マウントのヤシカコンタックスなので、GH5には変換アダプターを介して装着する。KISTAR 55mm F1.2、35mm F1.4、85mm F1.4(12月発売)がある。
MUKカメラサービス仕様として、絞りのクリックをなくし、動画でなめらかに絞りを変更できるようにした。フォーカスの回転角も広く、動画においても使いやすい。
6.LED照明を使ったライティングの紹介
最後にプロ機材ドットコムの大田黒さんが、LED照明を紹介。好評なのが円形で超薄型のラウンドLEDライト。柔らかい光と目にキャッチライトをいられるということで、大人気になっている。また、瞳にリング状のアイキャッチを入れられるビューティーライトも好評。色温度、光量をダイヤルで可変することができる。もちろんサイド光としても使え、通常のLEDライトとしての役割も果たす。