文●川井拓也

株式会社ヒマナイヌ代表。配信チームLiveNINJA主宰。Ustream黎明期からマルチカメラによるライブ配信や収録を手がける。筆者のブログ●http://himag.blog.jp/

 

※この連載はビデオSALON 2018年5月号に掲載した内容を転載しています。

Vol.024 パナソニックGH5Sはマルチカメラスイッチング用としても使いやすいのかチェック!

 

パナソニックDC-GH5S:オープン価格(実勢30万円前後)

▲Sとはスペシャルに加えセンシティビティ(感度)という意味が込められている。一画素の面積が大きいということだけでなく、ゲインアップの前に2系統のアナログ回路を各画素に装備したことで、高感度ノイズを低減。HDMIはフル端子。抜け落ち防止のアタッチメントも付属する。

 

◉大判センサーで高感度なGH5SのHDMIスルーアウトだけを使う贅沢な実験!

GH5Sは映像業界でも話題沸騰の新モデルですが、それをあえてマルチカメラスイッチングのカメラとして使ってみたいと思いました。4K/60pの内部録画ができるGH5Sなのに2KのHDMIアウトしか使わないという贅沢な実験です。業務用ビデオカメラでできる操作性がスチルカメラ型のボディでどのようにできるのか?動く被写体にフォーカスはどのくらい自然に追随するのか? を確認していきます。

 

 

◉GH5以降搭載されたHDMIフル端子と抜け止めアタッチメントが秀逸!

GHシリーズのHDMI端子はGH2がmini、GH3と4がmicroでしたが、GH5はフルになりました。マルチカメラスイッチングの場合は、ケーブルを挿した状態で使うので端子の形状は重要です。理想はSDIですが、HDMIならば、フル端子は安定感があります。さらに製品に同包されている抜け止めのアタッチメントが秀逸! ネジで固定するとケーブルのテンションを上手く逃して固定する溝があり、ケーブルの自重でコネクターに負担がかかってしまうことを避けられます。

 

◉4Kで内部録画しながらもHDMIからはHD映像が出力できる!

▲HDMIの出力設定。放送用スイッチャーが受けられる1080iのモードを用意しているのがポイント。

GH5Sを使うからにはマルチカメラスイッチング用に使うとはいえ、内部録画は4Kで回しておきたいですよね? 画質設定を4Kにしても「撮影時HDMI出力」メニューから「4K/30p」「1080p」「1080i」が選べます。現行の放送系スイッチャーは「1080i」しか受けられない場合が多いので「1080i」の設定があるのは助かります。画面の情報表示はHDMIスルーには乗らないようにできます。Fnキーやダイヤルを使っても表示は乗りませんが、メニューを触るとスルーアウトにも出るのでここだけ注意が必要です。

 

◉「露出」「絞り」「WB」「ISO」などを3つのダイヤルに割り当てられる!

▲ユーザーの好みに合わせて12のボタンに好みの機能を割り当て可能。

業務用ビデオカメラの場合はレンズ回りの3連リングで「フォーカス」「絞り」「ズーム」を、その他をファクションダイヤルなどで操作しますが、GH5Sの場合は「前ダイヤル」と「後ダイヤル」と「コントロールダイヤル」に「露出」「絞り」「WB」「ISO」などを割り当てられます。それ以外にも割り当てられる項目は多く非常に便利です。ただしスチルカメラ型のボディで、かつどれもクリック感のあるダイヤルなので操作するとカメラに微妙な振動が伝わります。三脚に固定していても撮影中にダイヤル操作するときは慎重に行う必要があります。

 

◉瞳認識フォーカスは優秀だが追随する速度はレンズの個体差がある!

瞳認識のAFは録画をしていなくても動画モードにして「AF連続動作」をONにすることで常に動きます。顔のパネルをカメラから遠ざけたり近づけたりしたところ迷いなく追随します。この時のフォーカスの追随速度はどんなレンズを使っているかに依存します。例えばファームが最新の動画対応のレンズだと非常に速い速度でかつなめらかに追随しますが、発売時期の古いスチル用のレンズだとモーターが遅いため1テンポ遅れてフォーカスが動きます。置きピンで使う場合はボケ足優先でレンズセレクトが出来ますが、人物にAFで食いつかせようとするならパナソニック製のDual I.S.2を採用しているような最新のレンズにしたほうが良いというのが今回の結論です。

その他マイク端子がライン入力を受けられたり便利な機能もありますが筆者の所有するGH2とGH5Sを同じスイッチャーで切り替えたところスルーアウト信号のディレイが微妙に違っていることがわかりました。マルチカメラで使う場合はすべてGH5Sにしたほうがディレイが統一できて安心かもしれません!

●この記事はビデオSALON 2018年5月号 より転載