テスト・文●川井拓也
8㎜フィルムをSDカードにMP4記録
8mmビデオじゃありません! 8mmフィルムのお話です! みなさんの家のどこかに眠っているのではないでしょうか? うちにもあります。秋葉原にある「サンコーレアモノショップ」でお馴染みのサンコーがこの製品を発表し、各メディアの紹介記事などが話題となり早々に品切れ※になったという話題の8㎜フィルムデジタル変換器。
※5月上旬より入荷開始予定。スーパーダビング8はサンコーレアモノショップ直販限定販売となる
これまで8㎜フィルムをビデオ化する場合には専用の映写機を用意して、18コマもしくは24コマでフィルムを再生。それをテレシネアダプターを通して、ビデオカメラで撮影するというのが一般的な方法でした。業者に依頼する手もありましたが、そこそこ値段も張ります。スーパーダビング8は、それを家庭で手軽にデータ化できるという画期的な隙間製品です。
しかし、このスーパーダビング8がスゴいのはフィルムをコマ送りしながら、本体に備えられたカメラで1コマ1コマ撮影していくこと。しかも、それが膨大な数の静止画ファイルになるのではなく、一発でmp4の動画ファイルとしてSDカードに保存されるのが今どき! つまり、この機械はコマ撮りによるテレシネをしているというわけです。
カメラは1/3型CMOSセンサーを備え、総画素数は2304×1536ピクセル。完成動画は1440×1080(4:3)の30fpsになります。残念ながらコマ撮りなので音は収録できません。フィルムの撮影時のコマ数が18コマでも24コマでもスキャン後は30コマになるので、チャップリンの映画のように早回し映像になります。ただ、これは編集ソフトで速度調整すれば元の速度に近づけることができます。テレシネした映像素材をパソコンで再編集してみても面白いですし、FacebookやYouTubeなどで懐かしい風景を共有してみたら、当時を知る視聴者からの思いがけない反応もあるかもしれません。
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1秒間に2フレーム撮影するフレーム・バイ・フレーム方式
3分リールなら35分でダビング完了
1/本体に2.4型モニターを搭載。ボタンは左から電源、メニュー、Left・Rightキー(メニュー選択)、OK(メニューの決定とダビングスタート・ストップ兼用)
2/フィルムホルダー。左にスライドさせると開く。LEDでフィルムを照射。
3/LEDの真上にフィルム撮影用のカメラがある。
4/本体背面にはPC接続用のUSB、テレビ出力、SDカードスロット、AC端子。
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フィルムをかけてボタンを押すだけ
本機は映写機のようなレトロな製品デザインですが、本体中央に液晶モニターがついており、テレシネ中のコマ撮りの様子を見ながらダビングできます。操作は実に簡単。左側のリールにテレシネしたい8㎜フィルムをセットし、映写機のようにフィルムをかけます。電源ボタンを入れて、OKボタンを押すと「カチャンカチャン」とフィルムをコマ送りしながらテレシネが始まります。
コマ送りなので3インチ3分のフィルムリールをテレシネするのに35分かかります(5インチリールでは約1時間半)。自分でも何が写っているのか忘れてしまったような懐かしい映像を見ながらしばしのコーヒータイム! このデジタルテレシネ機を複数台並べて「テレシネ喫茶」や「テレシネ居酒屋」をやったら昭和の思い出話に花が咲きそうです!
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フィルムの装填からダビング開始までの流れ
➊ガイド穴に合わせて、付属のリールアダプターを装着。
➋フィルムの穴が奥になるように8㎜フィルムのリールを装着する。
➌写真のようにフィルムガイドを通して反対側のリールにフィルムを送る。
➍反対側のリールの切り欠き部分にフィルムの端をかませて、巻き込む。
➎シングル8・スーパー8は「Super8 Film」、レギュラー8は「8mm Film」に。
➏2ヶ所の爪を通して差し込む。左右のズレは機械が自動調整する。
➐「OK」ボタンを押す。3インチリールの場合は「3インチ3分」、5インチリールは「5インチ7分」を選んで再びOKでダビングスタート。
➑ダビング中。右上のタイムはダビング終了までのカウントダウン表示。
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記憶の1コマ1コマが
現像されるような不思議な感覚
昭和の映像資産である8㎜フィルム。テレビを録画したVHSテープも懐かしいけれど、そこに写るのはあくまでコンテンツとしてのテレビ番組です。テレシネした8㎜フィルムには若かりし頃の自分や家族の姿、そして当時の街並が残されています。テレシネしている最中は、記憶の1コマ1コマが現像されているようで不思議な時間が流れます。記憶の片隅からも忘れ去られていた当時の記憶が次々に蘇ってきました。
今回は短時間のテストだけなので製品の耐久性や信頼性がどの程度まであるのかはわかりませんでしたが、実際手にしてみると意外とコンパクトだったこともあり、個人的にはこの「デジタルテレシネ機」を買って「流しのテレシネ屋」をやってみたいと思いました。いろんな人の家にお邪魔して昭和の8㎜フィルムをテレシネしながら、そこで紐解かれるその人の物語を記録する。ちょっとしたドキュメンタリー映画が作れそうです。
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テレビと繋いで映像を見ながらダビングできる
本体液晶はもちろん、テレビなどの外部モニターにつないでダビング中の映像を確認しながらテレシネできる。接続端子は本体背面にコンポジット端子(ミニジャック)を用意。SDカードに記録したダビング後の映像も本体で再生して見られる。
露出補正を搭載
メニュー内には±2(0.5刻み)の露出補正があり、テレシネ映像の明るさ調整ができる。
フィルムの巻き戻し方法
リールの位置を入れ替えて丸で囲んだガイドにフィルムを通し、メニューから「リール送り」で巻き戻せる。
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筆者が学生時代に制作した
8mmムービー作品
『スケッチ』をテレシネしてみた
▲サンコー・スーパーダビング8でテレシネしたもの。後から編集ソフトで音声を追加しました。動画の速度を80%程にして動きを調整。
▲業者に依頼してテレシネしたもの。
筆者が19歳当時、大阪芸術大学映像学科在学時に「ファースト・ピクチャーズ・ショー」に出品し研究室グランプリを受賞した8mmフィルム作品。エルモのスーパー8で撮影したものです。『雨月物語』などを手がけた脚本家でもあり、当時の学科長である依田義賢氏に「ひじょうに洒落ていて行き届いた作品であると研究室一同評価していました」とコメントいただいた作品です。映像中に映る老婦人は筆者の実の祖母(故人)。ロケ地は所沢航空記念公園。
こうして比べてみるとやはり業者に頼んだほうがキレイに仕上がるものの、自宅でテレシネできるという手軽さはうれしい部分でもあります。ただし、色味は後から編集ソフトでも調整できるが、画角の一部が切り取られてしまったり、揺れが発生してしまうのは改善してほしいポイントです。今回借りたものは試作段階のもので、本番の製品ではこれらを解消しているという話でしたが、機会があれば改めて試してみたいと思います。
●製品情報
http://www.thanko.jp/shopdetail/000000002560/
●この記事はビデオSALON2016年6月号より転載
http://www.genkosha.co.jp/vs/backnumber/1578.html