GH5のVer.2.0のファームアップについてはこちらでお届けした。つい先日、バグフィックスするためのVer.2.1も公開されている。
今回のファームアップは動画撮影においてHLG(ハイブリッドログガンマ)をフォトモードのひとつとして追加する機能も加わる。HLGは対応テレビでないとその効果が確認できないということもあり、HLG体験会が開催された。
このファームアップはGH5の正式発表時点でアナウンスされていたもので、当初予定されていのたが
●4:2:2 10bit 400Mbps ALL-I記録
●高解像アナモフィックモード
●USBテザー撮影
●4K HDR動画撮影(ハイブリッドログガンマ)
だった。これ以外にも細かい機能向上が行われている。
動画ユーザーから見てのポイントは、4:2:2 10bitの400Mbps対応だろう。どういうシーンで150Mbps(Long GOP)と差が出るのか次号以降のレポートでも検証してみたい。
新機能について説明するのは、パナソニックでGH5の商品企画を担当している香山さん。
アナモフィックモードも強化された。4:2:2 10bitモードに400Mbps ALL-Iが加わっただけでなく、6Kフォトを応用した4992×3744もHEVC記録(200Mbps)で可能になった。
アナモフィックモードの使い勝手も大きく改善された。これまでは4:3に左右圧縮された映像がそのまま液晶パネルやEVFに表示されていたのだが、正規の画角(デスクイーズ表示)で確認できるようになっただけなく、想定したアスペクトだと左右がどこまで入るのか、ガイドライン表示が点線で示されるようになった。
USBテザー撮影も便利な機能で、スタジオなどでPCからカメラ設定しつつシャッターを切って、画像をPCに直接保存していくことができる。LUMIX専用ソフトだが、USB3.1 GEN1 TypeCでの接続なので、現在対応しているのはGH5のみということになる。
今回のファームアップの大きな特徴がフォトスタイルにおいてHLG(ハイブリッドログガンマ)が加わったこと。HLGとは、テレビ放送向けにNHKとBBCが策定したHDR用のガンマカーブであり、ソニーもFS5、Z150のファームアップでHLGガンマを選択できるようになり、このワークフロー全体をインスタントHDRと名付けている。これまではLogやRAWで撮った、充分に階調のある素材をベースに、ポスプロでHDRコンテンツとして仕上げるというのがワークフローだったが、HLGの場合は、撮ったものをいじらず(いじらせず)、HLG対応のテレビでそのまま表示すれば、HDRの映像効果が得られるというもの。階調をいじるということは基本的に行わない(もしいじるのであればV-Log Lで撮る)。
GH5の場合は、記録モードとして10ビットのモードを選んだときに、HLGをフォトスタイルのひとつとして選択できる。V-Log Lの場合は制作用ということもあって約1万円の有償オプションだが、HLGは無償でのファームアップとなる。
モニタリングにおいては、モニターやEVFではHDR表示ができないので、V-Log Lのようにアシスト機能が用意された。MODE1は高輝度部分を重視して、明るいところがどこまでとばずに再現されているかを確認できるモード。したがって主要被写体は暗く見えてしまう。MODE2は主要被写体は適正露出に見えるが、高輝度部分は飛んでしまうというもの。
その効果は絶大で、別室で同社の65型有機ELディスプレイ(TH-65EZ950)でSDR(フォトモードは709ライク)で同じシーンを撮影したものと比較できるようになっていたが、空の階調や色の表現力で、HDRは肉眼で見た光景に近い世界が広がっていた。風景写真や映画のような階調感が再現されるといってもいい。
美しい映像を撮って、美しい映像を観るというオーディオビジュアル(AV)の世界なら、GH5とHLG対応ビエラ(特に有機EL)を家庭に導入すれば、これまで体験したことにないハイクオリティな風景ムービー映像を楽しむことができ、間違いなく幸せなAVライフということになる。HDRの効果は、ディスプレイから離れても確認できるので、HDと4Kの違いよりもはるかに分かりやすい。ただ、これを人に見せたり、発表しようとしたり、業務での映像制作に活用しようとするととたんに数々の障壁が立ちはだかってくる。
GH5のHLGモードの開発においては、同社の有機ELビエラを想定して画作りをしたということなので、素直にGH5と有機ELビエラという組み合わせで、異次元の美しい映像を自宅で楽しむというのが、今のところ正しい楽しみ方のような気がする。