本誌でおなじみのふるいちやすしさんの長編映画、「千年の糸姫」。海外のいくつもの映画祭で賞を獲得し、Amazon Primeでの公開もされた名作ですが(現在は残念ながら契約期間がきれてしまったのか、観られない状況です)、日本ではなかなか上映館が決まらず、映画館では観られない状況が続いていました。ビデオサロン10月号(9月20日売り)の連載誌面上ではお知らせしたのですが、このたび、横浜のシネマ・ノヴェチェントと群馬県伊勢崎市のシネマ・プレビ劇場で公開されることになりました。
現在まさに公開中です。
【横浜】シネマ・ノヴェチェント
日時:10/6(土)〜12(金)
問い合わせ:045-548-8712
*期間中、「ふるいちやすし・中短編集」上映あり(入れ替え制)火曜日休館。
【伊勢崎】シネマ・プレビ劇場
日時:10/12(金)〜18(木)
問い合わせ:0270-63-8787
昨日、横浜のシネマ・ノヴェチェントに行って来ました。この映画館、以前から「フィルム上映」で検索するとひっかかってくるので興味はあったのですが、初めて行きました。
この雰囲気、最高ですね。映画館とは思えない(笑)。映画館のロビーでカウンターで飲んでいていいのか?という。それとも元スナックをそのままシアターに転用したのでしょうか?
この左手が入り口とシアターになっていて、このカメラ位置の後ろから映写室に入るという位置関係です。
ロビー内にはポスターが貼られているのですが、統一感あります。戦争映画、しかもかなり古いものばかり。思いっきり偏ってます。この手の映画はあまり詳しくないのですが、店長(館長?)の地雷を踏まないように注意しました。
小さいけどフィルム上映できる今や貴重な映画館のひとつ。(「千年の糸姫」はBD上映です)
さて、映画「千年の糸姫」ですが、もちろんAmazon Primeですでに観ていて、私はふるいちさんの映画の中では傑作だし、完成度も高いし、もっとも大衆にアピールする作品だと思っています。
ところが、人が入らない。おかしい。
ふるいちさんのことを知っている人で過去作を観ている人は、もしかしたら、映画祭で賞をとるような小難しいアート映画だと思って敬遠しているのかもしれませんが、この映画は主張はあるもののしっかり「エンタメ」要素あります。騙されたと思って一度観て欲しいです。
ある種のいい映画を観終わると、誰とも話したくなく、その映画の感想も語りたくなく、ましてやスマホをみたり、メールチェックしたり、文庫本を読んだりしたくなく、1、2時間ボーっとしていたくなるのですが、「千年の糸姫」はそういうタイプの映画です。腹にズシリときますが、救いがない暗い気持ちになるわけではない。
もちろん瑕疵はあります。弁当屋さんに入るところは昼だったのに、すぐその後の中のシーンは夜になっているぞとか(笑)。カラコレもカットごとにバラツキがあったりとか。そういったテクニカルなことは全体のストーリーとか世界観を崩してしまうほどには問題ではありません。集中は妨げらないからいいんです。
それよりも映画の作り方として、千年の時を経て蘇ったというドラマのお芝居の世界と、実際の関東の一地方の祭(ホンモノの祭)が同じ映像空間にあるというのが刺激的でした。大作映画であれば、全部エキストラで作る祭シーンですが、低予算映画はそんなことはとてもできません。であれば、ホンモノの祭に合わせて、ロケをしてしまう。もちろん撮影許可はとっていますが、超少人数スタッフ(あと無名の役者さん…失礼!)だからこそ現実の世界にまぎれこんで撮影できるという良さもあるんですね。リアルの世界の臨場感が芝居に持ち込まれて、不思議な感覚に陥ります。わたしにとっては、この映画、そこが面白かったです。