11月7日、シャープは、世界初の8K/60p映像の撮影・収録が可能なレコーダー一体型8Kカメラ、8C-B60Aを発表した。価格は880万円で、発売は2017年12月。8K映像関連技術を有するアストロデザインの技術協力を得て開発したもので、来週11月15日〜17日に幕張メッセで開催されるInter BEE 2017では、アストロデザインとの共同ブースにおいて、実際に触ることができるデモ機を複数台用意するという。

シャープは8Kに早くから取り組んできた。2011年には8Kスーパーハイビジョン対応の85V型液晶ディスプレイを開発。今年の6月には70V型8K映像モニターを発売。日本だけでなく、台湾、欧州で発売していくことを発表している。年末には70V型の8K対応テレビを発売する予定。民生用としてだけでなく、そのパネルを医療分野にも展開するなど、8Kディスプレイを軸に、8Kという高精細映像が新しい体験、価値を創造し、社会をより高度化していくものと捉え、「8Kエコシステム」として推進している。

冒頭に挨拶をする、8Kエコシステム戦略推進室の西山氏(下の写真)。

8K映像を放送に限定するのでなく、医療、検査システム、セキュリティ、インフラ整備、教育、拡張空間といったさまざまな可能性を今後追求していくという。

8Kカメラの仕様だが、まずセンサーは3300万画素のスーパー35mm相当のCMOSで8K/60p撮影に対応。マウントはPLマウント。記録メディアは2.5インチのSSD(専用)で、2TBのSSDパックで約40分、4TBで80分の記録が可能となる。コーデックはグラスバレーのHQXコーデックを採用(4:2:2 10bit)。これは非圧縮に対して7分の1の圧縮となり、8K/60p時で6Gbpsとなる。ガンマカーブはHLG(ダイナミックレンジは400-2000%)、Log、色域はITU-R BT.2020。

カメラ本体は約5kg、レンズを含めた標準構成で約10kgとなる。

これまでの8Kカメラはカメラとレコーダーが分離していたし、もしくは中継車までケーブルをひっぱってきて、という使い方だったが、このカメラの登場により、従来のショルダーカメラの感覚で運用できるようになる。こういった導入しやすいシステムを供給することにより、より多くの8Kコンテンツが生み出されていることが期待できる。

シャープの8K戦略は、まずは業務用8Kカメラからのスタートだが、今後は監視・医療分野への8Kカメラの展開だけでなく、2020年に向けて、コンシューマ用のハンディカメラの開発も進めているという。シャープのビデオカメラといえば、1990年代に液晶ビューカムで一世を風靡したのち、2000年代には市場から撤退していたが、8K環境になり、復活を果たすことになる。非常に楽しみだ。

業務用8Kカムコーダーのほうは、現状のモデルは8K/60pまでだが、フルスペックである8K/120pも当然目指すという。

また今回のカムコーダーは本体での8K映像を記録だけでなく、12G-SDIの出力を備えることで、ライン出力が可能であり、ライブ収録だけなく、配信の現場でも使える機材となる。

右側が本体のSSDスロットで、出力端子はBNCが4本で、4K出力と8K出力の切り替えが可能で、4K出力時はクアッドリング 3G-SDI 4:2:2として、8K出力時はクアッドリンク 12G-SDI 4:2:2で出力される。

 

編集は、収録でグラスバレーのコーデックを利用していることもあり、発表会場ではEDIUSのターンキーでネイティブ編集のデモが行われていた。昨年のInter BEEでアストロデザインブース内で参考展示されていたもので、HQXコーデックを利用すれば、従来のワークステーションをベースに8K編集できることを見せていた。

発表会場では、メーカー側で制作したデモ映像も流されており、8Kスルーの映像も確認することができた。編集環境も含めて、ここまで実際に手にとれる8K制作システムは初めて。ニュース映像を撮影にきていたNHKのカメラマンも実機を肩に担いで感触を確かめていた。

その映像も含めて、今年のInter BEEの最大の目玉になりそうだ。